<次へ 1 2 3 次へ>

CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




「知識情報・図書館学類」を受験した理由は何ですか?


大学生
小学生のころから図書館が好きでした。将来的に職業として図書館と関わることも考えて、高校の時に図書館の司書さんに話を聞いてみたんですね。図書館員や司書になるには結構厳しいよ、入ってからも大変だよと聞いて不安はあったんですが、高3の4月に筑波大の研究室訪問をして、大学の方に就職先などを聞いてみて「図書館員になる人はそんなに多くはなく、みんな自分のやりたいことを見つけて就職していく」というのを聞き、ここにいれば私ももっと自分がやりたい職業が見つけられるかなと思いました。また、高校時代、吹奏楽部でフルートパートのほか、プロデューサーを担当していたのですが、楽譜探しにとても苦労していました。そこで知人の協力得て楽譜検索データベースの作成を行い、情報システム系の研究の楽しさを知りました。
司書資格であれば、他大学でも取得可能ですが、図書館学、そしてデータベースをはじめとする情報関係の知識も学べると考えると、「筑波大学しかない」という思いでした。


卒業生
「この学類しかない」という思いは僕もまったく同じですね。僕は中学校時代に鉄道研究会、いわゆる鉄研を自ら創設しまして(笑)、研究活動誌を当時のワープロで作成し始めたんですね。その後、図書館にある性能のいいパソコンを借りるようになって図書館との縁ができました。高校ではもっぱらコンピューターを使った学習ソフトやシステム作りを英語の先生と開発し始めたんです。
そのうち自分は教育・情報・図書館をリンクさせて学校や教育の場に貢献したいのだと明確になり、また筑波大学に憧れのベンチャー起業家の先輩がいたこともあって、本学類を選びました。

筑波大学ではAC入試(アドミッションセンター入試)という制度もあるそうですね。


先生
はい。勉学について明確な目的意識があり,その目的を達成するために必要な資質と気力を備えている人を選抜するため、AC入試を実施しています。通常の推薦入試もありますが、推薦理由では学力が重要な指標となっており、一般の入試で入学してくる学生との類似点が多くなるのが実情です。本学類のAC枠の定員は5名です。試験内容は厳しいものがあります。この入試方法では、中学あるいは高校でどんなことをやってきたか、そしてその学びの延長として本学類が本当にふさわしいかどうかという観点で判定しています。

大学生
私の場合、一般入試では学力不足でしたのでこれしかありませんでした(笑)。学力がどうにも伸びず、いったんは筑波大学の受験を諦めていたんですが、よく調べてみると「AC入試」があることに気づき、準備に入りました。高校時代に行った「楽譜検索データベースづくり」作業を中心に、かなりの文量のレポート作成と自己推薦書等、出願に必要な書類作成を行いましたが、これが想像以上に大変で、周りの受験勉強をしている友達がうらやましかったほどです。でも今は、あきらめかけていた夢を手に入れたという達成感でいっぱいです。

知識情報・図書館学類には文系・理系どちらの学生が多いですか?


大学生
私は文系ですが、文・理半々という気がします。
図書館が好き、本が好きという人は多く、図書館の話になるといろんな情報を友達が教えてくれます。高校時代は友達と図書館の話なんかできなかったので、とても楽しいですね。

卒業生
僕の時代は文系が多かった気がしますね。ただ僕の周りには、図書館だけでなく、情報システム系にも関心を持つ人が多かったです。

先生
図書館に限らず、情報の集積、整理、さらには公開といった、データベース作りとそのシステム管理などに関心のある受験生は、ぜひ本学類に挑戦していただきたいですね。

では入学後に苦労するのは文系・理系のどちらなのでしょうか?


先生
本学類では1年次からプログラミングだけでなく、数学も徹底的に学びます。ですから高校時代に数UBまでは履修していないと苦労するでしょうね。数学が分からなければコンピューターや論理的な考察方法はわかりません。また、今日、情報学の重要な基礎となっている「哲学」も1年次の必修科目です。
文系・理系のどちらであっても、1年次の勉強は少々大変になりますね(笑)。

大学生
学びたい目標があって入学しているので、大変ですが頑張れます。

数学やプログラミングなどわからないことはどうするのですか?


