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CONTENTS

●プロフィール    ●武蔵大学での学びについて     ●三学部横断型ゼミについて
●三学部横断型ゼミの成果について    ●高校生へのメッセージ
 


●武蔵大学での学びについて




ゼミ教育は武蔵大学の特徴の1つですが、どのようなものなのでしょうか。


卒業生
高校の授業は受身ですよね。先生から知識を吸収する場です。大学でも講義という知識を得る形式の授業がありますが、自分に必要な講義は自分で選択しますし、レポートとして自分の考えを書く機会が増えるなど、高校時代より主体性が求められます。 これに対し、ゼミでは、自分の意見を伝えるだけでなく、先生を含めた他の方の意見を受け止め、理解しあう双方向のコミュニケーションを通じて、議論を深めることが求められます。


先生
学生の「自ら調べ自ら考える力」を伸ばしたいという目的で、少人数制のゼミを重視しています。武蔵大学のゼミは多くても15名程度という規模ですから、議論も活発に行われます。

大学生
少人数であることで先生方との距離もすごく近くなります。武蔵大学では全員、1年生の前期からゼミが始まります。入学直後は不安でしたが、レポートの書き方なども丁寧に教えていただいたので、安心して大学生活のスタートを切ることができました。

先生
ゼミが1年生から始まる大学は少ないですが、最初の段階で主体的に学びを深めるための基本的なスキルを身に付けることが肝心です。特に就職活動が3年生から始まってしまう現状を考えると、その時期までにある程度レベルの高い学問に触れ、自分の特性も見極める必要があります。となると、2年生や3年生からゼミが始まるのでは遅いのです。
そしてこの1年生からのゼミの経験があることで、武蔵大学の三学部横断型ゼミが成立しているのだと考えています。履修できる学年は、前期が3年生、後期が2〜3年生です。1年生からゼミで各学部の学ぶスキルを身につけてから、三学部横断型ゼミを履修することになります。

先生は三学部横断型ゼミを考案されたメンバーの一人と伺っています。どのような点を工夫されているゼミなのですか。


先生
「ゼミの武蔵」の特徴を活かして、もう一歩進んだゼミが出来ないかと考え、作り上げたのが三学部横断型ゼミです。試行段階を含めると2007年の後期から取り組みを始めているプロジェクトです。
私は元々金融機関に勤めていまして、仕事をする上でさまざまな専門分野をもった方々がきちんとコミュニケーションを取れる、つまり双方の意見を受け止め、理解できるという基本の大切さを感じていました。
しかし、現在一般的な大学ではこのコミュニケーション力を高める教育が十分に行われているとは言えません。そこで、武蔵大学の三学部横断型ゼミでは、経済・人文・社会の3学部の合同ゼミを行う機会を設けています。各学部から全く異なる意見が出てくる状況を乗り越えて意見をまとめるという経験を通じてコミュニケーション力が高まっていくように設計しています。

 

 

●三学部横断型ゼミについて




三学部横断型ゼミについて詳しく教えていただけますか。


卒業生
三学部横断型ゼミでは学生の視点から企業のCSR報告書※を作成しています。
このゼミ活動は、大きく二段階に分かれているのですが、まず最初は同じ学部同士の4、5名で学部別の課題に取り組み、中間発表をします。その後、三学部が合流し、15名程度のチームでディスカッションを重ねながら最終発表に向けてCSR報告書を作成していきます。

※企業の社会貢献活動や環境負荷への取り組みをはじめとする企業の社会的責任(CSR)について取りまとめた報告書



先生
最初の段階をPhase1と呼びますが、経済学部は財務諸表など、製品、サービス、そして人材の育成方針などを通して、経営的視点で企業を見ますし、人文学部ですと、担当する企業のロゴや社史などから企業風土を徹底的に読み解きます。

大学生
社会学部はCSRの概念そのものや、世間での扱われ方などを調べました。このときも意見をまとめるのが大変だったのですが、中間発表後のPhase2で他学部と新しいチームを作ったときは、本当に・・・


先生
大変だったでしょう(笑)

大学生
はい。もう大変でした(笑)。Phase1で、チームを組んだ同じ学部の4〜5人との間に強い絆が出来ているので、他学部の学生とは同じチーム、といってもすごく壁を感じましたね。最初はかなり話しづらかったです。

卒業生
すごくわかりますよ。
同じ大学で学んできたのに、学部が違うとこんなにも人のカラーって違うのかと驚きました。最初はどう接したらいいのか分からずに、戸惑いました。

先生
学生は大変だと思いますが、最初から3つの学部が1つのチームの場合よりも、チームメイクやコミュニケーションの能力は鍛えられます。一度同じ学部のチーム内での結束を強くしてから三学部合同という、ちょっと意地悪な設計なんですけど、あえてそうしているのです。

