●大学生活について
皆さんが人間環境デザイン学科を受験した理由は何ですか?
■大学生
高校の頃から、大学ではプロダクトデザインかインダストリアルデザインを学びたいと思っていました。そこで自分の条件に合う学科を探したところ、人間環境デザイン学科が最適だと思ったからです。現在はプロダクトデザインコースを専攻し、コンピュータを使ったプロダクトデザインを学ぶ研究室に所属しています。
■卒業生
私は高校の時、大学で何をしたいか、ということが明確には決めらなかったのですが、「ものをつくりたい」という漠然とした目標はありました。そこでリサーチして、建築、プロダクト、支援機器など、幅広くものづくりが学べる学科ということに魅力を感じ選びました。
専門となるコース選択も3年次からですので、1・2年ではいろいろなことを基礎から幅広く学び、一番興味を持ったことを3年から専門に学べるというシステムも、私には理想的でした。
実際に大学に入学されてみての感想はいかがでしたか?
■大学生
僕は当初のイメージ通り、プロダクトデザインへ進みましたが、周りでは「建築志望」から「プロダクトデザイン志望」に変わったり、その逆のケースもありました。いろいろと学ぶうちに、本当に自分が興味のあることが見えてくるんだなと感じました。
■卒業生
たしかに、実際に学ばないとわからないことが多いですからね。
私は2年の終わり頃から、建築の先生の指導を受けるようになりました。実際に建築系の課題に取り組んだところ、やってみたいと実感して、建築を専門にすることを決めました。
この学科の授業では、グループで課題に向き合うことも多いので、いろいろな人の意見が聞けて勉強になりました。
■先生
これは共同制作の機会が多いこの学科の特色かもしれませんが、学生たちがパソコンの操作方法をはじめ、いろいろなスキルや知識を教え合って、お互いに能力を高め合っているのです。教員の目から見ても、すごい力だなと感じています。
人間環境デザイン学科の特徴的なカリキュラムについて教えてください。
■先生
特徴としては、1・2年次までは、3年次で選択する専門コースのすべてについて基礎を一通り学べるようになっています。その上で専門を決めていくのです。
特徴的な授業としては、1年次から「演習形式」の授業があって、建築やプロダクトデザインなど、すべての専門分野において必修科目になっています。この演習では、座学で理論を学びつつ、さらに課題が出て、実際に制作を行い、理解を深めます。
この課題作成は、個人で行うものだけでなく、みんなで制作を行う授業も多くあり、例えば、強化ダンボールを使って、座り心地や強さや美しさなどを考えながら進めるいすの制作です。このように共同作業をする授業も多く、共同で行うことで知識を共有し、コミュニケーションを取るという協調性を学ぶことができるのも特徴ですね。
また、社会で活躍している方々を講師として招き、工房でレクチャーやシンポジウムを行い、社会生活や仕事の現場での実務を学ぶ講座も用意しています。
私自身も、40歳過ぎまで学外で実務を行っていましたが、この学科の先生にはそうした社会実務経験者が多くいます。そこで、講義も含めて、なるべく社会における現場の空気を大学に取り込む努力をしています。
印象に残っている授業はありますか?
■卒業生
今先生がおっしゃった、「演習」が印象に残っています。この授業は、講義とそこで出される課題を、自分でいろいろと考えてこなしていくことがセットになっています。建築は制作課題が多いので、とても大変でした。
■大学生
僕も1年次の「デザイン基礎」や、2年次の「総合デザイン」といった演習系の授業ですね。この学科ならではの特徴的な授業だと思います。
1・2年次では建築系の演習だけではなく、プロダクトデザインの演習を行うなど、いろいろな分野を演習の中で学びますから、内容がバラエティに富んでいて楽しいですね。
■先生
建築は著名建築家の図面の模写からはじめて、製図や建築模型など、多くの課題があります。この演習を受講して、「建築は無理かな」と判断する学生もいるようですね(笑)。
■卒業生
デザインに共通した基礎をいろいろと学べるので、建築の仕事にも役立つことがあります。例えば今の業務では、案内板のデザインの仕事もありますので、その際に建築とは別分野の演習での学びが活きてきます。
学内にお気に入りの施設などはありますか?
■大学生
学内には「実験工房」や「制作工房」がそれぞれあって、ものづくりのための工具、機材なども充実しています。僕のようにプログラミング系のものを作る人や、家具などを作る人たちもいますので、どんなものでも作成可能な環境がありますね。
■先生
2年次からは、工房内に学生一人に対して1つの制作スペース・デスクが与えられます。これはほかにはない贅沢な環境かもしれませんね。学生同士の情報交換の場としても、この工房はすごく役に立つと思います。
■卒業生
私も演習で出た課題を、その自分のデスクで制作したりしていました。
■先生
年次ごとに、学生はデスクのあるフロアーを移動していきますから、毎年、各場所で大掃除の時期があります。そうすると、各デスクから、とんでもないゴミまでもが出てきますから面白いですよ(笑)。
■卒業生
大学では多くの場合、サークルの部室や食堂くらいしか自分の居場所が作れませんが、この学科では工房に自分の居場所が作れるので、すごく良かったですね。
■先生
工房にデスクがあるのは「人間環境デザイン学科」の学生だけですので、他の学科からうらやましがられていますが(笑)、もちろん、他の学科にはそれぞれの学びにふさわしい良い施設環境があります。
橋本さんは学生作品展にも積極的に参加されたそうですね?
■大学生
人間環境デザイン学科の学生作品展は、大学祭の時期に合わせて工房で展示を行います。通常の作品の評価は先生にしていただきますが、この作品展では来場された一般の方々に作品に触れていただき、感想や投票式の作品評価をもらえることができますので、また別のやりがいがありますね。
またこの作品展は、学科や専門にとらわれずに作品が作れますので、例えばプロダクトデザインが専門だけど建築の作品を作るなど、新たなチャレンジを試みる場にもなっています。
■卒業生
学生が主体になって行うので、その面でもためになる作品展だと思います。
「ユニバーサル・デザイン」に対する理解を深めるために授業で工夫をされていることはありますか?
■先生
授業では、座学ばかりではなく、実際に見学してレポートを書くといった内容もあります。例えば、信号機には音の出るものがありますが、その仕組みや工夫などは、実際に現場を見ることで理解が深まります。
また、工房には車いすで入れるトイレがありますが、そのトイレを調べてレポートを書いてもらったりもします。そうしますと、どういう器具が何のために使われているのかといったことへの理解が深まります。
ユニバーサル・デザインに関しては、普段目にはしていても、気に留めていないことがたくさんあります。そうしたことに気づくことで、ユニバーサル・デザインへの理解を深めてほしいと思っています。
ちなみに、ユニバーサル・デザインの先進国はどこですか?
■先生
北欧や米国、また、日本も先進国の1つですね。というのも、他国ではデザイナーや研究者や大学レベルでの取り組みが中心で、日本のように行政レベルで積極的な取り組みを進めている国は、まだ少ないのです。
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