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大学生
水上貴裕さん

先生
北川雄光先生

卒業生
松田諭さん
 

CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス



●プロフィール




北川先生の研究内容について教えてください。


先生
私の専門は消化器がんの治療、その中でも食道がん・胃がんです。とくに食道がんの手術では操作範囲が広く、患者さんの体への負担がとても大きくなります。負担が少しでも軽くなるよう、小さな創で行う手術方法を研究してきました。これを専門的には「低侵襲(ていしんしゅう)治療」と呼びますが、この開発を主な研究テーマとしています。慶應義塾大学病院は多くの分野でリーダー的存在ですが、がんの低侵襲治療の開発についてもパイオニアです。
そして、近年進めているのが、「がんの集学的治療(手術だけでなく、術前術後の放射線療法や薬物療法を組み合わせた最適な治療法)」の開発です。これによって更なる低進襲治療を実現するために日々研究を重ねています。


近年、先生はがん転移の有無をリンパ節の状況で判断する先進医療を開発されました。
これも低侵襲治療に役立つのでしょうか?


先生
はい、役立つと考えています。
現在のがんの手術は、転移の可能性のある範囲を全て取り除く方法です。これはがんを根こそぎ取るには有効な方法です。ただ、実際に転移のある人とそうでない人をきちんと見分ける方法を開発することができれば、転移をおこしていない人には小さな手術で済むことになります。患者さんの負担が減るのです。

どのような手順で研究をされたのでしょうか?


先生
センチネルリンパ節というがんの転移しやすいリンパ節があり、ここを調べれば転移の有無がわかるのではないかという仮説をたて、臨床試験で検証を行いました。この時は日本全国の様々な施設と共同で、数年をかけて約400名の胃がん患者さんにご協力をいただきました。その結果、私たちの仮説がかなり正確であることがわかったのです。
現在は、このセンチネルリンパ節に転移が見られない患者さんについては、がんの手術を体への負担が少ない小さな手術で行い、その後の経過を見守るという次の試験に進もうとしています。このように患者さんに負担がかからないように、新しい治療を臨床で試験し、一つひとつ積み重ねていくのが我々の仕事です。
このような臨床研究の場合、まずしっかりとした倫理性の確認、つまり実施する試験や治療内容が患者さんに不利益を与えないかという確認を徹底して行います。このために小さな試験から行い、最終的には検証的な試験を積み重ねて診療ガイドラインに載るレベルにしていきます。
ガイドラインとは、患者さんの状況にあわせて最適な対処方法を示す指針です。ですから、このガイドラインをより良くしていくことで標準的な治療法が変わり、多くの患者さんへの診療レベルが向上し、日本だけでなく、世界中の医療に貢献できる可能性もあります。5年後のガイドラインを常に考えるという気持ちで、絶え間なく続く臨床試験を一歩一歩進めています。

続いて松田さんにお話を伺います。医師としてご活躍ですね。


卒業生
初期臨床研修(以下、初期研修)を終えて4年目、医師になって6年目です。外科医になって4年が経ちます。昨年度から慶應義塾大学大学病院に戻り、北川教授が診療部長をされている一般・消化器外科に勤務しています。また慶應の大学院生としても博士課程4年間の2年目に入っています。
つまり現在は医師として、また大学院生として並行して活動しています。



専門は何ですか?


卒業生
消化器領域全般ですが、とくに食道と胃という臓器が私の専門になります。この分野ではたくさんの疾患がありますが、特に外科という領域で考えますと、手術が必要になる患者さんの大半は何かしらのがんをお持ちなので、がんに対する医療がメインになります。
大学院では様々ながん種を勉強しており、自分の専門領域以外の、例えば呼吸器、血液等に関わるがん疾患も対象に、ローテーションしながら研修をしています。
大学院に進むか進まないかは各自の選択に任されていますが、その有無にかかわらず、医師として、臨床と並行して研究する時間は誰でも持っています。

臨床医としてのお仕事はどのような内容ですか?


卒業生
今は病棟で、おもに入院患者さんの診療にあたっています。入院された患者さんが、手術前の準備を行い、手術・術後治療を乗り切って無事に退院されるところまでをお手伝いする仕事です。
また、 手術前には、どのような手術が最適かを検討するといった段階があります。がんの進行具合、転移の有無等を画像検査などから判断し、その検査結果を元に、患者さん一人ひとりの手術において、いかに負担が小さく、最大限の効果を得ることができるか知恵を絞ります。
私が担当するのは消化器の手術なので、患者さんは一旦お食事を召し上がれなくなりますし、手術後の入院期間が長くなります。その後回復して退院されるまでの間に、トラブルが起きないように、起きてしまっても元通りに回復されるようにサポートします。

では続いて水上さんにお話を伺います。ご専門は何ですか?


大学生
私は医学部の最終学年である6年生です。松田さんの「胃・消化器」というような専門はまだありません。今は医療の基礎を幅広く学んでいる段階です。春から始まる2年間の初期研修を終えてから外科・内科・小児科など自分が専門としていく科を選択することになります。

サークル活動などはされていますか?


大学生
医学部の場合、他学部とは大学生活のスケジュールが大きく異なるので、医学部だけの体育会があり、これに9割近くの学生が参加します。私は空手をやっていました。

卒業生
私はアメリカンフットボール部に所属していました。体をぶつけ合うスポーツですから医師となった今はできませんが、健康な体、体力のある体を作り、維持していくのも、医師として大事な仕事だと考えています。特に外科医は手術等で体力が求められますので。



  

 

  

●インタビューに答えてくれた方々


 


先生
北川雄光先生  

慶應義塾大学医学部教授
私立慶應義塾高等学校出身。慶應義塾大学医学部卒業。87年、日野市立総合病院出向、88年、済生会神奈川県病院出向、救命救急センターに勤務した。89年、慶大医学部助手。93年から96年、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学留学。96年川崎市立川崎病院外科副医長、97年慶大医学部外科学助手、05年同専任講師、07年より一般・消化器外科教授。慶應義塾大学病院副病院長、外科診療部長としても活躍されている。

   


卒業生
松田諭さん

慶應義塾大学病院勤務
私立桐蔭学園高等学校理数科出身。慶應義塾大学医学部卒業。その後2年間、横浜市立市民病院にて初期臨床研修。10年より慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器)に入局、栃木県大田原赤十字病院、茨城県水戸赤十字病院を経て、12年に慶應義塾大学病院での勤務を開始。同時に慶應義塾大学大学院医学研究科 博士課程 医療科学系専攻に入学。がんプロフェッショナル養成コースに在籍している。

   


大学生
水上貴裕さん

慶應義塾大学医学部6年生(2013年度取材当時)。
北海道札幌北高等学校出身。2014年春からは国立国際医療研究センターにて初期臨床研修を開始予定。

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