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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




お二人の入学のきっかけを教えてください。


大学生
子どもの頃から漠然と医療に興味があり、化学も好きな科目だったため、薬学を学びたいと思いました。オープンキャンパスでこちらを見学した際に、バリバリと研究をされている方々を見て、千葉大学薬学部なら薬剤師の資格も取れるし、研究もしっかりとできるんだなと思い、選びました。


卒業生
私は、得意科目が数学と物理だったので、理系に行くだろうとは思っていましたが、学問を学問で終わらせるのではなくて、人のために役に立つ人になりたいという思いがずっとありました。理系の知識を実学で一番活かせるところはどこかと考えて、薬学なら、生命科学の最先端の学問ですし、面白いのではないかと思ったのが高3の時です。ちょうど千葉大学の薬学部が推薦入試を始めた年で、私は推薦入学の1期生となりました。その時に面接をしていただいたのが、じつは今の社長の五十嵐先生です。その後まさか一緒にビジネスをやるとは思いませんでした(笑)。大変なご縁だと思います。

先生
五十嵐先生から聞いた話では、片桐さんの第一印象が良かったので、予定時間をオーバーしたそうですね。

卒業生
そうですね(笑)。化学実験の話などで盛り上がりました。

千葉大学薬学部の特色を教えてください。


先生
関東地方にある国立大学で薬学部があるのは、東京大学と千葉大学だけなので、入ってくる学生さんは優秀な方が多いです。国立大学ということで、単なる薬剤師の育成だけではなくて、研究機関としての使命も帯びていますから、研究も活発です。この点は、ほかの私立大学の薬学部とは違うところだと思います。
卒業生が薬剤師として活躍する場合にも、病院の幹部候補生や薬局の店長クラスなどを目指せる知識や力を身につけてもらうということを意識して、教育を進めています。そのためにも学位取得を重視しているので、博士課程を修了して博士号を取得する人が毎年20人程います。

卒業生
大学院の研究というのは、マネジメントを学ぶいい機会にもなりますよね。単に研究の手技だけを覚えるなら、極論すると専門学校でもいいと思うんです。

先生
そう思います。

入学後の印象はいかがでしたが?


大学生
6年制の薬学科に行くか、4年制の薬科学科に行くかを、3年生に進級する際に選択できるという点がとても良かったですね。ほかの大学では、入学時に学科を決めるところが多いですが、授業を受けてみて目指す方向性が変わることは多いと思うので、千葉大学に来て良かったなと思います。

卒業生
根矢先生のおっしゃるとおり、研究志向が強い大学ですね。120年以上の伝統がある学部ですから、各界で活躍されている先輩も多いですし、有名な会社などとのつながりもあります。
大学の研究とは、手技ではなくて、考え方、哲学を学ぶものなのだと思います。それが高校生の時にわかれば、何だか楽しそうだなと思う学生が理系に来てくれるような気がします。高校までは、時間内に正確に解答を書くという練習しかしないようなところがあって、それが受験勉強の苦しさの原因なのではないかと思います。私が大学に来て一番良かったと思ったのは、時間制限が特にない点です。好きなだけ好きな教科を勉強していていいという自由さには、衝撃を受けました。

大学生
大学に入ると、片桐さんがおっしゃったようにとても自由なので、逆に自分で何をやりたいかを決めてどんどん挑戦していかないと、何もできないまま終わってしまいます。でも、いろいろなことに挑戦していけるのは楽しいですし、やりがいを感じます。

先生
片桐さんは、土曜日でも日曜日でも夕方でも、とにかくパソコンの前に座って研究しているという印象がありました。まさに研究にはまっているという感じでしたよ。

卒業生
はい。あとから振り返ると、20代の時にそういう時間があるというのは、大きな財産になります。何かに没頭するという体験は、なかなかないものですからね。

先生
その延長で、今はマネジメントに没頭しているんだと思いますよ。


卒業生
そうかもしれませんね。

授業以外の活動について教えてください。


卒業生
私は学部生時代、学部の野球部に所属しており、多くの先輩・後輩と仲良くなりました。人のネットワークを築くことができたという点でもとても良かったと思います。

大学生
最初は勉学に専念しようと思って特に何もやっていなかったんですが、ある程度落ち着いた頃から、アルバイトを始めました。大学に入る前は、薬剤師が患者さんと話をするイメージを持っていませんでしたが、薬剤師にもコミュニケーション能力が必要になることを実感しました。私はあまり話すのが得意ではなかったので、何とかしようと思い、接客のアルバイトを始めたんです。

先生
それは全然知らなかった。望月さんはいつもハキハキしているから、薬剤師にぴったりだと思っていましたよ。

大学生
根矢先生とお会いする前にアルバイトを始めていたので、少しは良くなっていたのかもしれません(笑)。電話をかけるのにも、1時間どうしようどうしようって考えるくらい苦手でした。

