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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




玉川大学教育学部の概要について教えてください。


先生
本学教育学部は、3〜18歳までを対象とした教育者を養成する「教育学科」と、0〜5歳までの未就学児を主たる対象にした「乳幼児発達学科」の2学科で構成されています。本学部では1・2年次にクラス制を導入し、学科間の連携も重視している点が特徴です。また、「教育学科」と「乳幼児発達学科」の2つの学科生を合わせてクラス編成を行うことで、学びや情報を共有できるようにしています。クラスには担任も付き、ガイダンスの授業などを通して、教師としての専門力を高めるとともに協調性などの人間形成にも力を入れています。今年からIB教員資格も取得できるようになりました。

お二人が教師を目指した理由と、玉川大学教育学部教育学科を選んだ理由は何でしょうか?


卒業生
僕は6人兄弟の次男で、弟や妹の面倒を見ているうちに学校の先生になりたいなと思うようになりました。玉川大学を選んだ理由は、オープンキャンパスに来て見てまず緑の多い環境に惹かれ、さらに教員育成に向けたカリキュラム構成も素晴らしいと思ったからです。

大学生
高1の頃は看護師を目指そうかなと思っていました。しかし高2になって、当時の高校の先生に憧れを抱くようになりました。そして、高3の頃に小学校の同窓会に参加して、担任の先生ともお会いし、そこでいろいろな話を聞くことで、教師を目指すことに決めました。私は指定校推薦での入学でしたが、高3の担任の先生からも「玉川大学の教育学部はいい」と薦められ、オープンキャンパスにも参加した上で入学を決めました。一番の決め手は、幼小中高すべての教員免許が取得できるということでした。


入学後の印象はいかがですか?


卒業生
僕はまず、授業について行くのが大変でしたね(苦笑)。1年次の授業は教育学関連が多くなるわけですが、高校時代にまったく下地ができていない分野ばかりですので、最初はとにかく講義の内容を理解するのが難しかったです。レポート作成などの課題も出ますので、友達に不明点を聞きながら、少しずつ理解を深めていきました。わかり始めると教育学の勉強が楽しくなるのですが、それまでは少々大変でした。

大学生
勉強は大変なのですが、玉川大学では2年次までクラス制があり、担任の先生がいらっしゃいます。これが高校の延長線みたいで、馴染みやすかったですね。

先生
2年次には野外研修という形で合宿研修も行い親交を深めます。

3年次からはゼミが必修なのですね?


先生
はい。3年次からは必修科目のゼミの先生が担任代わりになり、知識面においての専門性を深めていきます。
ゼミは現在、教科教育や様々な教育理論を中心に27ほどあり、学生が関心に合わせて選びます。教育学科の学生が幼児教育ゼミを履修することも可能で、乳幼児発達学科の学生が私の教育思想ゼミを履修してもいいわけです。

先生の「教育思想ゼミ」ではどのようなことを学ぶのですか?


卒業生
「教師とは何か」ということを学びました。歴代の多くの教育者たちが、その時代ごとに様々な教育を実践してきました。なぜ、その人たちはそういう教育を実践してきたのかを学び、それを基に現代の教育では何をすべきなのかを考えました。

先生
そうですね。歴代の教育者の中でも、教育実践に大きな影響を与えた先達の姿を学んでもらうゼミです。学生たちもいずれ現場に出るわけですから、単に理論を学ぶだけでなく、過去の思想を現場でどのように生かしていくのかをつかんでもらえるように指導しています。

学部・学科の特徴的なカリキュラムや授業を教えてください。


先生
本学では、早い段階から現場を体験してもらうため、1年次の春学期には「教育プラクティム(参観実習)」を行います。小学校、幼稚園などに行きまして、朝の職員会議から放課後まで、先生の1日の活動を参観するという内容です。この実習は、自分が小中高のどの教員になるかを選ぶ際の参考にもなるでしょう。
また秋学期には「インターンシップ(教育インターン)」というプログラムが始まります。これは玉川学園を含む提携校である、保育所、幼稚園、小学校、中学校などで週1日の教育活動を行うものです。3年次では、教育実習に向けた準備として、「教育実習事前指導」「模擬授業」などがあります。

卒業生
参観先で熱心に指導されている先生の様子を見て、僕もそんな小学校の先生になりたいという思いが強まりました。

大学生
2年次で受講した「玉川アドベンチャープログラム(tap)」も特徴的な授業だと思います。

先生
tapは、本学内にある「心の教育実践センター」という研究所が開発した教育プログラムで、教育学部では授業科目の一つにもなっています。アドベンチャー教育の哲学・手法を取り入れ、本学の全人教育と統合させた体験学習プログラムですね。

卒業生
僕はクラスメイトと1泊2日で出かけて、コミュニケーションや協調性を学びました。

インターンシップにも参加されましたか?


