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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




立命館大学スポーツ健康科学部を志望した理由を教えてください。


大学生
高校の3年間、部活でボート競技を行っていました。全国大会にも出場しましたが、優勝には至らずにとても悔しい思いをしました。そこで、「どのようなトレーニングを積めば優勝できるのか?」ということに関心を持ったんです。立命館大学スポーツ健康科学部を選んだ理由は新設学部ということもあり、何か面白い研究ができそうだという期待感を持ったからです。


先生
大学でもボート部に入っていましたよね。学部で学んだことはトレーニングに活かせましたか?

大学生
はい。高校での部活動は、顧問の先生から与えられたトレーニングメニューを、特に何も考えることなくこなすだけというスタイルで行っていました。しかし大学に入学し、授業を通してボートの競技特性をしっかりと学んだことで、毎日行う練習メニューに対して意義をもって取り組めるようになり、また自主練習を行う際も、トレーニング内容を考えやすくなりました。

先生
私の高校時代は水野さんよりもっと前ですので、当時はマンガに出てくる千本ノックのような“しんどい”だけのトレーニングが効果的だと言われていました。しかし今のトレーニングは合理性を追求していますので、活躍するアスリートの裏ではたくさんの医科学的視点によるスポーツ科学のアプローチが存在しています。

大学生
大学でボート部に入ったのは、学部で学んだことを実際に自分で取り入れるとどうなるのかという視点があったからです。栄養学の授業も受けましたので、食生活の改善などもパフォーマンスの向上につながることがわかり、とても役立ちました。

伊地智さんが大学院に進学しようと思ったきっかけは?


卒業生
大学ではアスリートの競技力向上について学んでいて、卒業論文を書くために簡単な実験を行いました。その時に自分が携わっているスポーツ科学の学問をもっと深く追究したいと感じ、大学院への進学を決めました。ホームページで各大学院を調べたところ、トレーニング科学を研究されている後藤先生の存在を知り、直感的に「この研究室は面白そうだ!」と感じたんです。

先生
うちに来た当初は英語で相当苦労していましたよね(笑)。

卒業生
はい、本当に大変でした(笑)。大学院では多くの論文を読む必要がありますが、僕の場合、まず英語というハードルを越えなければならなかったので…。

先生
スポーツ健康科学の分野で発表される最新の研究成果は、今や英語によるものが当たり前になっています。ですから、まず英語を理解できなければ最新の情報にたどり着くことすらできません。

学部の授業でも「英語」を重視されているのでしょうか?


大学生
1・2年生では「英語P」という授業があり、そこで英語力を鍛えることができます。

先生
これは文法的なことを学ぶものではなく、英語によるプレゼンテーションを実践する授業です。グループ単位で自分たちの興味のあるテーマについてパワーポイントを使ってまとめ、必ず全員が英語でプレゼンテーションを行います。非常にレベルの高い授業です。

卒業生
僕はこの授業を受けていませんが、学部生時代に英語のプレゼンテーション能力を鍛えられるのはとてもうらやましく感じました。

先生
国内のスポーツ系学部で言うと、おそらくこうした授業を行っているところは非常に少ないのではないでしょうか。立命館大学の他学部でも英語による“情報発信型”の授業を取り入れているところは限られています。学会などで他大学の先生から本学部の学生をお褒めいただくことがありますが、これは学生たちが授業を通してプレゼンテーション能力を培った証だと言えます。

伊地智さんは研究成果を英語で発表する機会はありましたか?


卒業生
はい。大学院では無酸素運動下でのトレーニング効果を研究し、その成果をアメリカやスペインの国際学会でプレゼンテーションさせていただきました。

大学生
すごいですね。

先生
あれほど英語で苦労していたのに、本当によくがんばりましたよ。

卒業生
皆さんの支えがあったからこそ実行できたんです(笑)。

発表された内容を具体的に教えていただけますか?


卒業生
無酸素運動下でのトレーニング効果について、僕は“二部練”で検証しました。二部練とは体育系の部活などでよく行われる1日に2回行う練習のことです。この効果を証明する実験は既に世界中で行われていましたが、膨大な数の論文を読んでいくうちにそのほとんどが有酸素運動による実証だとわかりました。そこで、「無酸素運動下で二部練をやればどうなるのか?」という思いに至り、自らの研究テーマにしました。その成果を国際学会の場でプレゼンテーションしたというわけです。

先生
学部や大学院で研究する面白さは、“まだ誰もやっていない”ことに気づき、“新しいことを追求していく”ところにあります。これが研究の醍醐味と言えるでしょう。高校の学問は、既に明らかになっていることを学び、教科書に書かれている知識を吸収するのが基本ですから、大学の研究とは学びのアプローチが大きく異なります。

卒業生
今先生が言われた通りで、僕の場合は英語で苦労しながらもハードルを越えていくにつれ、例えば1つの論文を読んでいてもそこから得られる情報量がどんどん増えていくのがわかりました。そうなると情報と情報がつながって次の段階に進める喜びも味わえ、さらに自分が得た新しい知見をもとに専門的な内容も理解できるようになります。そこが研究の面白さです。

 

 

●就職活動、仕事について




卒業生の進路についてはいかがでしょうか?


