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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




お二人が「慶應義塾大学法学部法律学科」を選んだ理由を教えてください。


大学生
高校の時にまず考えたのは、卒業後に日本の経済を支えるくらいの基幹企業へ就職をするということでした。そこでリサーチしたところ、慶應義塾大学には三田会というOBネットワークもあり、文系学部では法学・経済学部がいろいろな分野の就職にも強いと聞き、法曹界へのあこがれも少しありましたので法学部を受験目標にしました。


卒業生
当時の自分が憧れた人物の多くが慶應出身の人たちでした。そこで、自分も慶應義塾大学に入りたいなと思いました。また、法曹界に興味を持っていたので、法学部法律学科を選びました。

同期の方の入学動機はどうでしたか?


大学生
1年次の段階では、ロー・スクール進学を視野に入れている学生は多いと思いますね。

卒業生
そうですね。1年次は希望に満ち溢れていて、半分くらいの学生からは「法曹界でやってやるぞ!」という意欲が感じられました。一方で、半分くらいからは「学生生活を楽しみながら企業への就職を目指す」という雰囲気も感じられました。

先生
私自身もそうでしたが、法学部法律学科だからといって、すべての学生が法曹界への強い意志を初めから持って入学してくるわけではありません。そもそも高校生の段階では、司法試験がどれほどに大変なのかは、親が弁護士でもなければわかりませんからね。
むしろ、法学の知識は広く社会に生かせますので、法曹も含めさらに多彩な公務員、一般企業という幅広い将来の選択肢が魅力に感じられて、本学科を目指す学生が多いと思います。

入学してみた印象・感想はいかがでしたか?


大学生
全国から優秀な学生が集まっていることを実感しましたね。海外経験の多彩な学生も多く、価値観やバックグラウンドも自分とはまったく違っていて、「スゴイやつだな」と尊敬できる人も多くいました。僕は海外経験がなかったため、自分がいかに井の中の蛙だったのかを思い知らされた感じです。
授業では、友達と情報共有をしながらしっかり勉強すればついていけるという印象でした。ロー・スクール進学に関しては、1年次の後半までには、司法試験の難しさや大学院でかかる費用などの現実的な情報・状況が入手できます。それらを総合的に考えて、僕の場合は法曹界ではなく、一般企業への就職を目指すことに1年次の段階で決めました。

卒業生
慶應に入ってみて「新しい世界が広がっている」という印象をまず受けました。吉原君も言っていましたが、帰国生が多くて、多様性に富んだ学生が集まっていますね。 ロー・スクール進学に関しては、3年次で就職活動を行う段階まで悩みました。

慶應義塾大学法学部法律学科の学びの特徴について教えてください。


先生
私が慶應義塾の法学部を選んだ理由は、当時でも授業が幅広く展開されているという点でした。現在では、学生の総合的な視野形成を育成するために、さらに科目も多彩になり充実しています。
法学部には政治学科、法律学科がありますので、そのどちらの学科の学問も横断的に学べますし、経済学系の授業も履修でき、あらゆる社会学系分野を学ぶことができます。
ゼミも、専門性を掘り下げる「主専攻」に加えて、「副専攻」も人文科学、自然科学を含めた幅広い分野から選ぶことができます。また当然ながら英語を始めとする語学プログラム、留学制度も充実しています。また、私の専門である「交渉学」のように、日本では本学でしか履修できない授業があるのも特徴の一つと言えるでしょうね。 卒業後に法科大学院を経て法曹界を目指す学生にとっても、本学は最適な環境があります。慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)は、2013年の司法試験合格者が201名で合格率は56.78%でした。この数字は、大学院別合格者数・合格率において、東京大学を抜いてトップの成績です。

「交渉学」の授業はどのように展開されるのですか?


