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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 

●5年後に向けて




皆さんの将来の夢・目標は何ですか?


大学生
どういう職種の仕事をするにせよ、「自分にしかできないような仕事」、あるいは「自分にしかつけられない付加価値」といったものが持てるようになることが目標です。


卒業生
銀行業務においてはまだまだ学ぶ点が多くありますので、そこをしっかりと身につけていくことが直近の目標です。その後に関しては、まだ見ぬ世界を見てみたい、という目標もあります。5年後と言いますと、私は29歳くらいになるのですが、その後30歳以降で自分がどんな道を究めてみたいのか、その道筋をこの5年間で見つけたいと考えています。

先生の研究で達成したい目標はありますか?


先生
「独占禁止法」に関しては、実はここ数年は研究のペースはゆっくりでした。というのも、法改正で変化があり、しっかりと定まっていなかったからです。ところが、2013年に法律の改正がやっと一段落しましたので、今年からの5年間は、独禁法に関する研究をまた本格化し、著書にまとめていこうと考えています。
「交渉学」に関しては、私のライフワークにもなると思いますが、普及と発展に向けて活動を加速させたいと思っています。具体的には、「交渉学」も含めてグローバルリーダーを目指す人が履修するべき新たな学問分野を揃え、「リーダー育成プログラム」のようなものを考えています。これに関しては、ハーバード大学関係者に協力していただき、どんな新しい科目があるのかを教えてもらっているところです。
検討している新たな学問分野の一例を挙げますと、集団で意思決定を行う際に、最適な意思決定方法を考える「グループ・ダイナミックス」という学問もその一つです。また「コミュニティ・オーガナイジング」は、NPOやNGO等の組織作りの最適な手法を学ぶ学問です。
現在のハーバード大学には、オバマ氏を大統領にしたことで有名なマーシャル・ガンツ博士などリーダー育成の権威が揃っていますので、提携してリーダー育成プログラム作りを行うには、稀有なチャンスだと思っています。

世界屈指の名門であるハーバード大学に留学して、日本の大学とは何が違うとお感じになられましたか?


先生
ひと言で違いを言うなら、「多様性」ですね。
日本の大学にも多くの留学生が学びに来ていますが、ハーバード大学には世界中から、まるで世界の縮図のように優秀な学生たちが集まっていて、まさに多様性の宝庫です。先生と学生の価値観やニーズも多様ですから、そこには常に最先端の学問分野が生まれていく土壌があります。
日本では先生たちの価値観や先入観が邪魔して「これは学問とは言えない」と考えられてしまうテーマや分野も、ハーバード大学ではどんどん研究が進められています。伝統ある名門校ですが、新しいものに対して恐れずに取り組んでいく原動力は、おそらくこの多様性から出てきているのだろうと思います。
「常にトップの座にいたければ進化し続けろ」という言葉があったかと思いますが、ハーバード大学はまさにこれを実践しているのでしょうね。

先生の研究のやりがい、社会的な意義はどのようなところにありますか?


先生
「国際経済法」は、研究内容を社会に広く知らしめることで、政府レベル、国民レベルで問題に対する関心が向くようになると思います。
「独占禁止法」(経済法)は、企業レベルでは、質の高いより豊かな経済活動を実現することに貢献できると考えています。国民レベルでは、良い意味での競争経済は良質で廉価な製品・サービスを生みますので、豊かな生活が営めることに貢献できると思います。そもそも「独禁法」とは、消費者の利益となることを担保する法律なのです。
「交渉学」は、「本当の教養とは何か」という、日本が忘れてしまっている重要なことを思い出させる役目があります。現代の教育の原点である古代ギリシャに回帰すると、本来的に大切な教養とは、まず文法学・修辞学・論理学の3学で、その次に、算術・幾何・天文学・音楽の4科を知識と考えていたと言われています。
この3学は、現代的に表現するなら、「コミュニケーション能力」、「対話・議論する能力」、「問題解決能力」などになると思います。そして4科とは、その他多くの学問知識になります。現代の日本では、4科が示す学問知識が豊富であることを教養がある、と考えますが、実はまず、3学が教養の基礎となる、と考えるべきなのです。
ハーバード大学では、現在こうした科目が重視されていまして、「交渉学」もその一つです。対人関係において、お互いが利益となる解決法を探る交渉学は、単なるスキルではなく、真の教養でありかつ、対人関係の問題解決に役立つという社会的な意義があるわけです。
福沢諭吉先生は、慶應義塾大学の創立目的を「気品の泉源、知徳の模範」と言いました。気品とは、品格を持ったコミュニケーション能力を有する人格形成の大切さを表現し、知徳とは学問知識を学ぶことの重要さを表現しているのではないかと思います。この「気品」というもう一つの教養も重要であるいう教育理念の原点に立ち返ることを、「交渉学」の普及を通して行っていきたいと思っています。

先生の研究に触れるために高校生ができることは何かありますか?


先生
『ハーバード×慶應流 交渉学入門』という本を中公新書ラクレから出版しています。小型で高校生にも読みやすい内容ですので、この本を手にしてみてほしいと思います。

 


●高校生へのアドバイス




もし高校1年生に戻れるとしたら、何をしたいですか?