大学生
私はインターシップではなく、ボランティアという形で妹が通っている小学校に自分でお願いに行き、参加しました。期間は半年間で、4年生の学級に入らせていただき、担任の先生のそばで授業の進め方を学んだり、子どもたちと関わりました。1日の流れなどを学ぶことができました。入学時は、小中高のどの先生になるか決められませんでしたが、このボランティア体験によって、小学校教員を目指そうと決めました。

卒業生
僕の場合は、先ほどお話しました千葉県の「教職たまごプロジェクト」への参加がこれにあたりますね。

先生
本学には単位換算される「インターンシップ」以外にも、井上さんが話したように、時間を調整して自由に取り組む「ボランティア」として多くの学生が活動しています。インターンシップでは、学生によって幼稚園と小学校、あるいは小学校と中学校、同じ小学校に4年次まで通ったりと、それぞれの関心に応じて自由にデザインして活動し、自己適性も確認できるようになっています。
また学内の学生支援機関である「教師教育リサーチセンター」が、課外実習やボランティア紹介など様々な情報提供を行っていますので、学生たちはこのセンターをうまく活用してほしいですね。

「教師教育リサーチセンター」について詳しく教えてください。


卒業生
このセンターには元教員や元教育委員会関係者だった方々がおり、学校で使われている教材を使った「模擬授業」なども経験することができます。リサーチセンターの先生と学生に生徒役になってもらい、「この発問はもっとこうすると児童たちが答えやすい」など、改善点を指摘してもらいます。希望をすれば、何回でも模擬授業を行えますので、教育実習にも自信を持って臨むことができるようになります。ちなみに僕は何十回もやりましたね。学生を全面的にバックアップしてくれますので、とてもありがたい存在だと思います。

先生
模擬授業は、各教員の授業においても実施しており、私の場合はより小学校の現場に近い設定を想定して行います。例えば、様々な理由で特別な支援を必要とする子どもの役を設けるなど、よりリアルな学級を再現して行っていますので、実際の業務でも役に立つと卒業生から好評です。

他に、いまの教員の仕事に特に役立っていると思える授業・カリキュラムはありますか?


卒業生
教育学部では先生になるための授業やカリキュラムが用意され、そのすべてを教員の仕事に活かすことができますが、玉川大学の場合、他にも学校行事が様々にあり、その経験が将来の教員業務にとても役立つと思います。
例えば、1年次にはベートーヴェンの第九を1年生全員がドイツ語で覚えてみんなで歌う恒例行事があります。2年次のtapもそうですが、全員で一丸となって物事を進めていくという経験を多く積むことができます。小学校のクラスにおいても、「みんなで目標達成をしてみよう」という指導はとても重要なものになります。

先生
本学は「全人教育」に基づいていますので、専門性もさることながら、協調性やコミュニケーション力といった、人としての力を育てる行事には力を入れているのです。伝統である「第九」は、やはり「全人教育」のスタートラインとして、とても重要な行事ですね。 教育学部主催の行事としては、学部での学びの成果を一般公開する「教育学部展」を行っています。また「研修行事」として、1〜3年生は能、落語や歌舞伎鑑賞に行きます。これは本物に触れる教育を体験する目的です。


大学生
この研修ではじめて歌舞伎を観に行き、イヤフォンで解説を聞きながら、興味深く鑑賞させてもらいました。

 

 

●就職活動、仕事について




永野さんは入学後、教師以外の道はまったく考えませんでしたか?


卒業生
はい。高校時代にいくつかの職業は考えましたが、大学に入って以降は、小学校教師という目標はまったく変わりませんでした。

同期の方々の就職先は?


卒業生
約8割は教員の道に進み、2割ほどは企業へ就職していますね。

大学生
私は東京都の小学校教員になる予定です。同期ですが、私の知人は全員教員の道に進みます。

先生
私のゼミ生の場合は特にかも知れませんが、ほぼ全員が教員になります。私は学生に、志望するエリアだけでなく、複数の都道府県の採用試験を受験するように勧めます。例えばあるゼミ生には、札幌市、神奈川県、神戸市の採用試験を受けるようアドバイスしました。たとえ1次ではすべてに受かっても、2次に合格できるとは限りません。多くの学生は自分の地元を志望するのですが、いろいろなエリアで試験を受けることで、所期の目的となる教師への道を開くように指導しています。

教職に就くためには「教員採用試験」をクリアしなければなりませんが、試験支援体制はどのようになっていますか?


