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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




2013年度に新設された「総合数理学部」と各学科について教えてください。


先生
現段階で、日本の大学では本学にしかない「総合数理学部」は、高校生にとってはまだなじみの薄い学部名かもしれませんが、とても先端的な学びができます。
この学部での学びの中心は「数理科学」と「情報技術」です。「数理科学」の数理とは、数学を使って「理(ことわり)」を知ることを意味します。数学を中心に、物理学から経済学などの数学を使う様々な学問分野を必要に応じて使っていきます。
3学科を設置しており、「現象数理学科」では「数学を使いながら、様々な現象を理解する」ことを学びます。幅広い数学の知識を使って現象を知り、その成果を社会に役立てることを考えていきます。
「先端メディアサイエンス学科」は数学とIT技術や発想力を使って、アルゴリズム、ウエブコンテンツ、バーチャルリアリティなど新たな先端テクノロジーづくりを学ぶ学科です。
「ネットワークデザイン学科」では数学と工学を使い、データマイニングや再生可能エネルギーなど、社会がこれから直面していく新たな課題などを学んでいきます。
3学科に共通しているのは「数学」、「コンピュータ」で、これらは等しく学んでもらいます。

明治大学における「現象数理学科」と「理工学部数学科」との違いは何ですか?


先生
小野さんが卒業した数学科が、数学そのものを調べる学科であるのに対し、現象数理学科は数学を道具として使いながら、自然現象、生命現象、社会現象にいたるまでの多様な諸現象を解き明かそう、という学問です。
実は現象に対する数理的アプローチという取り組みは、金融工学などはありましたが、それ以外には専門家を育てる学部・学科がありませんでした。その意味で、これからの社会に必要とされる人材を育てていく学部であり学科です。現象数理学科で社会と数学の関わりを知ることで数学自体への興味が深まり、例えば大学院からは純粋数学を研究したいと考える学生さんも現れるのではないかと期待しています。

卒業生
そうですね。数学科では証明や微積分をはじめ、数学の世界を細かく高度に分析していきますが、現象数理学科では、数学を使いつつ、私の場合は専門の「錯視」という別の現象世界も同時に探求できます。数学が好きで、かつより幅広い世界も探求したいという人にとっては、現象数理学科はとても面白くて興味深い学科になると思います。

松元さんが「現象数理学科」を選んだ理由は何ですか?


大学生
数学が好きでしたので、数学科で純粋数学を学ぼうと考えていました。しかし総合数理学部が新設されると聞き、パンフレットを読んだところ、「数学を応用して現象を解明する」という部分にとても興味を持ちました。高校生の頃、「ゲーム理論」に興味を持ったのがきっかけで、数学で現象を解析するということを少し学びましたので、この学科は自分にピッタリだと感じました。


入学した印象を教えてください。


大学生
入学前は、現象数理ならではの高度な数学をいきなり学ぶのかなと、楽しみにしていた部分もあります。しかし、総合数理学部は文理融合型ということもあり、文系出身者を配慮してだと思いますが、1年次の数学は、線形代数や微分など、基礎固め的な内容です。数学好きな僕にとってはやや物足りないという印象でしたが、2年次以降で高度な数学を学ぶことになると思うので、楽しみにしています。

学部・学科の特徴的な授業やカリキュラムを教えてください。


先生
1年次よりゼミやプログラミングの授業があることが、まず大きな特徴だと思います。

卒業生
1年次からプログラミングというのは、総合数理学部らしさですね。私の場合は、3年次くらいで学びましたので、悔しいです(笑)。

大学生
はい、プログラミングはすごく力を入れてもらっています。高校時代、コンピュータ知識はほとんどない状態でしたので、とても勉強になりました。今ではプログラムで図形を描いたり、微分方程式を解いたりしています。1年次で一番力が伸びたのはプログラミングの知識ですね。

先生
私も「プログラミング演習」の授業を担当していますが、プログラミングの為にはプログラミング言語を学びますが、言語の勉強は早く始める方がよいのです。ですから、前期も後期も毎週月曜日に3時間ぐらいぶっ通しでプログラミングを学んでもらっています(笑)。
なぜ現象数理学科でもプログラミングかと言いますと、現象に関わる数学の方程式を解き現象を理解するには、シミュレーションがとても威力を発揮するのです。そのためプログラミングの知識が必要となるわけです。
「現象と数学」、「現象のモデリングとシミュレーション」、「画像処理とフーリエ変換」などなど、本学科ならではの授業がたくさんあります。

松元さんが印象に残った授業はありますか?


大学生
「線形代数」の授業です。担当の先生が「線形代数は数理生物学にどう生きるのか」を魚の成長を題材に話をしてくださいました。実は「線形代数」はあまり好きな分野ではなかったのですが、この授業を機に「線形代数をしっかり勉強して、数理生物学で生かそう」と、心を入れ替えました。

先生
これも本学部の特徴ですが、本学部では単に数学を教えるだけでなく、それが他の数理学分野でどう生きるのか、つまりいかに数学を道具として使うのかを、しっかりと教えられる教員が集まっています。ですから、同じ「線形代数」の授業であっても、他学科の授業とはかなり内容が異なると思います。
また、数理生物学の専門教員だけでなく、経済動向などの現象分析では、大手生命保険会社で部長職にも就いていた方が、金融工学のアクチュアリー専門家として教えています。ほかにも、学部長の砂田先生は幾何学の世界的に有名な権威ですし、解析学、統計学の専門家など、各分野で第一線の教員が指導します。
統計学の専門家は、実はあまり数学科にはいないので、このあたりも特徴になりますね。

研究施設など学びの環境で何か特徴はありますか?


