(C)中央大学

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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




高校時代はどのようなことに関心を持っていましたか?


卒業生
政策文化、開発援助、紛争解決などに興味がありました。また、東南アジア地域に関心があり、将来は日本を出て海外で仕事をしたいという思いを持っていました。

大学生
正直なところ、中学、高校ではあまり具体的な進路について考えたことがなく、理系科目の方が得意で、理工系の大学に進もうと漠然と思っていました。ところが、理工学部がどちらかというと専門性を極めていくのに対して、総合政策学部では自分の視野を広げる学びを実現できると知り、この学部を選ぼうと決心しました。


入学後の印象はいかがでしょうか?


大学生
この学部に入ってみてわかったこととしては、NGOやサークルを立ち上げた人たちが多いことです。この学部に集まる学生はとにかく活動的で、何らかの社会的な取り組みに携わっている魅力的な人が多いですね。例えば海外についても知るだけでなく、自分で実際に行ってみる、という行動力のある人たちばかりです。こういういろいろな経験や国際的な視野を持った人が集まっているのがこの学部の特徴ではないかなと感じています。

卒業生
学生時代で一番重要なのは、とにかく場数を踏むことです。大学では、自分でスケジュールを組み立てないと期日までに提出できないという課題があって、そのなかでサークルやバイトもコントロールしながら取り組みます。総合政策学部は自分でコミットメント(目標宣言)したことを地道にやり続ける、というトレーニングができる貴重な学部です。学生生活は忙しいですが、全力投球できる環境があると思いますね。

先生
総合政策学部はいわばスポーツ・ジムのようなものです。どこの筋トレをしたいか、それによってトレーニングも違うわけで、自分の体力、特性に合ったトレーニングができます。「こういうことが好きで、自分のこういうところを伸ばしたい」という欲望を直視しなさいと学生によく言います。それは人間力を高めることなのだから、自分にウソをつかず、その欲望を解き放ってほしいですね。

特徴的なカリキュラムはありますか?


卒業生
いわゆる一般教養科目と呼ばれる科目がないというのがこの学部の特徴なんですよ。

先生
そう。何を主専攻にするかで「専門」と「教養」は入れ替わってしまうはずです。自由にカリキュラムを組むことができて、何を専門とし何を教養科目として履修すべきかは学生それぞれが選ぶ。そのような考えに基づいてカリキュラムが構成されています。もちろんデータ処理、統計学、外国語などの科目は基礎科目群の選択必修科目として設けられています。

そのほかの特色は何でしょうか?


先生
1年生で大学の勉強の基礎となるゼミに入り、3年生からは本格的なゼミが始まります。違う考えを持つ学生たちが集まり、各自で設定したテーマについて考察していきます。グループの組み合わせも含めて学生たちが主体的に決めていきながら、一つの論文を仕上げる。この作業自体、まさに一つの「社会」を形成していくことと同じです。つまり、これが「公共選択」なのです。本や論文を読むだけでなくフィールドワークなども行いますから、共同作業を通じて「社会」を体験し、「集合的意思決定」をしていくのです。また、春、夏の年に2回ゼミ合宿を行っていますが、ここでは卒業生が積極的に参加し指導にあたってくれます。3泊4日みっちりと勉強していく文化が私のゼミの伝統と言えるでしょう。
それに加えて他大学との交流(インター・ゼミ活動)が定期的に行われていますので、いろいろな人に揉まれる機会が多いと思います。そういう点で、中央大学の中でも、特に学生たちのコミュニケーション能力は高いのではないかと思います。

橋本さんはインターゼミに参加したと伺いました。どのような研究をしたのですか?


卒業生
「スーパー・ゴミ発電」という、ゴミ焼却炉で発電を行う事業の経済性、市場性を論ずる研究に取り組みました。チームの3人全員が環境や開発の問題に興味があり、環境問題というくくりのなかで面白いテーマは何だろうと探していきました。そこで、もともと日本にあったゴミ発電という技術をさらに効率化して電力をもっと産出するプロセスに注目しようと決め、そこに経済性があるかどうかを検証しようということになりました。ちょうどプラント・エンジニアリングに興味が出てきた頃でしたので、非常に面白い研究でした。

先生
実は、彼らの研究は5大学のゼミ交流(京都、一橋、慶應、同志社、中央)の場で評価が大きく分かれました。3人の先生は、発想、分析、論証の仕方がいいと非常に高く評価してくださったのですが、一方ある先生からは非常に厳しく批判されました。「そもそもゴミを燃やして発電すること自体、ゴミをたくさん出していいという文化になりはしないか」という理由です。どの環境問題を取りあげるかという点において、批判的な視点をお持ちになる先生もいらっしゃるわけですね。
これはさきほどお話した「いろいろな窓から物事を考える」ということにも関わっていて、海外に出てみるともっとも大切な考え方になってくると思います。その国の人々にとってよかれと思ってやることが、一方的な解決の押し付けになってしまうということもありますしね。

印象的な授業は何でしょうか?