卒業生
先生の計算どおりだと思います(笑)。

先生
チームワークが確立されるまで2〜3週間は絶対かかりますから、ある意味ではそこは時間のロスなんです。ただ、ロスなんですけども学習効果は非常に強くなる部分です。私も今期を含めて10回近く授業を担当しましたが、「今回はダメじゃないか」と、教員の方がドキドキしますけどね。

お二人はどのようにチームワークを築いていきましたか。


大学生
経済学部だからこういう人だろうとか、人文学部だからこういう考えを持ってるに違いない、というように最初は偏見を持っていたのですが、実際に話をしてみると、違う学部でも似た発想を持っている部分が徐々に見えてきます。話し合いを重ねていく中で、少しずつ打ち解けていけたと感じています。

卒業生
私は2つ大きなポイントがあったと思います。
まず、私がPhase2の最初でなぜ戸惑ったかというと、自分の意見を否定されたら怖いとか、自分と異なる意見が出てくるのが怖くて身構えてしまったからです。これは白濱さんがおっしゃるように、話し合いを重ねて少しずつでも自分の意見を出し、また聞いていくことで打ち解けていきました。
もう1つはそのチームの中で各々が自分の役割を見つけることです。それぞれの学部の垣根を越えて、この人は他のメンバーに話題を振ることができる人だとか、この人はあまり自分の考えを言わないけど場を盛り上げるムードメーカーだとか、各自がチーム内での自分の役割、居場所を見つけることで良いチームワークが築けたのだと思います。

先生
ここはすごく重要な部分です。
高校までは問題に対する正解は大抵1つだと思います。でも実社会で求められるのは、むしろ組織やチームの中で自分はどういう貢献が出来るかを考え、行動に移すことなのであり、そこでの正解の形はさまざまです。例えば、あるプロジェクトではリーダーを務め、またあるときは補佐的な役割に回るなど、メンバーや目的によっても自分の役割は変わりますから、そこをきちんと意識して行動できるようになることは非常に重要だと考えています。

卒業生
いま先生のお話を伺って改めて実感していますが、社会に出て働くと、上司、先輩、後輩、社外の方、色々な方と関わり、コミュニケーションをとって仕事を進めていきます。ですから、三学部横断型ゼミで求められた、自分が何をすべきか、どういう役割を担うべきか、仕事の分担はどうするかなど、周りのことも考えつつ、自分の役割・仕事をきちんと分かるようになることはとても大切なことです。

大学生
似たようなことを留学中に感じました。アメリカの大学は少人数でディスカッション形式の授業を行うことが多いのですが、違うバックグラウンドを持った異文化圏の方々とコミュニケーションを成立させていくときに、三学部横断型ゼミで学部の壁を乗り越えた経験が活きました。それまでだったら恐れて尻込みする場面でも、積極的に行動できましたね。

CSR報告書を作る期間は、この打ち解ける期間を含めて1ヶ月半ですか。


先生
はい。三学部横断型ゼミの期間は全体で約3ヶ月、大学では半期の授業にあたりますが、CSR報告書を三学部横断チームでまとめるのはこのうち1ヶ月半くらいです。厳しいでしょう?(笑)。


卒業生
必死過ぎてあまり意識していませんでしたが、1ヶ月半でやったんですね(笑)。改めて短いなと思いました。

大学生
CSR報告書を完成させるだけでなく、発表用資料を作成する時間も含まれていますので、授業時間外にも自主的に集まって作業をするなど工夫しました。
また、CSR報告書の作成にあたり、ルールとして、過去の先輩の作品は見られません。ですので、最初は何をどう作ったらいいのかも分からず、他の企業のCSR報告書を研究したのですが、企業の担当者の方からは「学生らしいCSR報告書を作ってほしい」と言われました。そこで、まず、“学生らしさ”とは何かについて議論をし、各学部の専門性を活かした報告書にしようと決めました。

卒業生
時間がない中で話し合いを重ねていきますので、分業をすることや、作業経過や結果の共有をすることを大切にしていました。

先生
情報と理解の共有を大切にすることは、一見面倒に思えますが、実はその方が結果的に作業がはかどるのです。これは社会に出てからも通用する実践的な知識になりますが、短期間で密度の濃い作業を経験することで、そのことを自然と学べる学生が多いです。

最終発表会まで気が抜けませんね。


卒業生
最終発表会当日はすごく緊張します。私たちのチームは最後まで時間に追われていたので、発表会の直前には、大学の近くに一人暮らしをしているメンバーの家に泊まりこんで何とかまとめました。今まで作ってきたものをきちんと伝えたい、発表したいという思いが強かったので頑張れました。

大学生
私ももちろん緊張はしたのですが、時間をかけてメンバーと全力で取り組んでいましたので、最終発表会当日は自信の方が大きかったです。

卒業生
それはすごいですね。

先生
企業の方々にとっても新鮮な刺激を受ける機会のようです。発表した内容を喜んでいただき、担当のチームが企業に呼ばれ、社員の方々を前に発表したこともありました。

 

 


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