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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




原田さんはゼミでどういったことを研究されているのですか?


大学生
私は「コミュニケーションにおける“間(ま)”の役割」について研究しています。卒業論文もこのテーマで書きますので、少しずつ準備を始めているところです。


卒業生
面白そうなテーマですね。“間”を研究しようと思ったきっかけは何だったんですか?

大学生
高校時代は放送部に入っていて、練習の時に顧問の先生から「話す時は“間”の取り方がとても大事だよ」とよく言われました。確かに部活の大会で上位に入る生徒たちは“間”の取り方がとても上手でした。そういうことがきっかけで、大学では言語表現やコミュニケーションについて学ぼうと思いました。そして入学後、さまざまな授業を受けるうちにあらためて“間”について研究したいと思ったんです。

“間”を学ぶ授業があるのですか?


先生
「言語表現法応用T」という授業を担当していますが、ここでは“間”についてはもちろん、話す人と聞く人を取り持つコミュニケーションのあり方を実習形式で考察します。例えば、学生がみんなの前に出て、「二人で立って話す」「二人で座って話す」「三人で立って話す」「三人で座って話す」など、さまざまなシチュエーションで話をし、それらの対話で何が自然だったのか、逆に何が不自然だったのか、そういったことをみんなで意見し合います。

漫才みたいな形式の授業ですね。


先生
実はその通りで、この授業のヒントは漫才にあります。以前から私は「漫才の表現法」について研究していました。漫才というと“笑い”に注目しがちですが、その表現法の核となる部分は決して“笑い”だけではないと感じていたんです。
漫才はしゃべる者同士が常に顔も身体も向かい合ったまま話をしているわけではありません。もし観客に姿勢を向けないまましゃべっていては、舞台の二人は閉ざされた世界で会話を行っていることになります。漫才はあくまで“聞いてもらう”ことが前提ですから、お互いが視線を合わせながらもなるべく姿勢は客席に向け、自分たちの話を間接的に観客に伝えようとします。こういったことを分析していくうちに、漫才はコミュニケーションを学ぶ上での題材になると考えました。

大学生
先生の授業では他にもいろいろな実習を体験させていただきましたが、一人でスピーチを行った「言語コミュニケーション特殊講義」が私の中でとても印象に残っています。先生から突然「じゃあ原田さん、みんなの前でスピーチしてください」と言われて、驚きました(笑)。

先生
確かスタンフォード大学の卒業式で行われたスティーブ・ジョブズの有名なスピーチをデモンストレーションしてもらいましたね。最初に実際の映像を見せ、名スピーチと呼ばれるものは何が違うのかを分析してもらいました。そこで「言語的にはどうか?」「非言語的にはどうか?」「構成的にはどうか?」を考察したあと、原田さんをはじめ何名かの学生にスピーチを実演してもらいました。



大学生
スピーチの際には、もちろん聞いている人に伝わるように“間”なども意識して話します。でも、いざみんなの前に立つと緊張してしまって、具体的に頭に描いていたことが全部飛んでしまいました(笑)。独りよがりのスピーチでは聞く人の心に響きませんし、相手に伝える話し方を実践するのは本当に難しいと感じました。

久保田さんは印象に残っている授業などはありますか?


卒業生
私は韓国の大学で行った日本語教育の研修授業が印象に残っています。いわゆるオノマトペと呼ばれる擬態語や擬音語を題材にしましたが、それが本当に難しくて…。

先生
例えば、日本語では足早に歩く様子を「スタスタ歩く」「ササッと歩く」などの擬態語を使って表現します。確かにそれらを説明するのは難しいですね(笑)。

卒業生
日本語のオノマトペは他の言語と比べて多様です。英語であれば擬態語を含めて一つの単語、例えば“hurry”だけで「スタスタ歩く」という意味も含めて伝えることができますが、同じ足早に歩く様子でも日本語だと本当にたくさんの表現があり、韓国の学生から「これはどのような時に使う言葉ですか?」と質問をされた時はどう説明しようかと悩みました。

先生
日本語を教える立場として、相手が理解できるように説明しないといけませんからね。私も過去に勤めていた大学で留学生に日本語を教えていましたから、久保田さんが経験された大変さはとてもよくわかります。

大学生
研修にはどれくらいの期間行かれていたんですか?


