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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 

●5年後に向けて




将来の夢を教えてください。


先生
将来の夢ねぇ。いいねぇ、君たちは将来があって。


先生 卒業生 大学生


卒業生
一つは、大学院を卒業後、手術のトレーニングに戻り、外科医として自立するための手術手技を身につけていたいと思います。
そして、二つ目として、5年後には、留学などを通して、日本以外の国で外科医としてのトレーニングを積むことができていれば、その後につながると思っています。日本の外科技術は、世界的にみても優れていると思いますが、国ごとにがんの種類や患者さんの背景が異なり、他の専門領域と比較して、地域による術式の差が大きいのが現状だと感じています。将来的には、日本の外科手術を今以上に世界に発信することができるような仕事をしたいと思っています。そのためには、よりよい手術治療を作っていかなければなりません。「再発しないがん手術」、「術後合併症のない手術」の確立を目指して、手術治療・研究を進めていきたいと思います。
そして、その成果が将来自分が担当する患者さんに還元されたら、非常に大きな喜びです。

先生
私が現役の医師として活躍できるのはあと10年前後だと考えています。ですから今まで私が築いてきたものの集大成をしたいですね。具体的には先ほどお話しした、患者さんの体の負担が軽く、患者さんの症状にあわせた治療効果のあるがん治療の方法を、日本の標準治療として確立する仕事を形にしたいと思います。
またもう一つとして、この外科医という厳しいし競争も激しいけれどやりがいもある仕事を、もっと報われる職業にしたいと考えています。今日本では「専門医制度」という新しい、大きな動きがあります。これをできるだけ良い形、つまり若者が「厳しい世界だけれど、よしやるぞ!」と飛び込めるような、そういう仕組みを作りたい。これが夢ですね。

大学生
私はこれから研修医として経験を積み、この数年で様々な選択肢の中から自分の進むべき道、専門分野を選択することになります。ですから、初めの数年間は今後の人生において非常に重要なものとなってきます。5年後には、悔いのない選択をしていたいと思います。

卒業生
今の夢は何? 移植?

大学生
はい、そうですね。
外科に興味があり、その中でも移植外科に興味があります。移植外科医として目の前の患者を救っていくのはもちろんですが、日本は特にドナーの臓器が不足していて移植を希望する中の一握りの患者しか移植を受けることができません。将来は人工的に臓器を作りそれを実際の患者に応用していく研究をして、より多くの患者が移植医療の恩恵を受けることができるようにしていきたいと思っています。

卒業生
大学病院に所属する若い医師にとっては、臨床と研究を両立して行うのが原則ですからね。もちろん、手術に注力するなどそのバランスを変える時期はありますし、研究だけに専念する時期も1年から2年間はあります。ただその先になると、日常診療・手術をしながら、夜間や週末、休診日に研究をする。そういう生活を送っている方が大勢いらっしゃいます。

両立はとても大変そうですが、なぜ皆さんがそうされるのでしょうか?


卒業生
若い時期にやるのはそういうプログラムが組まれているから、また博士号を取得するため、これが一番わかりやすい理由だと思います。
ただその後続けていく方というのは、それこそ水上君が将来そうなるかもしれませんが、やはり自分の行っている手術だけでは改善しない現実と向き合い、治療をさらに前に進めたいという想いをモチベーションにされているのだと思います。

 


●高校生へのアドバイス




もし高校1年生に戻れたら何をしたいですか?