先生
現象数理学科は、「化学実験室」を持っています。この実験室では、化学反応と数式がどうつながるのかを実験で確かめるといった授業を行います。そのために生物化学の専門教員も現象数理学科には配置しています。

大学生
化学実験は2年次からの履修ですので、楽しみにしています。

リケ女(理系女子)ブームなどとも言われていますが、男女比はどうですか?


大学生
半々というイメージがありますが…。

先生
いや、そこまではいないでしょうけど、理系学部の中では多い方だと思います。

一般受験科目は数学と英語の2科目ですが、何か理由がありますか?


先生
全学科において、数学と英語が基本となるため、この2教科に関して一定のレベルの学生をまず集めようというねらいがあります。数学は数VCまでが出題範囲です。
ただ、試験科目にはありませんが、物理、化学、生物等の理科も好きな学生に来てほしいですね。松元君が数学+生物学である数理生物学に関心を持っているように。
数学を主に道具として使いますので、理科的なプラスαの興味がないと新しいものは作れません。その意味で、数理科学においては数学プラスαのサイエンスへの好奇心が重要なのです。

英語教育にも力を入れているのですね?


先生
入学後、学生は必ずTOEICを受験しますし、3年生まで英語の必修科目がいろいろとあります。

大学生
スコアはまだ内緒なのですが(苦笑)、1年次ですでに2回TOEICを受けています。2年次では英語でのプレゼンテーションの授業もありますので、必死に勉強中です。 数学に関する英語の専門書はまだ読んでいませんが、IT系のネットワーク関連の英語資料を読むなど、専門的な英語の知識を学んでいます。

卒業生
専門性を高めるためには英語論文を多く読みますので、英語は必須科目ですね。英語が得意な人の方が、論文を読み込む時間も効率的ですので断然有利になります。
ちなみに理工学部数学科では、英語の必修授業は2年次まででしたので、総合数理学部は英語教育にもかなり力を入れていると思います。
私が現在作成している修士論文も英語で書いています。担当の先生にチェックをしてもらいながらですが。完成後は、マスマティクス・アーツという論文誌に投稿する予定です。

 

 

●就職活動、仕事について




小野さんの錯視作品がコンテストで最優秀賞とのことですが、作品作りで苦労するのはどういう点ですか?


卒業生
「フットステップ錯視」という手法は、格子やらせんなどを交錯させることで、本当は動いていないのに動いているようにを見せる現象です。難しいのは、「いかにインパクトのある錯視を生み出すか」という見せ方のアイデア部分ですね。私はアート表現としての見せ方を追求していたので、なるべくたくさんの錯視を発生させ、しかも、インパクトのある動きを作りだしたいと考えていましたので、「何か良い案はないか」と、アイデアを想起させるのに苦労しました。


錯視研究は社会的に役立つ部分もあるのですか?


卒業生
はい。数理的に錯視を解析すると、例えば「錯視量を増やす」などの調整が自在にできます。
例えば「錯視」は交通事故や渋滞の原因にもなっています。高速道路で自然渋滞が起こる原因の一つとして「上り道なのに下り道に見える」という錯視にドライバーが気づかないため、車のスピードが下がり渋滞になる現象が挙げられます。この「錯視量を減らす」ことでドライバーが道路の状況に合った運転ができるようになれば渋滞が緩和され、道路の安全が守られることにもなるのです。

小野さんの就職先はどういう方面ですか? 錯視と関わるお仕事ですか?


卒業生
システムエンジニアとして就職をします。ですから錯視の知識を使う機会は限られるでしょうね。私の知る範囲では、プログラム技術を生かしてシステムエンジニアとして就職する同期が多いです。

2016年3月に初めて総合数理学部から卒業生が出ますが、どういう分野、職種で活躍してほしいと思いますか?


先生
本学部で育成する人材は、学科によって専門性は違いますが、共通しているのは「問題解決に向けた考え方を学んだ学生」ということになると思います。ですから、分野を問わず、多方面に卒業生が出ていくと思います。メーカー、IT業界、金融、教師等、どの分野でも必要とされるでしょうし、そこで数理的な考え方を発揮し、活躍してほしいと思います。
これまで日本の企業社会においては、どちらかというとマネジメントは文系出身者で、理系出身者は会社の生産部門やパーツ的な位置づけになることが多いようにも感じられます。そこで理系からも、専門分野のスペシャリスト+問題解決力を有した人材を輩出してマネジメント分野でも活躍してもらいたいと考えています。 本学部出身者は、日本の企業社会にこれまでにない肩書きも作れる人材になれると思っています。さらに理想を言えば、「自分の専門を生かして社会に貢献できる会社を興せる理系人」も育成したいですね。

企業からの卒業生に対する期待度はいかがですか?


先生
企業の方々とお話をする機会があるのですが、本学部の卒業生に対する期待はすごく高いものがあります。数学を使ってプラスαの能力を発揮してくれるのではないかと。ですから多方面に就職していくことになると思いますね。

 

 


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