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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 

●5年後に向けて




将来やりたいことや夢はありますか?


大学生
大学を卒業した後は作業療法士として病院に勤務しますが、そこで経験を積んだ後に訪問リハビリテーションの分野に関する仕事をしたいという気持ちがあります。病院は患者さんにとって治療する場所であっても生活する場所ではありませんから、「自宅に帰って生活する」ことを作業療法士として支援することができれば幸せですね。


卒業生
私は今働いている病院でとてもやりがいを持って仕事をしていますので、自分が携わっている作業療法を、もっと患者さんのために“よりよく”できないかということを追求していければと考えています。“よりよく”とは具体的にどういうことなのか、今の自分にはまだ明確に見えていませんが、大学院での研究を進めながら、患者さんの立場に立ってしっかり支援できる作業療法士になりたいです。

先生はいかがでしょうか?


先生
先ほどお話ししました認知症など、高次脳機能障害の研究はまだまだ途上の段階です。とくに社会的な行政措置は、諸外国に比べると不十分と言わざるをえません。ですから少しでも高次脳機能障害の方々の社会的支援が得られやすくなるように、自分自身の研究を含め、もっともっと努力をしたいと思っています。
認知症に関して言えば、やはり在宅で、どれだけ患者さんにとって意味のある生活ができるかということを研究し続けていきたいです。患者さんができるだけ自宅で幸せな生活を送れるような取り組みをさらに追求しなければなりません。

どのような課題がありますか?


先生
一つ言えるのは、日本の場合、制度に縛られすぎなんですね。多くの制度があるがために「これができない」「あれができない」というようなことになっているのが現状です。秩序の保持は、物事を円滑に行うことにつながります。しかし、それ以外のもの、その範疇にないものに対して、応用力や応用性を持って対応できないところがあります。

大学生
枠組みの中でしか対応できないということですか?

先生
はい。諸外国では日本のような枠組み、いわゆる制度といったものはあまりなく、患者さんが困っていることであればそれに対してどんどん支援をするという考え方が浸透しています。

 


●高校生へのアドバイス




神戸大学の医学部をめざす高校生にアドバイスをお願いします。


先生
できることならば、クリエイティビティを備えておいていただきたいです。創造性ですね。とくに作業療法は、患者さんの幅広い「作業活動」を支援するものですから、臨機応変に自らの創造性を働かせて対応することが求められます。
大学入学後も与えられた授業をただ聞くだけではなく、探究心や創造性を持って考えをめぐらせてもらいたいので、常日頃からそうした知的探究心や知的創造性を養ってもらいたいなと思います。お二人はいかがですか?

大学生
そう思います。


卒業生
私も先生と同じです。

先生
三者一致ですね(笑)。

大学生
確かに先生がおっしゃったように、受験勉強に関しても、他のことにしても、今振り返るともっと疑問を持って取り組めばよかったかなと感じます。どうしても与えられたことをやりこなすのに必死になってしまいますが、もっと「なぜ?」という気持ちを抱いて自分から知ろうとする姿勢を高校時代に育めていれば、また違った視点で大学生活を送れていたかもしれません。

卒業生
私は人と接する仕事に就きたいという希望があったので神戸大学の保健学科を選びましたが、もし同じ志望動機の高校生がいれば、そこでさらに仕事のことを調べておくのがいいと思います。私自身ギャップを感じたことはありませんでしたが、友達の中には「自分が思っていたこととは違う…」と言ってやめてしまった人もいますから。

先生
その気になれば自分で調べる手段はいくらでもありますよね。

卒業生
そうですね。例えば、病院によっては高校生の見学を受け入れてくれるところもあります。私が勤めている病院も見学することは可能です。さきほど先生がおっしゃった探究心を持って、自分でアクションを起こしてみるといいですね。
とくに医学部の保健学科で専門分野を学ぶのであれば、自分が将来就きたい仕事について興味を持って調べることは大切です。そうして納得して大学に入学すると、勉強する目標がより明確になるのではないでしょうか。

先生
まさに楠田君が話してくれた通りですね。病院で作業療法士がどういうような働きをしているかというのを見ておくのとそうでないのとでは、大学入学後の学ぶ意識も大きく変わってくるでしょう。

大学構内のお気に入りスポット
先生
医学部の保健学科がある名谷キャンパスの正門を入ると、車イスの方が利用するスロープがありますが、これを設置したときのエピソードをお話ししましょうか。

大学生
何か特別なことがあったんですか?

先生
日本の建築基準法では、スロープの勾配角度は最低で1/12(1mを上るのに要する距離が12m)という規定があります。実際、スロープを設けるとなるとそれなりの敷地面積が必要ですから、1/12の勾配を採用している施設も多いようです。しかし、名谷キャンパスのスロープはもっと緩やかな勾配の1/20で設計されています。北欧などの諸外国では、この1/20の勾配が標準です。

大学生
そうだったんですか。

先生
スロープを設置する話があった時、実はなかなか予算を取っていただけなかったんです。でもリハビリや臨床を専門に学ぶ保健学科のキャンパスですから、車イスの方がより利用しやすい1/20勾配のスロープは絶対に必要だと主張しました。もし予算が出なかったら私たちが自腹でお金を出そうという話にまでなり、その熱意も伝わって、無事に予算を取っていただけたんです(笑)。


大学生
このスロープは名谷キャンパスの自慢できる場所ですね。オープンキャンパスなどで足を運ぶ際にはぜひ見てほしいです。

 

 

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