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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




成城大学経済学部には経済学科と経営学科がありますが、学びの大きな違いはどんな点ですか?


先生
どちらも経済の動きを分析するという点で共通する部分が多く存在します。両者の違いについて強いて言えば、経営学は社長や従業員の立場で、個々の会社をどのように動かしていくのかに着目します。それ自体はとても重要なことですが、特定の企業だけを見ていては、日本や世界全体の経済動向はわかりません。これに対して経済学は、社会全体を広く見て、企業・政府・消費者という構造を踏まえつつ、そこに広がる世界の動きに着目していきます。そのかわり、経済学では個々の企業の個性や内部構造について、経営学ほど深くは追究しません。学生は、企業の構造を詳細に学びたいか、経済の構造を詳細に学びたいかによって選択しています。

皆さんが「経済学科」を受験した理由は何ですか?


大学生
高校時代、将来の目標や大学で学びたい学部について、なかなか明確にできませんでした。というのも、数学がとても好きだったので、私は理系だと思っていましたが、物理や化学にはどうしても興味が持てなかったのです。
そこで進路に関して先生に相談したところ、「経済学科なら得意科目の数学と英語が生かせるからよいのではないか」と勧められ、経済学科を志望しました。

卒業生
高校のクラスメートには、どちらかというと経営学科が人気でした。私も将来的には、自分で事業をやってみたいという夢がありますが、そのためにもまず経済全体を学んでおきたいと考え、経済学科を選びました。

経済学部では、専門性を深めるためのゼミナールが2年次から必修として始まり、庄司先生は「開発経済学ゼミ」をご担当されています。
東日本大震災以降、開発経済学ゼミへの関心が高まったとお感じになりますか?


先生
開発経済学は本来、「貧困国の経済システム」を考察する学問なので、震災が起こったことで直接的に開発経済学への関心が高まった、とは言えませんね。
ただ3.11以降に、私がゼミテーマを「途上国の貧困削減と東日本大震災の復興」という形で学生に提示したので、「東日本大震災の復興に関心があるので、ぜひ先生のゼミに参加したい」と、共感してくれる学生はかなり増えました。



ゼミの特徴を教えてください。


先生
私が指導に力を入れているのは、まず、学生の「文章力」を向上させることです。最近の学生の多くは文章力で悩んでいます。そこで、私のゼミではグループ論文や学術書の要約を書かせることで、文章執筆の訓練をしています。こういった経験が、4年次の卒業論文や就職活動での自己PRを書く際の下地作りとなるのです。
また、書く力だけでなく「話す力・プレゼンテーション能力」も社会人になってからとても重要です。そのため、どのように話せば相手に的確に要点が伝わるのか、という点を考えさせながら、発表させています。
文章力やプレゼンテーション力を鍛えるための題材として、昨年は学生と一緒に福島県の復興状況の視察にも行きました。また、NPOやNGOの団体職員の方を外部講師として招く「特別講義」なども積極的に行い、途上国や東北の被災地で起こっている問題を学生たちにリアルに感じてもらうようにしています。

本来の「開発経済学」研究では、実際に途上国に行かれるのですか?


先生
授業として学生と一緒には行けませんが、私個人の研究では、さまざまな国で現地調査をし、データを集めて分析するという作業をします。
これまで主に、津波の被害を受けたインドや、サイクロンの被害を受けたバングラデシュに行きました。

卒業生
先ほど先生がおっしゃったゼミの特別講義で、バングラデシュのストリートチルドレンに関することを学び、とても関心を持ちました。そこで、3年次にバングラデシュの現状を知るため、別大学の団体が主催したスタディツアーに参加しました。やはり現地に行くと、本や資料からは見えてこない多くのことが実感できますね。

お二人はなぜ庄司先生のゼミで「開発経済学」を学ぼうと思ったのですか?


大学生
私は先生がまさに今おっしゃった「震災復興」というテーマに強い関心を持ったからです。さらに説明会で先生から、「募金活動だけでは本当の復興はできない」というお話を聞いた際に、「それはなぜなのだろう?」と疑問が沸き、その答えを見つけたくて先生のゼミに入りました。

卒業生
僕は、開発経済学というフィールドにおいて、「どういう人たちが実際に貧困国の援助に関わっているのか」に関心を持ちました。というのも、多くの人が自分たちの経済的成長や利益追求に一生懸命になっている現代において、他者・他国の経済支援のために働くというのはすごいことだなと。
ですので、開発経済学の実際の現場では、どういう人たちがどのように貧困国の経済をサポートしているのか、本当に援助ができているのか、そのあたりの真相を学んでみたいと思ったのです。

先生はなぜ、開発経済学を専門分野にされたのですか?


