●就職活動、仕事について
初期研修先はマッチングという方法が採用されていますね?
■卒業生
今の初期臨床研修先を選択する制度は全国共通で、研修を受ける学生側にとっては公平な制度であり、視野は広がりましたね。結果、従来のようにそのまま大学病院で初期臨床研修を受ける医師が減り、自由度は増えました。その分、人気のある医療機関に希望が集中するので医師の分布は偏りますし、地方の病院を選ぶ人が減るなど弊害もあります。
これは他学部における就職活動にあたりますね?
■卒業生
そうです。ただ就職先がないことは、まずないので安心していいと思います。
■大学生
医療レベルや研修内容だけでなく、住居や待遇など福利厚生も加味して選ぶ学生が多いです。
■卒業生
マッチングが始まって10年目くらいですが、慶應では基本的には内外で初期研修を終えた後、大学病院に戻ってくるケースが7〜8割くらいで大半を占めます。私も戻ってくることは決めていました。また、卒業大学は異なっても、初期臨床研修から慶應病院でおこない、そのまま慶應大学の医局に入局する人もいます。
大学病院以外の進路を選ばれる方は、その後どのようなキャリアになるのでしょうか。
■卒業生
大学病院以外の大きな病院に就職して、そのままキャリアを積んでいく人がいます。大学病院の医局に所属しない分、例えば外科領域では、同じ施設で集中的に手術のトレーニングをたくさん積むことができます。
あとは1学年に1人か2人という特殊な例ですが、初期臨床研修までを日本で終えて、アメリカで臨床トレーニングを始める人もいます。
■先生
初期研修の後にアメリカへ渡り、アメリカのレジデントシステムで研修をしている、つまりアメリカの外科医になるためのトレーニングに挑戦しているのです。同じ外科医でもアメリカと日本ではいろいろと違います。例えば、アメリカの方が競争は激しいですが、その分、生き残って一定の地位を得、手術症例数の多い病院でプログラム(部門)を率いるようになれば、収入の面でも格段に良い待遇を得ることができます。メジャーリーグと日本のプロ野球くらいの差があると思ってもらえればわかりやすいかな。日本の方が多くの人間がそこそこの待遇を得られますが、アメリカはやはりアメリカンドリームがあるということでしょうね。
アメリカで医師として移植の手術も経験し、慶應に戻ってきて頑張っている卒業生もいます。慶應には国際的に活躍するチャンスが多いので、戻ってくる学生も多いのだと考えています。
■大学生
医系技官という進路もありますよね。医師免許を持った国家公務員のことで、医学の専門知識を生かし、医療の現場の意見を汲み取ることを期待されているようです。国家一種の試験を通ったキャリア官僚と一緒に、国の制度を変える方面で活躍されています。
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