卒業生
短期でもよいので海外留学をしますね。少しでも早く海外の文化に触れたいと思います。

大学生
勉強や部活、遊びなどすべてにおいて全力で高校生活を謳歌したので後悔はないのですが、僕も松下さんと同じで、もしやり直すなら留学経験を積んでみたいと思います。

大学・学部・学科選びなど進路選択はどのように決めていきましたか?


大学生
結果としては、自分で最初から目標にしていた慶應の法学部に入りましたが、浪人中には、いろいろな大学のことを調べました。現役の頃はブランド志向があったのか、有名大学のことしか考えませんでしたが、どういう大学にどのような学部があり、その特徴は何だろうかと、詳しく調べていきました。学部学科選びに関しても、予備校の先生やチューターさん(相談員)などにも話を聞いたりしましたね。
高校生の皆さんにも、大学・学部学科選びに関しては、いろいろな大学をリサーチしてほしいなと思います。

先生
私の出身高校はほぼ全員がエスカレーターで大学へ進学する附属高校でしたので、外部大学の受験はまさに孤軍奮闘でしたね。相談相手は慶應の卒業生だった父親と、あと頼りにしたのは、当時Z会の通信教育を受けていましたので、進路相談の質問をしたりもしました(笑)。
高校生へのアドバイスとしましては、家族や親戚などにも協力してもらって、高校時代になるべく多くの大学生や社会人と会って話をする機会を持ってほしいと思います。これはゼミづくりでの経験則から言えることですが、授業に社会人を呼んで話をしてもらうと、「実社会ではそういうことをやっているのだ」と、大学生にとってすごく新鮮な体験ができます。同じように、高校生にとっても大学という想像上のイメージをよりリアルにしてくれるのは大学生そのものです。ですから大学とはどういう場所であるのかを、大学生に会って話を聞くとよいと思います。さらに社会人とも会えば、学部学科選びと就職先を照らし合わせながら、進路選択が良かったのかどうかなどの情報も入手できると思います。そしてそれらの出会いを、自分の将来の組み立てに生かせるとよいですね。

受験勉強で役立った方法を教えてください。


大学生
テクニックではないのですが、浪人した1年間に関しては自負できることが1つあります。それは年間の勉強時間量において、その年の受験生の日本全国ベスト5に間違いなく入っているだろう、ということです(笑)。
浪人生活だからできたのでしょうが、文字通り365日休まず、1日10時間以上勉強しました。

吉原さんが浪人時代に特に力を入れて勉強した教科は何ですか?


大学生
僕は理系から文転したため、現役時代は世界史をまったく勉強していませんでした。そこで、世界史の勉強にかなりの時間を割きました。というのも、慶應法学部の世界史の問題はかなり難易度が高いとわかったからです。
進学塾などが出している「世界史 一問一答集」を買い集めて、出題頻度が高い問題はもちろん、星一つのレアな問題まで、世界史マニアのようにすべて勉強しました(笑)。

高校と大学の学びのつながりや違いについて教えてください。


先生
二人の受験勉強の話にもあるように、受験期はどうしても暗記や詰め込み型の勉強が多くなってしまい、勉強の意義が見出しにくくなります。
ただ、数学にしても実は論理思考を養っているわけで、高校ではとても重要なことを学んでいるわけです。私自身も実は数学が嫌いでした。当時の慶應法学部受験は数学必須でしたので、いやいや勉強していました。しかし今振り返ると、受験期の数学の勉強が、交渉学などにも深く関わる論理的思考の成長に、とても役立っていたことを実感しています。このように高校時代の学びは、将来に生きてくることが多くあります。
例えば、大学に入ってから学ぶ教養科目は、高校の勉強の延長線上に位置するものがほとんどで、高校時代の学びがないとわからないことが多いのです。
「高校の勉強がいかに大学の学びにつながっているのか」を、高校の先生たちが高校1年生に対してきちんと教えてあげたらよいのではないかと思います。
受験勉強のモチベーションも、単に志望校に合格したいからというだけでなく、さらに大学に入った後に役立てたいから勉強する、と考えればもっとやる気が出ると思いますね。

最後に改めて慶應義塾大学法学部の素晴らしさを教えてください。


先生
本学の魅力は、やはり多岐に渡る科目が履修でき、「交渉学」のようにここにしかない授業もある、という点です。
法曹界に限らず、「リーガルマインド」を持って社会に出るということは、正しい判断や意思決定ができる筋の通った人間として社会からも評価もされます。そうした人間形成のための学問を総合的に提供しているのが、慶應義塾大学法学部だと思います。

大学生
学びの環境も素晴らしいですが、就職活動においては、企業からも注目されているのを感じています。その点も慶應義塾大学ならではではないでしょうか。

卒業生
そうですね。各業界や政界も含め、多方面に卒業生を送り出しているという刺激的な環境が慶應の素晴らしさだと思います。

大学構内のお気に入りスポット
先生
福沢諭吉が演説を行った「三田演説館」という建物ですね。何回か使う機会がありましたが、歴史を感じることができます。

卒業生
私は図書館が好きでした。

大学生
三田キャンパスの南館のベランダがとても落ち着く場所で気に入っています。

 

 

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