先生
私がハーバード大学で「交渉学」を履修しようとした際に、実は最初は学事担当者から反対されたのです。その理由は「かなりの英語力と議論する能力を要するから」というものでした。そこを頼み込んで履修したのですが、参加してわかったのは、授業がとにかく実践的だということでした。先生はテーマと内容説明だけして、あとは学生たちがペアになって授業の間ずっと交渉を行い、その結果を報告してフィードバックするというものでした。
それまで受けていた法学系の授業は、ほとんどが先生の講義を聴いてノートを取るというスタイルでしたので、「交渉学」は新たな分野の学問というだけでなく、とにかく模擬交渉による実践に学ぶという授業の進め方自体が革新的なものでした。
ですから本学の授業においても、「交渉学」に関しては理論を学ぶだけでなく、実践を経験することで理解を深めるというスタイルで教えています。

お二人が好きだった授業や役立ったカリキュラム、制度などを教えてください。


大学生
今先生が説明された「交渉学」ですね。講義を聴く受け身の授業が多い法学部において、「交渉学」では、毎回異なったパートナーと組み、指定された時間内に交渉の実践を行います。その間先生は学生たちのやり取りを見ていて、交渉終了後にいくつかの交渉例を出して解説してくれるという授業です。
交渉のテーマも、例えば、片方がすごく怒った状態を想定して、いかに謝罪し和解していくかといった日常的なものもあれば、売り手と買い手を演じて値段交渉をするといった商談ビジネス的なテーマもあり、勉強になりました。

先生
交渉学における評価のポイントは、まず「聞く力がどれほどあるか」という点です。交渉においては、意見の主張を重視しがちですが、まずは「相手の意見をしっかり聞く」ことが重要です。なぜ聞く力が重要かというと、「相手の意見をよく聞くことで、様々な情報をしっかりと取り込む」ことができるからです。
そうして取り込んだ情報を基に、自分が提案できる範囲を想定したり、双方の満足をもたらすために必要なことを考えることができるようになっていきます。
例えば価格交渉の場合、最初に具体的な金額を出してはダメですね。最初に金額を出してしまうと、そこでお互いの気持ちがこう着してしまいます。ですから金額は最後まで控えて、まずはお互いの状況等の情報交換を進め、提案できる選択肢などを探りながら最後に金額を交渉する、というのがセオリーです。

大学生
交渉学を学ぶと、実生活での人間関係においても、交渉テクニックが生かせるので実用的でもあると思いますね。
また、今年から新たに始まった「災害復興と法」という授業も履修しました。講師は日弁連に所属し、被災地で復興支援も行っている弁護士さんでした。授業内容は災害復興と関係している法問題を教えてくださるのですが、やはり災害復興に関しては、災害現場を実際に訪れることがとても重要なのだと気づかせていただきました。

今のお仕事に役立っている授業はありますか?


卒業生
主専攻の田村先生のゼミが、一番役立っていると思いますね。先生のゼミでは、3年次は主にディベートを学び、4年次では卒業論文を作成します。卒業論文はどのゼミでもやりますが、ディベートは田村ゼミならではのもので、4つの力が養われたと思っています。
1つめは文献などを読み、情報の取捨選択を行うリサーチ力です。そしてそのリサーチを基に、どう論理的な展開を行うかという論理的思考力が2つめです。そして3つめとして、ディベートはひとりではなくチームで行いますので、人とのコミュニケーション力も養われます。そして最後に4つめの力として、実際にディベートをする中で、プレゼンテーション能力が身についたと感じています。
この4つの力は現在の仕事にも役立っています。

田村先生のゼミの内容を教えてください。


先生
私のゼミのテーマは、私の研究分野である、「経済法」「国際経済法」が中心ですが、「交渉学」も織り交ぜながら学んでもらっています。いま松下君が話してくれたように、3年次は主に「ディベート」をやります。このディベートでは、相手を三段論法できちっと説得していくことを徹底的に身につけてもらいます。なぜディベートをやるのかというと、自分の意見を論理立てて議論することを学んでほしいからです。また交渉学を通じて、単に自分の意見を貫き通すのではなく、相手とWin‐Winの関係になるように導くことで、異なった意見や価値観に対応する能力を身につけてほしいと考えています。こうした学びは、社会に出てからも役立ちます。
そして4年次は卒業論文です。本学では卒業論文は必修ではありませんが、私のゼミでは必修にしています。なぜかというと、卒業論文という形でevidence(論拠・根拠)をしっかりと添えて論理的にレポートを構築する能力は、社会に出てからも上司や顧客に提出する報告書やレポートにも生かせるからです。私はこうした能力は大学で身につけるべきであると考えています。
また、語学力の強化という面では、ディベートをやる際には、英語の資料を読み込んでもらっています。

卒業論文のテーマはどういうものでしたか?


