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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




神戸大学医学部保健学科を志望した理由を教えてください。


卒業生
具体的に進路を考えたのは高3の秋でした。理系の学部を志望していましたが、いわゆる“試験管を使って研究する”といった分野に進むのはちょっと違うかなと感じていました。漠然とですが、将来は人と接する仕事に就きたい気持ちがありましたから。そこでいろいろ調べ、リハビリの仕事があることを知り、こちらの保健学科を受けようと決めました。自宅がある京都からも通えることも選んだ理由です。

大学生
私も楠田さんと同じで、人とかかわる仕事をしたかったことが志望するきっかけでした。進路を決める高3の時に、学校の先生になるか、病院で働く仕事をするかで結構迷いましたが、担任の先生からのアドバイスもあり、作業療法を学ぶのは面白そうだなと思いました。医療分野で人とかかわる仕事だったら医師や看護師という選択肢もありましたが、私は血を見るのが苦手なのでそちらは無理でした(笑)。


卒業生
実は僕も血は苦手です(笑)。

先生
リハビリの分野は血を見なくてもいいですからね(笑)。そこは医師や看護師とは大きく異なるところです。

保健学科に入学する学生は理系の出身者が多いのですか?


先生
確かに高校で理系のクラスだった人は多いですけど、文系出身者が入学しても大丈夫です。作業療法学は理系・文系を問わず学べる分野ですから。

大学生
私のまわりにも文系から入ってきた友達はいます。ただ大学に入ってからは物理の授業があるので、そこで少し戸惑っていたようです。

先生
そうね、理科の科目は勉強しないといけないものね。

大学生
私は理系でしたが、高校で生物を取っていなかったので、大学入学後に少し困った経験がありました。

先生
高校の時に学んでいない科目を大学に入って必須科目で学ぶ際は、ちょっと大変かもしれません。

卒業生
そうですね。理系であっても文系であっても、高校で学ばなかった科目を受講することはどの大学に入ってもありうることですから、そこはがんばって勉強するしかないと思います。

こちらの学科では実習授業も多いのでしょうか?


先生
はい。実習授業は1年生からあります。学科内で行われる実習では、例えば、腕に麻痺がある患者さんや脊髄損傷でまったく足が動かない患者さんなどを想定し、そういった方々が片手でどのように調理すればよいのか、どういうふうに車イスを操作すればよいのかなどを、学生たちが体験しながら学んでいきます。
病院実習も1年生から経験しますが、最初の学年は「見学」、次の学年になると「観察」や「評価」、そして作業療法の治療を含めた「臨床実習」というように段階を経て学んでいきます。4年生の段階で2つの病院に計4カ月という長期実習を体験します。

大学生
調理動作も、掃除も、アイロンがけも、普段は自分で当たり前のようにやっていることですが、障がいを持ってしまうとすべてが難しい作業になってしまいます。そういったことを実習で身を持って体験することができました。

卒業生
作業療法士として実際に働き始めると、実習で学んだことが臨床の場にしっかりつながっていることを実感できます。実習以外では、座学でリハビリ職種に就く心構えなどを教わりましたが、今病院で患者さんと接していると思い起こすことがたくさんあります。

先生
「作業療法対人技術論」の授業ですね。

卒業生
はい。病院で実際に患者さんと向き合うと、相手の立場で物事を考えることの大切さを肌で感じますし、こういう時に授業で教わったことが生きてくるのだと感じます。

先生
「作業療法対人技術論」は作業療法学専攻の開講科目ですが、理学療法学専攻の学生たちも履修可能な40人規模の大きな授業です。その内容をわかりやすく言いますと「人間教育」です。医療人としてのマナーを身につけ、障がいのある患者さんたちがどういう気持ちでリハビリを受けているのか、相手の立場になって考えることを学びます。
この授業ではDVDを題材に学ぶこともあります。例えば、ベトナム戦争の負傷兵を描いた『7月4日に生まれて』という映画を鑑賞し、主人公がどのように自分の障がいを受容していくのか、その過程を見ながら学生たちが医療人としてどうとらえるかを考えます。

そのほかに印象に残っている授業はありますか?


