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大学生
馬ノ段月果さん

先生
石谷治先生

卒業生
裏田光平さん
 

CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス



●プロフィール




先生のご研究内容を教えてください。


先生
太陽エネルギーを化学エネルギーに変換するしくみを研究しています。平たくいえば、石油を人工的に作ろうとしています。
これは「人工光合成」と呼ばれるもので、植物が行っている光合成を人工的に、化学的に行う、つまり太陽エネルギーを使って、二酸化炭素から多くのエネルギーを有した炭素含有化合物を作るということです。
ノーベル化学賞を取られた根岸英一先生もおっしゃっていたように、これからは、二酸化炭素を悪者にするのではなく、積極的に活用する時代です。人工光合成の仕組みは、1970年代の石油ショックを経験して、化石エネルギーに対する疑問も出てきた中で、太陽光に注目された東大名誉教授の本多健一先生と現在、東京理科大学長の藤嶋昭先生が世界で初めて見つけられたのです。以来、日本では継続して研究を続けており、まさに世界をリードしているといってよいでしょう。


裏田さんは、現在は何をされていますか?


卒業生
現在は、理学部の化学科を卒業して、理工学研究科物質科学専攻の修士課程にいます。東工大の大学院は、理学部と工学部が一緒になり理工学研究科となります。



大学院での研究テーマは何ですか?


卒業生
一言でいうと「触媒化学」です。学部の4年から修士の現在まで、同じテーマで研究を続けています。
研究している触媒は、ゼオライトです。私の具体的な研究は、この触媒の寿命を延ばすことです。 ゼオライトは、放射能を吸着することで注目されましたが、ものを作る時にも使われます。プラスチックの原料となるエチレンやプロピレンが重合したポリエチレンやポリプロピレンはご存じだと思いますが、私たちの研究は、これらのものを作る過程で、触媒としてゼオライトを使用し、省エネルギー化を目指しています。
そして、いよいよその実用化に着手するため、大学や民間の企業さんと共同でプロジェクトが作られました。私の所属する小松研究室もプロジェクトに参加させていただいています。

馬ノ段さんはどのような大学生活を送られていますか?


大学生
大学では、まず勉強が第一ですが、アルバイトと両立できるよう頑張っています。
大学では少林寺拳法を始めまして、2年間で初段もとりました。また、接客のアルバイトをしたりと高校の時よりも意欲的にいろいろなことに取り組んでいます。
私はまだ3年ですから、専門研究はこれからです。今のところ、物質の組成を調べる「分析化学」や元素をいろいろな方面から研究する「無機化学」に興味がありますので、その方面での研究を考えています。

皆さん様々な研究をされていますが、 理学部の研究の社会的な役割についてお聞かせください。


先生
私たち理学部の本質的な役割は、基礎科学の分野を担うことです。基礎科学にも二通りあり、一つは、世界で誰も知らないことを発見する純粋な基礎科学であり、もう一つは、遠くに目標を設定して研究を行う目的基礎研究です。これらは、必ずしも営利とは直接に結びつかないので、企業の研究室では行えません。とくに純粋基礎科学はそもそも人に役立つかどうかも考えていません。基礎科学は、人類の遠い未来に役立ったり、文化に貢献する学問であり研究です。そこに限りないロマンと強い使命が感じられます。私の研究テーマである人工光合成も、50年先、100年先の社会に貢献する研究です。
企業の研究室では、最終的には営利に結びつけないと継続できませんので、私たちが行っているような基礎研究はなかなかできません。リスクが大きすぎる研究は、企業では無理なのです。
このように営利目的では難しい研究について、最初の突破口となるような、基礎の部分を研究するというのが、理学部の一つの役割です。

卒業生
研究テーマによっては、工学部のように科学技術の発展に貢献できる面もあることは理学部の魅力の一つだと思います。私のように近い将来の「触媒」に関する研究では、化学工業の発展に直接役立ちます。

先生
裏田さんのおっしゃるように、製品に結びつくような具体的なものも作ってはいますし、企業と共同研究することもあります。ただし、工学部のように特許を取って製品化するということは、理学部の場合、本質ではありません。遠い未来のこと、あるいは役に立たなくてもいいから、世界で誰も知らないことを発見する、そういう知識を蓄えることが理学部の役割です。



  

 

  

●インタビューに答えてくれた方々


 


先生
石谷治先生  

東京工業大学大学院理工学研究科化学専攻教授
広島県立尾道北高等学校出身。神戸大学工学部工業化学科卒業。大阪大学大学院工学研究科プロセス工学専攻修士および博士課程修了。1987年ハーン・マイトナー研究所博士研究員。公害資源研究所研究員、ノースキャロライナ大学チャペルヒル校客員研究員を経て、1993年資源環境技術総合研究所主任研究官。1995年埼玉大学大学院理工学研究科環境制御工学専攻助教授。2002年東京工業大学大学院理工学研究科化学専攻助教授。2006年より現職。

   


卒業生
裏田光平さん

東京工業大学大学院理工学部研究科修士課程1年生(2012年度取材当時)
私立海城高等学校出身。2012年3月東京工業大学理学部化学科卒業。同年4月、東京工業大学大学院理工学部研究科修士課程に進学。物質科学を専攻。

   


大学生
馬ノ段月果さん

東京工業大学理学部化学科3年生(2012年度取材当時)
私立東邦大学附属東邦高等学校出身。

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