●就職活動、仕事について
片桐さんが、今の職業についた経緯を教えてください。
■卒業生
根矢先生にご紹介いただいたとおり、私はもともと「計算化学」の研究者でした。転機になったのは、博士課程を修了した後、就職の時です。その頃にちょうど、五十嵐先生が会社を作ろうと、声をかけて下さって。しかしながら、理系の博士が二人でやってもうまくいくはずがないので(笑)、私が経営のトップ、先生が研究のトップとしてやっていけるように、どこかで一度マネジメントをきちんと経験しなければいけないと思いました。そこで、経済産業省所管の独立行政法人NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)という組織に入り、NEDOフェローとして3年ほどプロジェクトのマネジメントやベンチャーの起業支援を実践しました。現在の会社の設立支援、経営支援にも参画して、その後、NEDOを辞めて取締役となったわけです。そのまま計算化学の研究者として進む道もあったんですけどね(笑)。五十嵐先生との仕事に魅力を感じて、その時の選択をしました。
■先生
僕も、片桐さんは研究者の道に行くのかと思っていたんですよ。アカデミックな道に進んでも充分活躍できる力を持っている人ですから。
■卒業生
先生、ありがとうございます。私は博士課程にいた時に、独立行政法人理化学研究所の技術研究生、独立行政法人日本学術振興会の特別研究員などをしていましたが、その研究には意味があるのか、社会にどう還元できるのかということを国から問われるという、ちょうどそういうことが強く言われ始めた時代に研究を行っておりました。基礎研究はとても大事で、短期的に社会に還元だという言葉に反発もありながらも、研究成果の実用化の成功例を出していくことも研究者の義務であると、このころ考えるようになっていました。
仕事のやりがいはどういうところですか?
■卒業生
まず、他の方が取り組んでいない分野を開拓しているというところですね。また、取締役として事業のマネジメントをしていくわけですから、リーダーシップを取ることにやりがいを感じます。大学の研究成果を社会に還元するというミッションに取り組んでいるという気持ちが支えになっています。
大学で学んだことは、今の仕事にどう活かされていますか?
■卒業生
薬学部で扱うのは薬なので、当然患者さんという存在を念頭に置いた研究になりますから、研究成果を出して、さらに実用化、事業化(患者さんに届ける)するにはどうしたらいいのかということまでを考える、よいトレーニングであったと思います。ビジネススクールで勉強するマネジメントの研修の研究者版と言えるかもしれません。
そういう下地があったからこそ、私はこの職業に就きましたし、頼もしい後輩たちも多くいます。そのうちの一人は、薬学の知識を知財に活かしたいと言って、都内にある特許事務所の所長代理をしています。
ほかにも、大手の製薬会社に入って医薬品の開発で活躍していた者がいますが、ある時辞めて、カリフォルニア大学バークレー校のMBAコースに行ってビジネスマネジメントを勉強し、今度は、外資系企業の日本法人で始まった経営幹部養成プログラムの第一号に選ばれた人もいます。
そのほかの卒業生の進路としては、どういうところがありますか?
■先生
製薬会社の研究開発、営業職への就職が最も多く、次いで病院や薬局の薬剤師の道に進む人が多いです。また、国や都道府県の公務員になる人もいます。公務員の場合は、保健業務に就くケースが多く見られますが、警察に行って科学捜査研究所へ就職した人もいます。
■大学生
公務員では、市立病院で働く病院薬剤師になる場合もありますし、衛生関係も薬剤師の仕事なので、そちらのほうに携わる人もいます。
■先生
製薬会社ではなくて食品や化学関係の会社でも、薬剤師の資格を持っていないとできない業務がありますから、そういうところにも行く人もいます。進路は結構幅広いと思います。
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