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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




法政大学社会学部の特徴について教えてください。


先生
本学社会学部には「社会政策科学科」「社会学科」「メディア社会学科」があります。どの学科も社会学をベースにしています。私が担当している「メディア社会学科」は、新聞・テレビ・雑誌などのマスメディアやインターネットなどにおいて、どのような現象が起こっているのか、また、メディアを使った情報発信などを学ぶ学科です。
社会学部のカリキュラムは、専門性を高めるための「コース」と、研究手法や知識を社会に応用する技能を高める「プログラム」があり、その中から多種多様な組み合わせで学生の興味に則した履修科目がそれぞれカスタマイズできるのが特徴です。
具体的には、「メディア社会学科」は専門性によって「メディア社会コース」と「メディア文化コース」の2つの主専攻に分かれます。「メディア社会コース」では、メディアや情報をめぐる産業、法、政策、世論形成機能、社会問題に対するジャーナリストの役割など、社会とメディアについて多角的に分析して、望ましいメディアシステムを構築する能力を養います。「メディア文化コース」では、メディアの中の様々な表現や内容を、文化状況や社会システムと関連させながら解読し、メディア表現にかかわる問題探究能力を養うと同時に、独自のメディア表現を創造する力を育みます。
また「社会学科」に入学した学生は、「コミュニティ・デザインコース」「人間・社会コース」「メディア社会コース」の3コースから専門選択ができますので、窪田さんのように「社会学科」の学生も「メディア社会学科」の学生と一緒にドラマ制作を行ったりしているわけです。
そして先ほども触れましたが、1年次の基礎ゼミに続き、2年次より本ゼミに所属して専門性を高めていくという点も、本学部の大きな特徴ですね。

お二人が「社会学科」「メディア社会学科」を選んだ理由を教えてください。


大学生
私が「社会学科」を選んだのは、受験生の頃は新聞記者になりたいと思っていたからです。しかし入学後に「自主マスコミ講座」などでいろいろと学ぶうちに、新聞よりもテレビメディアに興味を持つようになりました。そこで2年次からは、「メディア社会コース」を主専攻にし、副専攻として社会学系のテーマを学んでいます。


卒業生
僕は高校時代から、大学卒業後の進路をテレビ業界に決めていましたので、テレビ業界へ就職する卒業生が多い「メディア社会学科」を選びました。僕の時代には副専攻というのはまだありませんでした。

先生
窪田さんが言ったように、受験時に自分が本当に学んでみたい分野をズバリ選ぶということはなかなかできません。そこで本学部では、専門コースをクロスオーバーさせるようにして、入学後の学びを経て、学生が本当に学びたいと感じたテーマを主専攻にしてもらえるように工夫しています。
主専攻というのはメインとなる専門性で、副専攻はプラスαとなる学びを意味します。例えばメディアで活躍するにしても、主専攻分野だけでなく、語学力であったり、その他の知識があった方がその学生の武器になります。その意味で副専攻を設けています。

特徴的な授業は何かありますか?


先生
「映像制作実習」や様々なメディアを想定した「文章制作の実習」など、スキルを身につける授業が多くありますね。社会学的な学びだけでなく、情報発信する際に重要な映像制作力や文章力も磨ける学科というのは、決して多くはないと思います。
私のゼミではドラマ制作を行いますが、他の先生のゼミではプロモーションビデオのような加工技術を多用した映像を制作したり、ドキュメンタリー映像を制作するゼミもあります。また、メディアの様々な現場を体験する実習授業もいろいろとあります。

好きだった授業や印象に残っている授業などはありますか?


大学生
1年次では「臨床社会学」という授業が印象に残っています。この授業は貧困に苦しんでいる方や、障がいを持つ方々とどう接するのかや、ボランティア活動などに関して学びました。
2年次では、「映像ジャーナリズム論」という授業ですね。主にテレビ局の報道やニュース、ドキュメンタリー映像に関しての講義なのですが、報道現場にいる方々の様子などを教えてもらいました。自分の関心が新聞業界からテレビ業界へと移るきっかけとなった授業です。

先生
本学には、現場体験をしっかりされている教員が多くいます。「臨床社会学」の先生も自身が介護士経験をされていますし、「映像ジャーナリズム論」の先生は日本テレビでドキュメンタリー番組を制作されていた方です。「ネットカフェ難民シリーズ」などが代表作なのですが、こうした現場経験豊富な教員が揃っているのも本学の特徴ですね。

卒業生
僕は「メディア文化論」という授業が面白かったですね。また、ドラマ制作で学んだ撮影テクニックなども、今の仕事に生きていますね。

先生
「メディア文化論」は稲増先生が担当されていますが、この先生はおそらく日本で最初に社会学でアイドル研究を取り入れた方だと思います。メディア文化が生まれてきた社会的、思想的背景や、CM表現に見る社会・文化背景などを授業で教えています。

先生のゼミについて教えてください。


先生
私のゼミの定員は、1学年18名で、2年生から4年生までが在籍します。ゼミのテーマ内容は私の研究と同じ「テレビドラマ研究」です。
2年生の春学期は、ドラマ分析の基礎を教えます。班を作り、班ごとに分析対象とするドラマを決め、いくつかある分析方法の中から選択し、実際に分析をします。そして夏合宿の際にその成果を発表してもらいます。

ドラマ分析はDVDを使うのですか?