卒業生
独占禁止法の中の行為規制である「優越的地位の濫用規制」というテーマです。

先生
「優越的地位の濫用規制」は今の社会において、とても重要なテーマですね。言葉は難しいですが、優越的地位の濫用は、例えば全国にショップ展開する有力店舗などが、その優越的な地位を使って、メーカーや納入業者に不利益となることを強制する、などがその一例です。電気店が家電メーカーの社員を派遣社員として働かせるなど、社会の様々なところで最近多く見られます。
このように、社会においては強いもの、弱いものに二極化して、弱いものは不利益を被る機会も多くなる。それを是正するための規制が「優越的地位の濫用規制」です。松下君はこの現状をしっかりととらえて卒業論文を書いてくれました。

卒業生
2011年6月に、公正取引委員会が岡山県を地盤とするスーパーチェーンに対して2億超の課徴金、つまり、罰金を支払うよう命じました。そのスーパーチェーンは、納入業者に従業員を無償でスーパーに派遣させるなどしており、優越的地位の濫用にあたるとされたのです。そして、実は優越的地位の濫用で課徴金が課せられたのはこれが初めてのケースでしたので、とてもホットなイシューで、このテーマで卒業論文を書こうと決めました。
卒業論文では主に、「優越的地位」と「濫用行為」の解釈、また、実際に問題となった事例の考察をしました。

法学部で学んで良かったと思えることは何ですか?


卒業生
法律は仕事でも役立ちますし、日常生活においても、いろいろな法律と接する機会があります。その面で、法学部で学んで良かったと思います。


大学生
同感ですね。ニュースで様々な法律の問題が取り上げられますが、社会の問題に対してかなり敏感になれました。法律の知識がないと、そうしたニュースに関心が向かなかったと思います。

法学部の勉強で大変なところはどういうところですか?


卒業生
学びの多くは、多様な法律を覚え、過去に蓄積された知識や判例、学説を検証するなど、コツコツと勉強するという地道な作業の積み重ねです。

大学生
たしかにそうですね。受験でもかなり膨大な暗記をしますが、法学部ではその暗記スキルが役立っているなと思うくらい、いろいろなことを覚えなければなりません。

印象に残っている学内行事やイベントなどはありますか?


大学生
「法学部ゼミ対抗ソフトボール大会」ですね。6月と11月の年2回開催ですが、この大会がある日は法学部の授業は休講にしてくれるくらい、本格的にやらせてもらえます。しかも、教授はまず試合には出ませんが、田村先生はしっかり参加してくれます(笑)。

先生
私はスポーツ好きですからね。40あるゼミのうち、教員は2人くらいしか出ません(笑)。
うちのゼミはなかなか優勝まではいかないけど、4強くらいまではいつも勝ち残ります。そしてうれしいことに、2013年はゼミ25年目にして初めて優勝したのです。

大学生
合宿して練習するゼミもあるくらい、みんな気合いが入っています(笑)。

卒業生
私は1年次に初めて野球の慶早戦に応援に行った時に、慶應に入ったことを実感しました。

先生
早慶戦って言わないと伝わらないかもね(笑)。

卒業生
そうですね(笑)。

大学生
でも僕らは慶早戦って言っていますから、そこはこだわりで(笑)。

卒業生
スタンドでは慶應義塾応援歌の「若き血」をみんなで肩を組んで歌いますが、一体感が生まれてとてもいいなと思いました。

 

 

●就職活動、仕事について




松下さんがメガバンクを就職先に選ばれた理由を教えてください。


卒業生
社会に出るにあたり、また、この先長くビジネスと関わっていく上で、金融はビジネスの基本ですし、資金調達を含む金融に関する知識やノウハウ、社会経験を積みたいと思い、メガバンクに就職しました。

職場の同期の方はどういう学部学科の出身者が多いですか?