先生
嵐田君のコメントの後に言うのもなんですが(笑)、私は純粋に、人の役に立つ仕事がしたかったからという理由で開発経済学を選びました。高校生の時に、将来の安定のためだけに進路を決めるよりも、何か社会貢献につながるような職業に就きたいと思ったのです。
高校の頃は、途上国の貧困問題や環境問題に関心を持っていたので、将来の職業としては国連職員に憧れました。そこで、大学では経済学の中でも貿易分野を学びましたが、その過程で開発経済学をやってみたいと思うようになり、大学院では開発経済学の勉強を始めました。

お二人が開発経済学を学んでみた感想、先生のゼミの感想は何かありますか?


大学生
開発経済学は、ただ貧困国における経済メカニズムを学ぶだけの学問ではなく、その国の慣習や政治・歴史背景なども大きく関わってきますので、いろいろなことが学べると感じています。また、開発経済学は、比較的身近な経済を調べていくため、自分が何を学んでいて、どう役に立つのかが理解しやすい学問分野だと思います。
また、これまでさまざまな経済・社会問題について勉強したことで、メディアで震災復興の記事を目にした時に、問題の原因を自分で考える癖がつきました。例えば、雇用がないという報道に対しては、求人があるのに求職者が選り好みをしているのではないか、前職とかけ離れている求人しかないのではないかなどと、自分なりに考えるようになりました。


卒業生
貧困国の現状など、これまで深く学んだことのないことばかりでしたので、新鮮で、新しい視野を持つことができ、とても印象に残っています。
また、先生が若くて年代も近いので、親近感を感じていました。

嵐田さんは、ゼミでの学びが仕事に役立っていますか?


卒業生
開発経済学の具体的な学びが仕事に直接役立っているということではありませんが、開発経済学を通して学んだことは、「人と人とのつながりや関わりはやはり大切だ」、ということです。そのことは今の店舗運営にも大きく関わっていると思います。

お二人が好きだった授業や役立ったカリキュラムなどを教えてください。


大学生
私は「経済数学」という授業がすごく楽しかったです。この授業では、例えば消費税率を上げた時に消費者の生活はどう変わるのか、プラス効果なのかマイナス効果なのかなどを、数学を使いながら分析します。
経済学部の授業では、高校時代に聞いていたよりも数学を使う科目が少なく、使うとしても数Tくらいです。でも、この授業ではもう少し高度なレベルの数学を使うので、もともと理系志望で数学好きな私にとっては、とてもやりがいのある授業でした。

先生
湯浅さんが今話してくれたように、経済学では数学を使う科目もあります。例えば、経済政策の効果を予測するためには、数学的な経済理論を使うことがありますし、さまざまな経済データを解析する際も若干の数学的思考が必要になります。
ですが、実は経済学部には数学を使わない科目も非常に多くありますので、数学が苦手な学生でも楽しんで学ぶことができます。

卒業生
僕は庄司先生の「開発経済学I、II」が一番面白かったですね。
あと、就活に役立ったという意味では、「全学共通教育カリキュラム」の中の「キャリアデザイン科目」というカリキュラムです。1年次から4年次までそれぞれプログラムがあり、社会に出て働くということについて、多角的に学べるのでとても良かったですね。

経済学では数学を使うというお話がありましたが、英語力に関してはいかがですか?


先生
開発経済学に関して言いますと、英語力は必要になります。というのも、途上国に関するデータや文献には英語での情報が多くあります。そうした情報をインターネットで参照して分析するという作業を、ゼミでもよく行います。

成城大学経済学部の特徴的なカリキュラム等について教えてください。


先生
成城大学は、これまで以上に就職活動支援に力を入れています。その結果、卒業生の就職内定率は理系国公立以上の高さですし、昨年は全国で25大学だけが選ばれる優秀事例の一つとして、文科省から高い評価を受けました。
また成城大学では、多くの授業が1クラス30名くらいの少人数制です。そのおかげで先生と学生の距離が近いというのが成城大学の良さではないでしょうか。質問などを積極的にしてくれれば学生の顔と名前を覚えていきますし、学びたい人にとってはより細かい指導も受けられます。それに授業がわからなくて困っている学生を発見し、教員から早めにアプローチができるのも、少人数制ならではです。
このほかにも、経済学の幅広い分野に対して専門性を持った教授陣が揃っているという点が特徴的だと思います。先ほど湯浅さんが話してくれたように数学の専門性を持った先生もいますが、経済の歴史分析に専門性を持つ先生や、私のように開発経済の専門もいます。ほかにも近年需要が高まっている、データ分析や医療介護といったトピックを専門にする先生など、経済学の多くのフィールドが学べるのが本学の特徴の一つです。
しかも、各教員の研究水準も評価されていて、文科省が出資する研究費の採択率では、全国の私立大学で1位になりました。

 

 

●就職活動、仕事について




現在勤務している会社を志望した理由は何ですか?


卒業生
就職先としては飲食業界にはあまり関心はなく、むしろメーカーを希望していました。しかし、在学中にインターンシップ制度を使ってマクドナルドで就業体験をした際に、人材教育にとても力を入れている部分を魅力的に感じ、就職先として選びました。


インターンシップ制度を活用する際にも、企業側からの審査があるのですよね?