先生
そうです。DVDを観ながらセリフを書き起こしたりしていきます。また、分析するテーマは班ごとに自由に決めていきます。

ドラマ制作も行うとのお話でしたが。


先生
はい。2年次後半に、プロデューサー、監督、撮影、照明、脚本などそれぞれ役割分担を決め「ドラマ制作」を実際に行います。まず私がテーマを学生に与えます。窪田さんたちには「過去」というテーマを与えています。そのテーマに沿った作品であれば、エンターテイメント作品でもシリアスな作品でもかまいません。
また実際の制作に際しては、ストーリーの組み立て方や脚本の書き方なども教えますし、映像のカット割りやカメラアングルなど、視覚効果の基本的なテクニックなども教えます。主に2月、3月の春休みを制作期間にあて、必要となるビデオカメラ等の機材はすべて大学が支給しています。できあがった作品に関しては、学内あるシアタースペースで発表を行います。
ドラマ制作は2年次での経験がメインですが、最近では4年生が卒業制作としてドラマ作りを行っていますので、それを手伝う等の経験も合わせれば、複数回の制作経験が積めることになりますね。

大学生
私は今まさに制作中で、脚本を担当しています。脚本は「箱書き」と呼ばれるシーンごとの要点・設定づくりを、まず班のメンバー全員で行います。それを基に、各登場人物のセリフを私が書いていきました。ストーリー展開はできていましたので、脚本作りで行ったのは、その展開に沿うようなセリフを見つけていくという作業でしたね。

卒業生
僕たちの時は、「文七元結(ぶんしちもっとい)」という落語を題材にしたドラマを制作しました。「他者への献身」をテーマにした人情噺(ばなし)で、この落語をモチーフにしたオリジナルの現代版ドラマを制作しました。

先生
このドラマ制作の目的は、まず、班のメンバー全員が裏方になり、共同して一つの作品を作ることにあります。また、実際にドラマ制作などの現場へ就職した際の学びにもなるように、プロデューサー、監督、撮影、照明、脚本などの役割を、自己適性も含めてシミュレーション体験によって勉強することも目的にしています。

「ドラマ制作」なんてすごく楽しそうなゼミですね。


大学生
はい。ですから一番人気のゼミですね。

卒業生
今一番人気なんですか?

先生
一番人気ではないですが、人気はありますね(笑)。2年生の4月にゼミ選抜試験があります。試験といっても教員によって試験方法は様々ですが、私の場合はまず、自分ならどういう番組を作りたいかをレポートにしてもらう「テレビ番組企画書」というものを書かせます。その次に面接をして18名を選びます。

大学生
私はドラマが作れるということ、脚本の勉強がしたかったことなどが理由で先生のゼミに応募しました。

卒業生
僕もドラマ制作ということに、まず興味をひかれましたね。

先生
私のゼミ生は、やはりテレビドラマ好きばかりが集まりますね。また、ドラマのテクスト分析などは、こもって作業を続けるというやや暗めの仕事ですので、ドラマが本当に好きではないと続かないということもあります(笑)。
またゼミでは、ドラマ制作だけでなく、テレビ局へ企画書を提案するということも行っています。寺田さんはどこに出したのだっけ?

卒業生
テレビ東京に出しました。

先生
テレビ東京で制作局長をしている私の友人に、書き上げた企画書を評価してもらっています。こうした作業を通して、テレビ局の人の視点や考え方なども学べるようにしています。

研究施設など学びの環境で何か特徴はありますか?


先生
映像制作用のカメラや音声収録用マイク、また映像編集用のコンピューターも多くあります。そうした機材が揃っているのも本学の特徴でしょうね。

卒業生
僕は今テレビ局にいますので、機材類に関しても詳しくなっていますが、放送局の人間から見ても、社会学部の映像制作機材環境はかなり贅沢だと思いますね。

 

 

●就職活動、仕事について




テレビ局へ就職した動機・理由を教えてください。


卒業生
僕はお笑い番組やバラエティ番組が単に好きというより、ちょっと大げさに表現するなら「人生を救われた」(笑)ほど、助けられました。特にダウンタウンというお笑いコンビが大好きで、彼らの代表的な番組「ごっつええ感じ」を作っていたのがフジテレビでした。ですから、フジテレビに対する思い入れがすごく強かったのです。
その熱意が伝わったのか、フジテレビには就職できましたが、他局はすべて落ちました(笑)。


先生
寺田君は、就活が始まる前の3年次の秋に、テレビ局勤務を目指す学生に対してフジテレビが行っている就業体験「フジテレビクリエイターズスクール」に参加しています。

卒業生
そうですね。書類選考と面接を経て参加しました。

テレビ局への就職は狭き門だと思いますが、試験はどのような形ですか?


