●プロフィール
先生の研究されている専門分野に関して教えてください。
■先生
専門は大きく3つありまして、「経済法」「国際経済法」「交渉学」です。
「経済法」は、国内での競争政策に関する法律では「独占禁止法」が中心です。企業と企業を競争させることで、より好ましい経済社会を作るという考えに基づいた生きた法律です。
「国際経済法」は、これを国際レベルで考えたものであり、自由貿易の促進がテーマとなります。ただし、国家間の利害関係が関与しますので、「通商法」という形でWTO(世界貿易機関)やそれぞれの国家国際機関が監視をすることになります。しかし現実には、各国の思惑が入り込みますので、とても動きが激しい分野で、国々の情勢によって法も変動するといった面白い側面があります。
「交渉学」は、問題解決のために最適な交渉方法や、両者がお互いにWin‐Win(どちらも勝者になる)になる道を考える学問分野です。日本では新しい分野と位置付けられていて、「交渉学」が学べる大学はほとんどありません。しかしアメリカではすでにハーバード大学などを中心に、先端の研究教育が長年続けられています。
私はハーバード大学留学の際にこの「交渉学」と出会いました。学生の間で人気のある科目だったので履修してみたところ、とても興味深く、また対人関係が関わるあらゆる分野に応用できる重要な学問だと思い、専門性を深めようと決めました。そして現在は、研究を重ねるとともに、本学で教えながら、日本での「交渉学」の普及にも力を入れているところです。
これら3つの研究分野は、「問題解決力」というキーワードでつながっていると言えますね。
「交渉学」は法学の一つの分野と考えてよいのでしょうか?
■先生
たしかにアメリカでは、法学教育の中から「交渉学」は始まりました。しかし、例えば現在のハーバード大学においては、ロー・スクールだけでなく、ビジネス・スクールや行政大学院でも「交渉学」を教えています。要は人と人、企業と企業、国と国などの交渉手法ですから、現在では、応用範囲の幅広い学問分野として位置付けられています。
ただ法学、特に弁護士を目指す人においては、間違いなく必須の学問分野と言えるでしょうね。なぜなら弁護士は、依頼人の問題を、当事者あるいは検察官や裁判官と交渉することで解決させていくわけですから。
WTO(世界貿易機関)などが「貿易のルール」を制定する場合、どこの国の法律を基準としているのですか?
■先生
影響力を持っているのはやはり米国とEUですね。審判の仕組みも主に英米方式で、米国の民事訴訟に近いものになっています。その意味では日本やアジア諸国には少々不利な仕組みと言えるかもしれません。
また、現在交渉が進められているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が、特定の国にだけに有利にならないよう、WTOルールの抑止力がどれだけ有効なのかという点も、今後は気になるところだと思います。
研究はどのような形で進めていくのですか?
■先生
「交渉学」に関しては、日本では研究がまだあまりないため、主にハーバード大学での研究を見ています。ハーバードから発信される刊行物などを読むわけですが、ゼミでは学生たちにも読んでもらうようにしています。
また、日本での「交渉学」普及のための活動としては、私が副所長を務めている「慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所(G−SEC 所長:竹中平蔵)」にプロジェクトを立ち上げて、各方面の専門家とチームを組んで研究を進めています。このプロジェクトでは、アメリカでの研究内容に関してディスカッションを行い、分析したい課題を見つけ、共同で研究を進めています。
研究成果のアウトプットはどのようにされていますか?
■先生
「交渉学」に関しては、今は社会に広める広報活動を中心に行っています。そのため、授業以外にも、G−SECで「交渉学のすすめ」というシリーズのセミナーを、一般にも開放しています。この研究成果は論文よりも、ディスカッションペーパーにすることが多いですね。
「経済法」等の研究に関しては、論文にまとめます。
松下さんは現在どのようなお仕事をされていますか?
■卒業生
メガバンクに就職し、現在は広島県の福山支社に勤務しています。主な仕事は、企業にお金を貸し出す融資業務で、決算書を分析したり、日々の業績を社長にヒアリングしたりしています。
松下さんの大学時代の専門は何ですか?
■卒業生
田村先生のゼミで、経済法を中心に学びました。
吉原さんのご専門は何ですか?
■大学生
僕も田村先生のゼミに所属し、「経済法」と「国際経済法」を中心に勉強しています。サブゼミとして「交渉学」も学んでいます。
大学ではどういう活動をされていますか?
■大学生
スキューバ・ダイビングのサークルに所属し、3年次は代表も務めました。2週間に一度、週末に伊豆で合宿をするのが主な活動です。長期休みの際は、海外にも任意で出掛けます。1年次の春休みには、パラオ共和国で日本人が経営しているダイビング・スクールに2カ月間住み込み、お客さんにスキューバを指導するアシスタント・サポーターを担当しました。
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