卒業生
銀行はとても幅広い学部から集まっています。経済、経営、その他理系学部出身者も在籍しています。

大学の同期の方はどういう方面に就職されましたか?


卒業生
金融やマスコミ、コンサルティング、各省庁など、幅広い分野に就職していますね。

お仕事のやりがいはどういう時に感じられますか?


卒業生
ご融資をすることで、企業の成長を支えられることにやりがいを感じています。

吉原さんは現在3年生ですが、就職活動中ですか?


大学生
はい。始めたばかりで、商社、金融、広告業界など、モノではなく人で勝負できるような業態の企業を中心にリサーチしています。また、なるべく多様な価値観を持った人と関われるような仕事、人的ネットワークを構築して活用する仕事に就きたいと考えています。
人気があるのは、商社や金融系ですね。

法学知識を生かした企業法務系の職種などは考えませんか?


大学生
企業法務は重要な仕事だと思いますが、僕としてはバックオフィス的な内部業務よりは、外部の人と関われる職種を希望しています。

卒業生
銀行の場合は、債権法や物権法など、日常業務と法律は切っても切り離させない関係にあるので、法学知識は十分に生かせる業界です。

先生
私のゼミでやっている経済法などに関係する企業からも、就職の話が来ます。ただ、日本では全般的に、法務部自体を持っている企業が少ないという現状があります。一方で、国際的ビジネスを展開している企業においては、常に法律の戦いがありますので、法学部生に対する期待感は強いと思います。
法務部を重視している企業に入り、その後会社からロー・スクールに進学させてもらい、さらにスキルアップしている卒業生もいます。

卒業生の主要な就職先、業界を教えてください。


先生
ゼミ生の例で言いますと、各省庁や金融、監査法人、商社、メーカーと、各大手へ就職していきます。またマスコミ業界でも、アナウンサーや記者など、多方面で活躍しています。
中には、就職しないで海外へ旅に出て、その後ミュージシャン活動をしながら事業を海外で立ち上げて成功している、というユニークな卒業生もいますね。
ゼミ生を選考する際に、私は多様性を大事にしていますので、個性的で異色な学生も選んでいます。そういう学生は少数派ですが、ゼミも面白くしてくれるし、就職先なども異色ですね(笑)。

先生は法学部を卒業された後、ハーバード大学ロー・スクール修士課程と慶應義塾大学大学院法学研究科へ進まれましたが、どのような動機だったのですか?


先生
一つには、学部時代に大学教授が政府関係機関などに政策提言することを見て、教授職が社会に貢献できる仕事だと知ったことが挙げられます。もう一つは、関心のある分野の研究を続けたいという意欲があったからです。

ハーバード大学へはフルブライト奨学金で行かれていますが、フルブライトに関して少し教えてください。


先生
実は私は今、フルブライトの委員もやっています。自分で言うのもちょっとはばかられますが、「フルブライト奨学金」を得るのはなかなか狭き門です。しかし、挑戦してみる価値は十分にあると思います。フルブライトは、将来日米関係に有益となる人材を、日本から米国の大学へ留学させる制度で、費用はフルブライトが奨学金として提供します。ただし、プログラムがいくつかあり、奨学金はいろいろなタイプがあります。
フルブライトの特徴は、選考において、「研究目的」と「これまでの学業内容・実績」が重視される点です。留学に際して奨学金が必要な経済状況かどうかは、あまり関係ありません。つまり、期待できる人材であれば選考に通る可能性は十分にあるのです。
選考内容の詳細は日米教育委員会のホームページを見ていただきたいのですが、申請書類を用意するのがなかなか大変です。また、面接はすべて英語で行われますし、かなり突っ込んだ質問もされます。

 

 


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