卒業生
面接に続き筆記試験があり、また面接という感じでしたね。

先生
テレビ局は面接が多いですね。最初は短い面接が続きますが、そこでどんどん振り落とされていきます。短い時間の中で面接官にどれだけ印象を残せるのか、そこが最初の方に行われる面接の勝負になると思います。

テレビ局へ入るコツみたいなものは何かありますか?


卒業生
高校生の頃は、番組作りに欠かせない放送作家という職業に憧れていました。番組の構成やナレーション、必要によっては登場するタレントさんのセリフなども考えるのが放送作家です。ですから、高校時代から番組企画を考える練習をしたり、好きなダウンタウンの番組はMDに落として聞いたりして、自分なりに勉強していました。そのあたりの熱意を買ってもらえたのではないかと思っています。

先生
今年の卒業生でも日本テレビに就職するゼミ生がいます。テレビ局に入る学生たちは、やはりテレビメディアに対する情熱がほかの人とはちょっと違いますね。その日テレへ就職する学生も、頼まれもしないのに100本の番組企画を書いて面接の時に出したと言っていました。
単にテレビが好きという学生は大勢いると思いますが、それを超えて努力できるかどうかが、いわばコツなのかもしれませんね。

勤務体系はどうですか? ADは何名くらいいますか?


卒業生
最初の1年は営業局でCM営業を担当し、その後、現在の部署に異動になりました。僕の場合、出勤時間は12時です。帰りは仕事量などによって変動しますが、休みはしっかり確保できるようになっています。ADは僕のセクションで10名ほどいます。

テレビ業界で働いてみて、テレビメディアの持つ影響力の大きさなどを感じられることはありますか?


卒業生
個人的な体験ですが、2時間特番などに携わると、番組最後のスタッフクレジットに僕の名前も出たりするわけです。そうするといろいろな人から電話があって(笑)、「みんなけっこうテレビを観ているのだな」と思ったりしますね。
また担当している「SMAP×SMAP」という番組で、SMAPのメンバーが5人だけで旅に出るという特別企画を行いました。これまで以上にSMAPメンバー各自の個性をクローズアップさせる企画意図を持った番組だったので、放送後の視聴者の方からの反響はすごかったですね。
このようにテレビは大きな影響力があるため、番組作りにおいては「その番組を観ることで、不愉快な思いをする人や傷つく人はいないか、常に考えろ」という上司からの言葉をいつも思い出しながら仕事をしています。

AD業務のやりがいはどういうところにありますか?


卒業生
番組作りは細かい作業も多く、とても大変な仕事です。しかし、そうした準備を進めて、番組の収録が進み、タレントさんとスタッフで力を合わせて活気のある番組ができて、無事収録や放送が終わった時というのは、やはり大きなやりがいがあります。また、視聴者の方から好意的な反響が寄せられたりすると、苦労も忘れることができますね。
もう一つ、ADとしてはやはり視聴率は気になりますので、数字が上がると達成感を感じます。
「ビジネスと感性を両立させる」ことが今の仕事上の目標で、視聴率はビジネスにあたる部分で、感性はいかに面白い番組を作るか、ということだと思っています。

同期の方々の就職先はどうでうでしたか?


卒業生
広告業界へ進んだ人が多いですね。インターネット系も含む広告代理店やJR関連の広告代理店、テレビ関係ではNHKサービスセンターのようなNHKの関連会社へ就職した友人もいました。

先生
女性ですと金融関係も多いですね。

窪田さんは目標としてはどういう業界を目指したいですか?


大学生
私もテレビもしくはマスコミ系で、自分から情報を発信できるような職種に就きたいと考えています。ただ、テレビ局は就職も難しいですし、また入れても「AD業務は大変そうだね」と友人と話しています(笑)。

卒業生
いや、やってみると楽しいですよ(笑)。

卒業生の主な就職先を教えてください。


先生
マスコミ・情報分野へ進む学生は学科の30%くらいですね。少ないと思われるかもしれませんが、マスコミ系というのは求人自体がそれほど多くないので、他の学科と比較すれば多い方だと思います。周辺の番組制作会社などにも多くの卒業生が就職しています。
ただ本学科での学びは、ほかにも様々な分野で生きてきます。例えばゼミ生の中には、ゲームソフトメーカーに就職し、現在は宣伝部で責任のある仕事をしている卒業生もいますし、食品メーカーや消費財メーカーなどへ進んで商品企画などを担当している卒業生もいます。

 

 


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