印象的な講義などについて教えてください。


大学生
病院実習の実習先は千葉大学の附属病院です。最先端の医療や、そうした環境の中で研究している薬剤師の姿を見ることができ、とても勉強になりました。また、高校の時は当然だとして覚えることしかできなかったことが、大学の講義になると、どうしてそうなるのかという深い背景まで理解できることを実感しました。

卒業生
ある先生の講義で、とても印象深い言葉がありました。「君たちは、高校までは、生物、物理、化学を縦に勉強してきているけれども、大学に来たら横のつながりを意識して勉強しなさい」というものです。物理系の講義だったのですが、例えば化学の分野で化合物として考えるとどうなるかいうように、横に思考を展開しなさいという教えが印象に残っています。

大学生
大学では、有機化学でも物理の講義でも、最初に電子の話から入るんです。片桐さんがおっしゃるように、別々の分野ではなくて、同じような一つの分野なのだと感じました。

先生
それを一括したのが「薬学」なのかもしれないですね。僕はいつも講義の最初のほうで、「薬学というのは、原子中の電子の振る舞いから、人の心の振る舞いまでを扱う、広い学問だぞ」と冗談めかして言っています(笑)。

 

 

●就職活動、仕事について




片桐さんが、今の職業についた経緯を教えてください。


卒業生
根矢先生にご紹介いただいたとおり、私はもともと「計算化学」の研究者でした。転機になったのは、博士課程を修了した後、就職の時です。その頃にちょうど、五十嵐先生が会社を作ろうと、声をかけて下さって。しかしながら、理系の博士が二人でやってもうまくいくはずがないので(笑)、私が経営のトップ、先生が研究のトップとしてやっていけるように、どこかで一度マネジメントをきちんと経験しなければいけないと思いました。そこで、経済産業省所管の独立行政法人NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)という組織に入り、NEDOフェローとして3年ほどプロジェクトのマネジメントやベンチャーの起業支援を実践しました。現在の会社の設立支援、経営支援にも参画して、その後、NEDOを辞めて取締役となったわけです。そのまま計算化学の研究者として進む道もあったんですけどね(笑)。五十嵐先生との仕事に魅力を感じて、その時の選択をしました。


先生
僕も、片桐さんは研究者の道に行くのかと思っていたんですよ。アカデミックな道に進んでも充分活躍できる力を持っている人ですから。

卒業生
先生、ありがとうございます。私は博士課程にいた時に、独立行政法人理化学研究所の技術研究生、独立行政法人日本学術振興会の特別研究員などをしていましたが、その研究には意味があるのか、社会にどう還元できるのかということを国から問われるという、ちょうどそういうことが強く言われ始めた時代に研究を行っておりました。基礎研究はとても大事で、短期的に社会に還元だという言葉に反発もありながらも、研究成果の実用化の成功例を出していくことも研究者の義務であると、このころ考えるようになっていました。

仕事のやりがいはどういうところですか?


卒業生
まず、他の方が取り組んでいない分野を開拓しているというところですね。また、取締役として事業のマネジメントをしていくわけですから、リーダーシップを取ることにやりがいを感じます。大学の研究成果を社会に還元するというミッションに取り組んでいるという気持ちが支えになっています。

大学で学んだことは、今の仕事にどう活かされていますか?


卒業生
薬学部で扱うのは薬なので、当然患者さんという存在を念頭に置いた研究になりますから、研究成果を出して、さらに実用化、事業化(患者さんに届ける)するにはどうしたらいいのかということまでを考える、よいトレーニングであったと思います。ビジネススクールで勉強するマネジメントの研修の研究者版と言えるかもしれません。
そういう下地があったからこそ、私はこの職業に就きましたし、頼もしい後輩たちも多くいます。そのうちの一人は、薬学の知識を知財に活かしたいと言って、都内にある特許事務所の所長代理をしています。
ほかにも、大手の製薬会社に入って医薬品の開発で活躍していた者がいますが、ある時辞めて、カリフォルニア大学バークレー校のMBAコースに行ってビジネスマネジメントを勉強し、今度は、外資系企業の日本法人で始まった経営幹部養成プログラムの第一号に選ばれた人もいます。

そのほかの卒業生の進路としては、どういうところがありますか?


先生
製薬会社の研究開発、営業職への就職が最も多く、次いで病院や薬局の薬剤師の道に進む人が多いです。また、国や都道府県の公務員になる人もいます。公務員の場合は、保健業務に就くケースが多く見られますが、警察に行って科学捜査研究所へ就職した人もいます。

大学生
公務員では、市立病院で働く病院薬剤師になる場合もありますし、衛生関係も薬剤師の仕事なので、そちらのほうに携わる人もいます。

先生
製薬会社ではなくて食品や化学関係の会社でも、薬剤師の資格を持っていないとできない業務がありますから、そういうところにも行く人もいます。進路は結構幅広いと思います。

 

 


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