大学生
1年の必修科目である「データ処理入門」の授業が印象に残っています。そこで学ぶプログラミングの考え方は、自分の仮設が正しいかどうかを検証する手段に応用でき、ゼミでの研究にも用いました。物事の相関関係を調べるのに役立つ点が良かったです。


卒業生
私は英語の授業が印象に残っています。1年〜3年まで英語を学び、今では英語で講義が行われるものもあるそうですね。入学当初から英語の書物を読み込み、そのサマリーを書く、英語でエッセイを書くなどの課題が毎週繰り返し出されました。帰国子女であったこともあり、英語は得意でしたが、読む、書く、話す、といったそれぞれの力が徹底的に鍛えられたので、この点は就職活動や仕事にも役立ちました。

先生
英語の授業を通して、考えていることを相手に伝える自己表現能力が磨かれます。そういう意味では、「グローバル人材育成」というものを国が掲げる前から本学部ではその教育を実践し、その結果、海外ですぐに活躍できる卒業生を多く輩出しているのではないかと思います。

橋本さんの卒業論文テーマは何でしたか?


卒業生
私のテーマは「商業捕鯨と食糧安全保障」でした。1年生から自由なテーマ設定で勉強する機会が多いのがこの学部の特徴だと思いますが、 私の場合は3人ぐらいの小さなグループで、捕鯨問題を取りあげたことがあります。当時は興味本位でしたが、その時調べた内容が自分のなかに根付いており、卒業論文のテーマとなりました。国内外に関わる問題であり、多数の論点が存在するテーマですが、ここまで論点が多岐に渡る問題なら、もうひとつ違う視点があってもいいのではないかという発想を持ちました。たとえば、肉を摂取するということでいうなら、クジラの肉を1キロ食べるとその分牛肉1キロの生産と消費が削減されることになります。これは経済学的にいう「代替財」ではないか。そういうヒントを得て、このテーマをさらに掘り下げることにしました。

先生
このほか、たとえば今年度の卒業論文ですと、「遺伝子介入への考察」、「行政と宗教団体による災害時に備えた連携」、「若者の政治意識と政治教育」など多様でした。卒業論文のテーマ決定は、本人が研究したいことをベースに指導しています。ですので、必ずしも題材自体は「公共選択」という私の分野の枠にはめることは考えていません。

 

 

●就職活動、仕事について




橋本さんはどのような就職活動を行いましたか?


卒業生
ちょうど就職氷河期だったので、辛かった分記憶も残っています。公務員なのかNGOなのか、いろいろな選択肢はあったかと思いますが、プラント・エンジニアリングという民間企業の立場で社会貢献できるのならば、会社の利益にもなり、地域の役に立ち、自分の生計も立てられる。そうした思いから、就職活動では、特に環境・プラント系の企業、それにお金を出すサイドである商社、そして工場そのものがひとつのプラントといえる自動車業界を中心にまわりました。就職後は、すべて幸運な巡り合わせで、大学時代の学びを生かすことができています。


先生
学部時代の勉強が本当に生きているよね。研究テーマがここまで一貫して仕事についてまわるケースはそうは多くないと思います。

大学での学びは、どんなことを意識すれば将来に生かせますか?


先生
その時々でスキルを磨くことは、それはそれですごく重要です。道具箱にどういうものが入っているかで、どんな仕事ができるかが変わってきます。しかし一方、その道具を教えられたことにしか使えないのでは、直面する問題を解決できません。それを柔軟に使いこなしていくことも考えていかなければならないでしょうし、さらに新たな問題に直面したとき、工夫をする発想も重要になってきます。
大学でもこの点を意識して学んでほしいと思います。当然に本だけで学べることは限られていますから、実際にフィールドに立ってみて物事を考えることも必要です。聞き取りなどをして初めてわかることもありますから。

浅井さんは大手電気メーカーのソリューション営業職に就職される予定なのですね。


大学生
はい。さきほどお話した「チャリティ・マラソン」の運営経験を踏まえて、とにかく世界の人たちの生活を豊かにしたいという目標に向けて、できるだけいろいろなアプローチができるような会社がいいなと考えました。商社も含め、いろいろな企業を見てまわりましたが、どの業界もそれぞれ私の夢を実現できる可能性があるなと思いました。
「ソリューション営業」というのは、顧客先の問題点を探り、解決策を提案していく仕事です。つまり、「ここがもう少しうまくつながるともっと良くなる」ということを考える仕事であって、ひとつの課題に対して多角的なアプローチがあるというこれまでの学びを生かせたらと思います。それから、就職予定の企業は今後教育、医療などの様々な分野にますます深く関わっていくでしょうから、自分の経験や思いを生かせる可能性があると思っています。

周囲の皆さんはどのような道に進みますか?


大学生
公務員、銀行、福祉関係など様々です。大学院に進学する人もいます。

卒業生
私の代も、民間企業、公務員、大学院進学など多様な進路でした。JICAに就職した人もいましたね。

 

 


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