大学生
強いて言うならば、もっと視野を広く持って、様々な経験をしたかったですね。決して悔いがあるわけではないのですが、最近の高校生が海外への短期留学を含めて多様な経験を積んでいて驚きました。彼らが海外留学などを経験できたのは、視野を広く持ち、選択肢に入れていたからです。その大切さは感じています。


卒業生
私の高校生活は寮生活、部活動と受験勉強でした。また高校1年生に戻れても同じことをすると思います。

先生
私は、別の種目にするかもしれないけれど、部活動を思いっきりやりたいですね。高校生のうちは部活動でも何でもよいので、自分の好きなことにエネルギーをこれでもかと注ぎ込む、そういう状態を経験して、身につけてほしいと思います。これができないと、どの分野に進んでも活躍できないですよ。
ですから高校生のうちはあまり先のことを心配せずに、目の前のやりたいことに情熱を注ぎ、没頭することだと思います。そういうパッションといいますか、スピリッツを持つことが大切なのです。例えば文化系の部活動なら、文化祭の数日のために命を懸けて準備をするでしょう? 文化祭がどんなに成功しても、受験にはあまり関係ないかもしれない。だけど、大学に入って医師として専門分野を極めようとする時には、その高校生当時のパッションやスピリッツが目覚めて、猛烈な勢いで成長する力になってくれるのです。

高校時代の勉強は大学に入ってからどう役に立ちますか?


先生
高校時代の勉強は、目標に向かって自分を仕上げていく、自分をマネジメントするスキルを身につけるのに役立つと思いますよ。

卒業生
おっしゃるとおりです。私も研究と臨床を両立するために、日々ToDoリストを作って進捗管理をしていますが、このスキルは、大学合格に向かってどの教科を何時間勉強するといった高校時代の経験が活かされています。

先生
あと、医学も自然科学分野に属しますから、研究では統計学等も使います。そういう基礎的な、大きなものの考え方には貢献をしてくれている気がしますね。

医学部を考えている高校生へアドバイスをお願いします。


先生
医学部か、それ以外の学部にするかは、大きな選択になります。というのは、医学部では、大学に入学した直後から、将来の医師という職業で役立つ知識や経験を積ませることに特化して、教育を行うからです。他の学部でも若干数専門教育に特化した学部はありますが、医学部は顕著です。
そして、これは強調しておきたいのですが、医師の良いところは、努力すれば必ず患者さんのため、また社会のためになるというところです。社会に出ると、信念を持って一所懸命に働いても、会社や上司の意向で不本意な仕事をせざるを得ない場合もあります。でも医師という世界では、自分がしっかりしていれば、例えば、過疎地で患者さん一人ひとりと向き合うのも、研究で世紀の大発見をするのも、等しく価値があることであり、この絶対的な価値観に支えられていて、絶対に裏切られることはない。医師とはそういう職業なのですよ。

卒業生
私が医師を志したきっかけもまさにそれでした。

大学生
医学部に合格するための受験勉強は大変ですが、どの教科もそこそこできる状態を目指すよりは、まずは1科目でよいので、軸となる科目を作ることをお勧めします。例えば、数学なら数学と決めて一所懸命に勉強する。こうして数学ができるようになると、勉強へのモチベーションも上がり、他の科目にも良い効果をもたらします。
あと、部活動ではタイムマネジメントの能力が鍛えられます。

先生
そうだよね。時間がない中、テスト勉強などをしていくのだから、短い時間でも集中して覚える力が身につくだろうし、部活を引退して時間ができれば今度は体力を生かして、その時間を目一杯受験勉強に振り向けられるようになるでしょう。

最後に、慶應義塾大学医学部の素晴らしいと思う点を教えてください。


大学生
先ほどもお話ししましたが、慶應の魅力は内部進学者と全国の出身者で織り成す医学部としての多様性と、それに加えて総合大学としての知の多様性にあると思います。

卒業生
ここには、これぞと決めた後のダッシュ力といいますか、スプリント力に長けた人が多いですね。これは慶應で鍛えられた学生が持つ素質なのかもしれません。

先生
慶應のキーワードは先導者、リーダーシップということなのです。大学の使命として、人材育成はもちろんですが、今ここにないものを見いだす発想力は非常に大切です。創設者の福澤先生がまさにそのスピリットで日本に新しい考え方を持ってこられたり、生み出したりされました。先導者たらんとすることは、慶應の生命線でもあるのです。

 

 

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