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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




皆さんは、どういう理由で電子工学の道を志したのですか?


大学生
電子工学系へ、という進路は、高3の夏あたりに決めました。電気というのは社会の中でいろいろと使われているものですし、自分の可能性を広げられるのではないかと思ったからです。
主に1年次に一般教養科目、2年次に専門基礎科目、3年次に専門応用科目を学びます。この専門応用科目を学んでいる時、目指す専門分野が見えてきますね。青山学院大学理工学部では、研究室への配属は3年次の終わりなので、専門分野をじっくり選択できると思います。


卒業生
高校時代は数学と物理が得意でしたし、とりあえず理工系に行きたかったので、大学の説明会で具体的なことを伺いました。どんな業界、職種の就職につながるという話まで伺っていたんです。そうした中、もともと携帯電話をつくってみたいという夢がありましたので、電気電子工学科を志望しました。ものづくりの中でも、特に「便利な物を小さくしたい」という思いがあったのです。決めたのは高2の夏でした。 そして大学で松谷先生の丁寧で興味深い授業を受けているうちに、アナログ回路の設計という分野にとても魅力を感じました。ちょっとした細かな操作、設計でいろいろと動作が変わる。これはものづくりの醍醐味を十分に体験できるだろうなと思ったのです。

大学生
私も研究室を決めた大きな理由は、先生です。もともと電子回路は得意分野と思っていましたが、その中でも決め手になったのは先生のお人柄です。電子回路の授業中やテスト前などで質問した時に、非常に丁寧に教えてくださいました。 そして授業もわかりやすかったことから研究室に入りたいと思いました。学生の自主性はもちろん大事ですが、やはり良い先生と出会うと、授業や研究にもますますやる気が出ますからね。

先生のきっかけも教えてください。


先生
私の子ども時代、大分昔になってしまいましたが(笑)、その頃のテレビは真空管でした。高校生の皆さんは真空管を見たことがあるでしょうか? テレビの中をのぞくと見える真空管の、その光がとても素敵に見えました。故障すると電気屋さんが来て修理してくれる。それも子供心にすごいな、と感じていました。当時は音楽もアナログレコードの時代です。黒く回っている円盤に針を落とすと音が出る、その不思議さは今でも忘れられません。そんなきっかけで電気関係のことに興味を持ち、小学生の時から憧れを持っていました。
大学で電子工学の道に進むことになる直接的なきっかけはニつあります。一つは中学の時にアマチュア無線の免許を取りたくて勉強したことです(結局取りませんでしたけど)。そしてもう一つはNゲージの鉄道模型。あの列車の電子制御ができたらよいな、と思ったんですね。大学時代はコンピュータが導入されて間もない時代でしたが、鉄道をコンピュータで制御してみたい、と国鉄の技術研究所を志望しました。しかし、当時国鉄は大赤字で求人が少なかった時代ですから、就職の夢はかないませんでしたが。

NTTの研究開発職、そして大学の先生になりました。


先生
50歳まで研究職を務める傍ら、大学の非常勤講師も兼任しました。日本電信電話公社が民営化でNTTになりますが、当時ちょうどアナログ通信からデジタル通信への転換期でしたので、その対応のための技術研究が全盛期でした。
そしてその研究が一段落してくると、その技術をブラッシュアップして応用していく段階になります。デジタルオーディオが生まれ、電器メーカーとの共同開発も行いました。それも普及してくると、今度は福祉、その他の分野へと技術が波及して広がっていく訳です。
研究職から、同じ企業の関連会社へ、という流れももちろんありますが、企業の研究者の立場からすると、大学の研究職というのは「自分の夢を実現できる現場」とも言えるものでして、多くの研究者は大学に憧れます。縁あって青山学院大学で教鞭をとれることになり、幸せだと思っています。

 

 

●就職活動、仕事について




渡辺さんは、就職先をどのように決めましたか?


卒業生
まず、「ものづくり」へのこだわりがあったので、メーカーをターゲットにしました。大学の授業や卒業研究を通じて回路の勉強が楽しくなったので、回路設計がやりたかったのです。基礎的な技術で、何にでも搭載されている部品ですから、その分野に携われば、結果的にいろいろなものづくりに関われると考えました。今実際にやっているのは、フラッシュメモリーの中の記憶回路、読み出し回路の設計です。


先生
渡辺さんの仕事は、学生時代の研究にかなり近い分野ですよね。今の就職活動は「マッチング」と言いまして、会社が求める人材と、学生がやりたいことをすりあわせることを重視しますが、とても上手くいった例ではないでしょうか。

卒業生
確かにつながっていますね。高校時代の夢が実りつつあると思います。

先生
大学に入ることはゴールではなく、人生の一つの通過点です。あまり偏差値や人気にこだわらず、自分に合った大学を目指すのがよいと思っています。「どの大学に行きたいか?」を考えるより、「どのようなことを学び、どのような職業に就きたいか?」という視点から、保護者の方や学校の先生に進路を相談してみるとよいでしょう。どの大学に行くのかは、その後で考えてもよいと思います。また、高校での勉学に勤しんで、好きな分野を探すことも大切だと思います。

専門技術以外に、研究室での経験が社会で活かされていますか?


卒業生
大学・大学院時代は、プレゼンテーションの技術など先輩からも厳しく鍛えられますので、どういう分野に就職しても役に立つと思います。

先生
上級生が下級生の面倒をみるというのは私の研究室の伝統です。つまり縦の関係がきちんとできているということです。また、研究開発上での倫理、リテラシーに関する教育も重視しています。例えば実験レポートなどで他者のレポートからのコピペ(コピーアンドペースト)があった場合などは、普通はワープロ文書での提出を許可しているところを、ペナルティとして手書きで提出させたりしています。

卒業生
学部でも倫理面では厳しいですし、大学院では「技術者倫理」という科目もあります。企業の世界では、一層シビアになってくる問題ですから、このような心構えはとても重要だと思っています。

 

 


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