卒業生
1週間ほどです。

先生
立命館大学が提携している海外の大学は他にもたくさんありますから、学生が望めば久保田さんのように積極的に行動し、自分の学びを深めることができます。そういったことを実現できるのが大学で学ぶ良さであり、楽しさでもあります。

 

 

●就職活動、仕事について




久保田さんは現在どういったお仕事をされていますか?


卒業生
石灰加工製品を製造している地元の工業系メーカーに就職し、営業事務を担当しています。

先生
学部で学んだことは何か活かせていますか?

卒業生
製品の受発注など、お客様からの電話に対応する業務が多いのですが、お客様が何を伝えようとしているかを伺うことも、その要望に的確に受け答えすることも、お互いのコミュニケーションがあって成立することです。ですから学部時代に学んだことは大いに役立っていますし、今後もしっかりと活かしていきたいと思います。
他には社内で使用する業務マニュアルなども作成しています。卒業制作の時に教わったPDC(Plan・Do・Check)を意識するように心掛けています。


こちらの専攻を卒業された方は、他にどういった分野で活躍されていますか?


卒業生
私の同期生は地方のテレビ局にアナウンサーとして就職しました。

先生
言語コミュニケーション専攻には元アナウンサーの先生がいらっしゃいますから、“話すプロ”のもとで学んだことは放送の現場でしっかり活かせているのでしょうね。

卒業生
実は私もその先生の授業を受けていました。ニュースを読む音声授業はとても楽しかったですよ。明るいニュースは笑声(えごえ)で読み、スポーツだとスピード感を出して読むなど、内容によって声や読み方を変えることを体験しながら“相手に伝わるアナウンス”とはどういうものかを考察しました。

先生
他の職業で言いますと、私のゼミ生で鍼灸師を目指している学生がいます。実家の鍼灸院を継ぐことになりますので、いわゆる一般的な就職活動を行うというわけではありませんが、彼女が取り組み始めている卒論のテーマが今後就こうとしている職種をしっかり意識しているものなので思わず感心しました。

どういった研究テーマに取り組もうとされているのですか?


先生
「傾聴」についてです。私たちの学問は話すことを中心に学ぶと思われるところもありますが、実は「相手の話を聞く」ことも言語コミュニケーションにおいてとても大切な要素の一つです。

大学生
そう思います。一方的に話すだけではコミュニケーションは成り立たないですから。

先生
鍼灸師を目指している彼女の場合、通院される患者さんの話を聞く時にどういう聞き方をすれば相手がリラックスしながらしゃべれるのか、また、どういったタイミングで相槌を打てばより円滑な会話ができるのか、そういったことを具体的に調査し、卒業論文にまとめようとしています。

原田さんは就職活動を始められているのですか?


大学生
はい。既に会社訪問を始めていますが、面接はまだまだこれからです。現在希望しているのは金融機関の仕事で、私も久保田さんのように地元に戻って就職することができればと考えています。

先生
面接ではどういったことをアピールしようと思っていますか?

大学生
言語コミュニケーションの学問を通じて自分が学んだことを積極的にアピールしていきたいです。相手に伝わる話し方などを専門的に勉強してきましたので、金融機関でお客様と接する際にはそうした学びを活かせると思っていますし、それを実践することでお客様との距離も近くなるのではないかと思います。

先生
コミュニケーションのスキルは、仕事をする上でも、対人関係を築く上でも必ず必要となります。久保田さんも大学で学び得たことを活かしながら仕事をされていますし、今原田さんが言ったことも就職先で実践できれば会社にしっかり貢献できるでしょう。コミュニケーションを学ぶということは、それくらい広がりのあることだと言えますね。

 

 


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