●大学生活について
原田さんはゼミでどういったことを研究されているのですか?
■大学生
私は「コミュニケーションにおける“間(ま)”の役割」について研究しています。卒業論文もこのテーマで書きますので、少しずつ準備を始めているところです。
■卒業生
面白そうなテーマですね。“間”を研究しようと思ったきっかけは何だったんですか?
■大学生
高校時代は放送部に入っていて、練習の時に顧問の先生から「話す時は“間”の取り方がとても大事だよ」とよく言われました。確かに部活の大会で上位に入る生徒たちは“間”の取り方がとても上手でした。そういうことがきっかけで、大学では言語表現やコミュニケーションについて学ぼうと思いました。そして入学後、さまざまな授業を受けるうちにあらためて“間”について研究したいと思ったんです。
“間”を学ぶ授業があるのですか?
■先生
「言語表現法応用T」という授業を担当していますが、ここでは“間”についてはもちろん、話す人と聞く人を取り持つコミュニケーションのあり方を実習形式で考察します。例えば、学生がみんなの前に出て、「二人で立って話す」「二人で座って話す」「三人で立って話す」「三人で座って話す」など、さまざまなシチュエーションで話をし、それらの対話で何が自然だったのか、逆に何が不自然だったのか、そういったことをみんなで意見し合います。
漫才みたいな形式の授業ですね。
■先生
実はその通りで、この授業のヒントは漫才にあります。以前から私は「漫才の表現法」について研究していました。漫才というと“笑い”に注目しがちですが、その表現法の核となる部分は決して“笑い”だけではないと感じていたんです。
漫才はしゃべる者同士が常に顔も身体も向かい合ったまま話をしているわけではありません。もし観客に姿勢を向けないまましゃべっていては、舞台の二人は閉ざされた世界で会話を行っていることになります。漫才はあくまで“聞いてもらう”ことが前提ですから、お互いが視線を合わせながらもなるべく姿勢は客席に向け、自分たちの話を間接的に観客に伝えようとします。こういったことを分析していくうちに、漫才はコミュニケーションを学ぶ上での題材になると考えました。
■大学生
先生の授業では他にもいろいろな実習を体験させていただきましたが、一人でスピーチを行った「言語コミュニケーション特殊講義」が私の中でとても印象に残っています。先生から突然「じゃあ原田さん、みんなの前でスピーチしてください」と言われて、驚きました(笑)。
■先生
確かスタンフォード大学の卒業式で行われたスティーブ・ジョブズの有名なスピーチをデモンストレーションしてもらいましたね。最初に実際の映像を見せ、名スピーチと呼ばれるものは何が違うのかを分析してもらいました。そこで「言語的にはどうか?」「非言語的にはどうか?」「構成的にはどうか?」を考察したあと、原田さんをはじめ何名かの学生にスピーチを実演してもらいました。
■大学生
スピーチの際には、もちろん聞いている人に伝わるように“間”なども意識して話します。でも、いざみんなの前に立つと緊張してしまって、具体的に頭に描いていたことが全部飛んでしまいました(笑)。独りよがりのスピーチでは聞く人の心に響きませんし、相手に伝える話し方を実践するのは本当に難しいと感じました。
久保田さんは印象に残っている授業などはありますか?
■卒業生
私は韓国の大学で行った日本語教育の研修授業が印象に残っています。いわゆるオノマトペと呼ばれる擬態語や擬音語を題材にしましたが、それが本当に難しくて…。
■先生
例えば、日本語では足早に歩く様子を「スタスタ歩く」「ササッと歩く」などの擬態語を使って表現します。確かにそれらを説明するのは難しいですね(笑)。
■卒業生
日本語のオノマトペは他の言語と比べて多様です。英語であれば擬態語を含めて一つの単語、例えば“hurry”だけで「スタスタ歩く」という意味も含めて伝えることができますが、同じ足早に歩く様子でも日本語だと本当にたくさんの表現があり、韓国の学生から「これはどのような時に使う言葉ですか?」と質問をされた時はどう説明しようかと悩みました。
■先生
日本語を教える立場として、相手が理解できるように説明しないといけませんからね。私も過去に勤めていた大学で留学生に日本語を教えていましたから、久保田さんが経験された大変さはとてもよくわかります。
■大学生
研修にはどれくらいの期間行かれていたんですか?
■卒業生
1週間ほどです。
■先生
立命館大学が提携している海外の大学は他にもたくさんありますから、学生が望めば久保田さんのように積極的に行動し、自分の学びを深めることができます。そういったことを実現できるのが大学で学ぶ良さであり、楽しさでもあります。
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