大学生
最初に先生が少しお話しされた「IPW」の関連科目はとても面白い授業でした。医学科で医師、保健学科で看護師、検査技師、理学療法士、作業療法士、神戸薬科大学で薬剤師をめざす学生たちがチームを組みます。患者さんへの対応をイメージしながらみんなで意見を交わし、臨床の課題を検討していくという内容です。

先生
この「IPW教育」の主な目的は多職種の理解です。神戸大学がとくに力を入れている教育の一つで、1年生の段階から自分が学ぶ専門分野だけでなく、“多職種”を意識して“協働”することの大切さを勉強していきます。

大学生
授業の中で想定した患者さんに対し、看護師なら具体的にどういう考え方で接するのか、また医師ならどう考えるのか、一方で私たち作業療法士ならこう考える、というようなことをみんなで議論していきます。立場が変わるとさまざまな意見や視点の違いがあるのだとわかり、本当に勉強になりました。

先生
机上で患者さんについて考えた意見を交換し合うことはもちろん、実際にチームで病院に行ったりすることもありますので、この授業は学生たちにとってとてもよい刺激になると思います。

 

 

●就職活動、仕事について




卒業生はどういった分野で活躍されていますか?


卒業生
作業療法士として医療機関に就職する人がほとんどです。私の学部時代の同期は全員病院に就職しました。


大学生
私の同級生も全員病院に就職する予定です。

先生
病院以外であれば、大学院を修了して厚生労働省に勤めている卒業生がいますね。あとは起業された方もいらっしゃいます。

大学生
起業された方の授業を受けましたが、とても刺激的でした!

先生
4年生を対象にした「在宅援助論」という授業があり、起業された方を招いて話をしていただきましたが、それがすごく前向きでパワフルな講義だったんです。ご自身も作業療法士として、リハビリテーションの第一線で活躍されていますので、リアリティあふれるお話がとても印象的でした。授業の後、「私も起業したい」「あの先生みたいになりたい」という学生たちも何人かいました。

楠田さんは病院に就職された後に、大学院に進まれたのですね。


卒業生
はい。学部時代から大学院に進学したいという気持ちがありました。ただその時は、まだ研究したいテーマが思い浮かびませんでした。ですから一度作業療法士として就職し、臨床の現場を経験すれば自分が新たに追求したいことも見えてくるのではと思いました。大学院に進むのはそれからでも遅くないと思ったんです。

先生
うちの保健学研究科の大学院は社会人でも通えるのが特長です。これは私の研究室だけではなく保健学研究科自体がそういう方針を持っています。もちろん学部からそのままストレートに大学院に上がって「リサーチマインド」を強化する学生もいますし、楠田君のように臨床の場で研究したいテーマを見つけて、再び大学院に通われる方もいらっしゃいます。

卒業生
私が大学院で研究しているのは、高次脳機能障害の方の「家事動作」についてです。自らの臨床経験を通じて、障がいのある方はとくに家事になると結構複雑で難しく感じることが多いとわかりました。
以前、種村先生が私の職場に来てくださったことがあり、どのように接すればよいか迷っている患者さんへのケアを直接教えていただいたことも、大学院に進む後押しになりました。その時にリハビリの検査データの見方についても教わりましたが、自分では解釈できなかったことを別の視点でアドバイスしていただき、純粋に「先生はすごい!」と感心したんです。高次脳機能障害は種村先生の専門分野ですし、ぜひ先生のもとでもっと深く教わりたいと思い、進学を決めました。

先生
検査データの解釈は基本的には同じですが、やはり知識を持っていないと見えるものも見えてこないことがあります。だから楠田君も、これから社会に出ていく横山さんも、どんどん経験を積み、十分な知識を身につけていけば統合的な解釈ができるようになります。
とにかく経験が大事。さまざまな患者さんと接し、先輩や先生たちの意見にもちゃんと耳を傾けることで、自分で判断する際に必要となる知識も積み重なってきます。

作業療法士という職業の素晴らしさは何でしょう?


先生
楠田君も横山さんも高校時代に「人と接する仕事がしたい」という思いでこの分野に進みました。やはりそれがキーワードではないでしょうか。
リハビリで作業療法を行う時に患者さんと接する時間は、1回で40分くらいです。その間、患者さんの身体に触れ、時には世間話をし、また患者さんから相談を受けることもあります。患者さんとの距離が本当に近い仕事なんですね。ですから本当に「人が好き」という方であれば、患者さんとのコミュニケーションを通じて日々幸せが積み重なっていくわけです。そこが作業療法士という職業の一番の魅力だと思います。

 

 


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