卒業生
はい、あります。実は先ほどお話した、バングラデシュのスタディツアーに参加する以前は、企業にインターンシップを申し込んでも不合格になることが多かったのです。そこで考えました。「何か学びの実績をもっと作らないとダメなのかな」と。
ちょうどその頃にバングラデシュのスタディツアーのことを知り、参加を決めました。そしてバングラデシュで「BOPの現状」を学ぶ体験をしたところ、インターンシップにも合格するようになりました。つまり、「大学ではこんなことを学んでいます」と強くアピールできるものがないと、企業側にとっても学生の魅力が感じられないのか、インターンシップに応募してもなかなか採用されませんね。

先生
今、嵐田君が話したBOPというのは「ベース・オブ・ザ・ピラミッド」の略で、世界の人口の中でも「最も所得が低い層」を意味します。私の開発経済学の講義でもBOPに関して教えています。
日本を含めた先進国の各企業は、もはや先進国のビジネスマーケットでは大きな成長が期待できないため、このBOP層をターゲットにしたビジネス、いわゆる「BOPビジネス」を盛んに行っています。

卒業生
就活中の企業との面接で、「学生時代に学んだことは?」と聞かれた際にも、「バングラデシュに視察にも行き、BOPビジネスについて学びました」と答えてアピールしていました。

同期入社の方々は、どのような系統の学部出身者が多いですか?


卒業生
僕と同じように経済学部出身者は多い気がしますね。しかも、別の大学で開発経済学を専門にしていたという同期も4名ほどいました。また、理系学部出身者もいますし、会社的には学部を問わず、幅広く採用しているのではないでしょうか。

理系学部の方もいらっしゃるのですね。


卒業生
理系出身者は大学院卒が多いですね。店舗業務においては文系・理系、専門性はほとんど関係ありませんが、店舗研修を終えた後の本社業務では、ネットワークシステムを使った財務分析業務など、それぞれの専門性を生かした仕事を担当していくことになります。

仕事のやりがいはどのようなところにありますか?


卒業生
人材教育に関して興味を持ち入社したので、店舗運営スタッフの教育に携われる点が、今は大きなやりがいですね。また、お店の運営に関してアイデアを考えたりするのも楽しいです。

経済学科の同期の卒業生はどのような業界・職種等に就職されましたか?


卒業生
僕の周囲では、広告業界や銀行・金融関係、音楽業界に進んだ学生もいました。航空会社のキャビンアテンダントになった学生もいますし、多様性に富んでいましたね。

先生のゼミに所属される学生の就職先には何か傾向のようなものはありますか?


先生
まだ新しいゼミで、卒業生は2代輩出しただけなので傾向と言えるものはまだありませんが、嵐田君が言ったように、金融や航空会社などさまざまな方面に進んでいます。また、米国の大学院に進学が決まった学生や、他大学の大学院で経営学修士(MBA)へ進む学生などもいます。
「開発経済学」の専門知識は、途上国に進出している企業の多くで生かすことができます。たとえば、大手メーカーや商社といった就職先が考えられます。そのほか、狭き門になりますが、独立行政法人国際協力機構(JICA)、外務省、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)といった政府系機関や、開発コンサルタント、NGO、国連職員などがあります。将来的にはそうした方面にも人材を輩出できるようになれれば理想的ですね。

湯浅さんは3年次ですので就職活動中ですね。どういう業界・職種を希望されていますか?


大学生
まだ決定ではありませんが、教育業界に絞って就活をしています。教育業界の中でも、関心があるのが進学塾の講師職です。そのきっかけは、大学に入って講師のアルバイトを始めたことでした。1年の時から始め、中学1・2年生と高校2年生を担当し、今は英語だけですが、以前は数学も教えていました。
もともと、人に何かを教えることが好きだったのかもしれませんが、講師のアルバイトを始めたら楽しくてしかたなくて、「一生続けたい」と思っています。就活中の今でも、ほぼ毎日、講師のアルバイトを入れています(笑)。

塾講師業務のどういうところが楽しいですか?


大学生
始めたばかりの頃は緊張してうまく授業が展開できず、生徒に居眠りされてしまったことがあり、とてもショックでした(笑)。
その後、自分なりに授業の進め方を工夫していくうちに、生徒からも信頼されるようになり、生徒がいろいろな話を打ち明けてくれたり、「勉強が好きになった」と言ってくれるようになりました。生徒とコミュニケーションが取れるようになり、彼らの意識が変わる瞬間がわかってからは、私も楽しくなってきました。

同期の方々はどういう方面への就職を志望されていますか?


大学生
私の周りでは、銀行や証券会社、保険会社など金融系を志望している学生が多いです。特に「会計学研究会」のメンバーは、先輩も含めてほぼ全員というくらい、男性も女性も金融系に進んでいますね。

 

 


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