先生
採用試験対策支援はまず、先ほど話しました「教師教育リサーチセンター」が1年次よりガイダンスを行い、模擬試験や対策講座などを通じて学生を支えています。また、各教員もそれぞれの立場から、全面的にバックアップをしています。学生にとっては、3年次が最も採用試験対策に時間を取られるのかなと思いますね。

卒業生
そうですね。僕の場合も、3年次に一番時間を割きました。

大学生
私は先ほど話した「東京教師養成塾」対策が事実上の採用試験対策でもあり、山口先生に対策面で多くのご協力をいただきました。

先生
私は自分が大学受験や就職などで浪人経験があり、学生たちに同じ経験をしてほしくないという強い想いがあります。ですから、ゼミ生には所属が決まった段階から、採用試験に向けた勉強スケジュールを配布して、早い時期から勉強を進めるように指導しています。

教員以外の道というと、どのような方面に進まれる学生がいますか?


先生
学部で言いますと、塾関係などの教育産業やスポーツのインストラクターなど、教育や学習支援関係に進む学生が多いようです。また、企業での人事教育に携わる学生もいます。少数派ですが金融関係や製造業、百貨店などに勤める学生もいます。

卒業生
企業への就職を考えた学生たちはそれぞれ苦労をしていたと思います。中には、4年次の教育実習を捨てるかといった究極の選択を考えていた学生もいました。

永野さんは小学校教師になって2年目とのことですが、やりがいはどんなところにありますか?


卒業生
自分が教えたことに対して、児童から「先生、これができるようになったよ」「やってみたら簡単だった」などとリアクションがあった際には、教えた甲斐があったなと思います。 大変な部分としては、事務作業が多いというところです。授業や授業の準備以外に、教育委員会などから依頼される事務的な作業が多く、時間を取られてしまうため、授業の準備との両立が大変です。こうしたことは学部時代の実習やボランティア活動では見えていなかったですね。


児童からの評判はいかがですか?


卒業生
1年目、2年目ともに5年生を担当しましたので、2年目はある程度教え方にも工夫ができるようになったと思います。ただ、子どもたちにアンケートを取ったら、「先生は女の子にだけ優しいからずるい」と書かれてしまったことがありました(笑)。子どもたちは先生の行動に敏感なのだなと思いましたね。自分では平等に教えているつもりなのですが、ふとしたときにそんな印象を持たれてしまうこともあるのだなと、反省しています。

自分の授業が正しく行えているかどうか、その評価はどのようにわかるのですか?


卒業生
他の先生が授業の進行をチェックするという評価方式もありますが、テスト成績が一番の目安になります。クラス全体の平均点が上がっている教科は、教え方もうまくいっているという証拠になります。逆に平均点が下がっている教科は、教え方を改善させる必要があるわけです。
いまのクラスで言いますと、算数と理科は平均点が上がっています。僕自身が理系であり、自分が好きな教科は、教え方に熱が入りそれが伝わるのか、やはり平均点も良くなるようですね。自分が苦手な国語はやはり平均点もあまり上がっていませんね(苦笑)。

先生
国語を教えるのは難しいよね。

時には児童とはげしくぶつかり合うこともありますか?


卒業生
はい。一人なかなかやんちゃな児童がいて、僕にいろいろとちょっかいを出してきます。僕の方は穏やかに「そういうことはしちゃダメだよ」と教えるのですが、その生徒はどこまでやったら僕が怒るのかという境目を探していたようです。そしてその子が授業中にも僕に向かって騒ぎ出したので、その時初めて、みんなに迷惑がかかるだろうと、それまでになく強く注意をしました。そこでその児童は安心したのか、その後は落ち着くようになりました。

いじめ問題に関しては、何か特別な取り組みをされるのですか?


卒業生
毎月の職員会議で、いじめ問題をテーマにした会議が開かれます。各担任が把握しているいじめの状況ですとか、いじめがあった際にどう対処するか、などの話し合いが行われています。また児童へはアンケートを取ることで、いじめの実態があるのかどうか把握するよう努力しています。アンケートの書き方においても工夫が必要で、全児童が鉛筆を動かしているという状況が必要なので、記入することが無い人は、「この文章を写しなさい」といった書かせ方をすることで、いじめを告発あるいは受けているいじめのことを書けるような環境を作っています。

先生
永野君が実践しているように、どこまで児童に寄り添ったケアができるかという姿勢はとても大切だと思います。もし単に「はい、アンケートに記入して」では、長く書いていれば、「あ、あいつは何かチクっている」といじめっ子に感づかれてしまいますので、全員が「いじめはありません、知りません」と書き、教員も「はい、いじめはありませんね」で終わってしまうでしょうね。

大学生
私がボランティアや実習で体験した限りでは、4年生クラスでやや荒れた雰囲気があり、一番注意が必要な学年だと感じました。5、6年生になると落ち着き始めるようです。

 

 


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