先生
水野さんと同じ4年生が本学部の1期生にあたり、今後様々な分野で大いに活躍することになります。

大学生
みんな幅広い分野に進みます。私の同期はフィットネスクラブでインストラクターとして働く予定ですし、スポーツ系以外の仕事では旅行会社や銀行に就職が決まった友人もいます。

先生
インストラクターで言いますと、本学部で推奨している資格の一つである「健康運動指導士」を取得し、病院と連携するフィットネスクラブに就職する者もいます。入院や通院される方を対象に、理学療法士と連携してリハビリに必要な運動を指導するのが主な仕事の内容です。一般の方を対象にした運動プログラムより、もう少し深い医科学的な知識が必要になりますから、学部で学んだことはもちろん、資格取得に向けて身につけたスキルを活かして活躍できます。

伊地智さんと水野さんの今後の進路は?


卒業生
僕は大学院修了後、内定をいただいた大手生命保険会社に就職する予定です。正直に言いますと、引き続き大学院の博士課程に進みたい気持ちもありましたが、もうこれ以上親のすねをかじることはできなかったので就職を決めました。


大学生
私は大学院に進む予定です。3年生から後藤先生のもとでトレーニング科学を研究してきましたが、もっと深く研究したいという思いが強くなり、進学を選びました。

先生
水野さんは大学院進学をあきらめた時期もあったんですよね?

大学生
はい。学部時代からずっと大学院に進みたい気持ちはありましたが、一時期は就職を考えていました。実際、化粧品メーカーから内定をいただいたのですが、どうしてもトレーニング科学を研究したい気持ちをあきらめきれなかったので、改めて家族に相談して大学院進学を決めました。そういった経緯もありますので、とにかく修士課程の2年間はしっかり研究に取り組みたいです。

高校の時になりたかった職業はありますか?


大学生
高校の頃は、とくにこの仕事に就きたいという希望はなかったです。とにかく部活が忙しかったので、そこまで考える余裕はありませんでした。

卒業生
僕は体育の教師になりたかったです。大学時代もその希望を持って勉強していましたし、教員免許も取得しましたが、実際に教育実習に行った時に自分の中でちょっとギャップを感じました。自分がやりたかった理想と違っていたというか…。

先生
なるほど、それは非常によくわかる(笑)。私も学生時代は教師を目指していましたから。

大学生
先生も体育の教師になりたかったのですか?

先生
私は日本史が好きだったので社会の教師を志していました。ただ体育系の部活をずっとやっていたのでトレーニング方法に興味を持ち、途中で保健体育の教師になろうと思い大学の教育学部に進みました。「教える」ということで言えば、今の大学の仕事は結果的にあまりブレていませんが、着地点が少し想定外になったということでしょう。

スポーツ健康科学が果たす社会的な役割は何でしょうか?


先生
いくつかありますが、高校生にわかりやすい例で言いますと、2020年に東京オリンピックが開催されますよね。あと6年ですが、この期間に日本の競技者をいかにして強くするかは一つの国家戦略になっていくと思います。そこでアスリートはどのようなトレーニングを取り入れ、どのようなコンディションで競技に臨むべきか、私たちも研究によってサポートすることができます。

卒業生
すごくやり甲斐のあることだと思います。

先生
その通りです。そして私たちの研究は、選手の強化を支えることはもちろんですが、その対極にある一般の方の健康増進にもつながっています。肥満や糖尿病、高血圧を防ぐための運動処方を、アスリートが行う合理的なトレーニング方法から導くこともできますし、一般の方だけではなくて病院で入院されている方の治療に役立つ運動の方法、あるいは、これから超高齢化社会がやってきますが、高齢者の方が寝たきりになるのを防ぐようにするにはどのようなトレーニング方法が効果的かを追究することもできます。そういう意味ではスポーツ健康科学の分野が果たす社会的な役割は、今後大きなウエイトを占めることになるでしょう。

 

 


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