大学生
私のような文系の学生は、理系出身の友達に数学を教えてもらっています。

先生
人に教えることで、自分も学びが深まりますので、学生同士が教え合うということも大事にしています。
その一環として、図書館の一部を借りた「春日ラーニングコモンズ」という学生チューターが後輩を指導する相談所も、本学類の特徴的な施設の1つになっています。これは、図書館を学生の学力向上の場、学習意欲を高める場にしたい、という試みでもあります。

大学生
私はプログラミングについて聞くことが多いのですが、チューターさんは答えをズバリ教えてくれるわけではありません。答えを導く過程や、こういう方法もあるよと考え方のヒントを教えてくださいます。他にも履修したい授業の内容など、学生生活全般に対しても質問ができるので、「春日ラーニングコモンズ」はとても助かりますね。

卒業生
ちなみに「春日ラーニングコモンズ」を2008年に開設したのは、他ならぬ逸村先生です。

特徴的なカリキュラムについて教えてください。


先生
科目は必修から専門まで構造化されており、体系的な学びを実現させています。また、学類共通科目として「知識情報特論」というのを設けていまして、これは4年生になってもしっかりと学びます。授業内容も興味深いもので、例えば、東大の先生を招聘して、3.11と原発事故でコミュニケーションはどう変わったか、といったテーマをかなり高いレベルで講義したりします。
また、3年の夏休みのインターンシップ(職業体験)では、希望者は国内外の公共図書館で情報システムを学びます。このインターンシップは全国レベルで見てもかなり充実した内容ですね。
また社会に出てから役立つ実学的な授業も多く取り入れています。特に学類として「プレゼンテーションテクニック」に力を入れています。パワーポイントを使ったプレゼンテーションはもちろん、パワーポイントを使わない、口と身振りで自分の主張を伝えるプレゼンテーション技能も教えます。

役に立っている授業にはどのようなものがありますか?


大学生
逸村先生が担当の「情報基礎実習」は基礎から教えてくださるので、とても参考になっています。word、excel、パワーポイント等の使い方も教えてくれるので、これからに役立つなと思いますね。レポートは膨大ですが(苦笑)。

先生
この授業は早く大学での学習に慣れてもらうための授業です。特に大学を通して課題となるレポート作成の基礎を作るため、あえて課題は膨大なんです。山口さんはACで入ってきているので、レポート作成がどんなものかわかっているからいいけど、一般入試で入ってくる人たちの多くは、いかに簡潔に答えるかばかりを重視するので、そういうレポートには思いっきり赤を入れます(笑)。

大学生
他に「情報リテラシー実習」という授業では、パワーポイントを使ってプレゼン用資料を作ります。例えば、「筑波大のいいところ」というテーマで3人ぐらいのグループで作成したり、筑波大を紹介するパンフレット作りの課題が出ます。
他の人たちの発表も見ますので、プレゼンの技、パンフレットづくりの発想など、刺激や参考になることもあって楽しい授業です。

先生
授業を改編するに当たり、前述しましたが、論理性を重視して、パワーポイントを使ったプレゼン能力を強化しようと学校側では考えました。就職後も活かせるスキルの基礎は、1年生の頃に叩き込むという、そんなシステムの授業です。

卒業生
印象的だったのは、1年次の最初の授業で先生が「君たちの未来は暗い」と、開口一番先生に言われるんですよ(笑)。当然ながら、ガクーンと来ますよね(笑)。
でもよく聞くと、それは「図書館が好きとか本が好きとか、そんなありきたりな思いだけで司書になろうと思ったら、君らの未来は暗いぞ」という意味なんですね。
図書館というのは、人々に知識情報を提供する大切な機関であり、今後は電子化も進んでいきます。ですから、さらに教育にいかに活かせる場にするか、ということまで深く考えて司書を目指さなければいけない、という教えなのですね。
この心構えは、今僕がやっている「情報科」教員の果たすべき役割とすごく重なる部分があります。 「情報科」では、この情報社会の中でどうしたら効率的かつ安全に情報収集ができて、さらにその情報を加工・編集して活用できるか、また効果的に他者に情報を発信できるか、情報技術を活かして教育を発展させるか、ということ考えながら教えなくてはいけません。
ですから、とても大切な心構えを教えていただいた授業ですね。

 

 

●就職活動、仕事について




知識情報・図書館学類の卒業生はどういう分野・業界の就職先へ進みますか?


先生
毎年110名前後の卒業生が出ますが、そのうち1・2割が大学院進学で、司書を含む図書館関系に進む学生が1割ですね。一般企業の様々な分野で情報システム系の職に就くのがやはり1割ほどでしょうか。図書館も含む公務員や大学職員などが1ケタくらいで、あとは国家公務員として官庁へ入官していく学生が多いですね。
データベースやシステム作りに関する知識を身につけていきますので、幅広い分野への就職が可能だということですね。


卒業生
そうですね。一般企業のエンジニア職が多いと思います。
他にも、図書館員になった人もいましたし、博物館で「デジタル・ミュージアム」の担当者になっている知り合いもいます。

先生
国際船舶関係や貿易関係へ進む学生も多いですね。また物流の中でも国際物流・貿易に関わる運送業者や大手倉庫管理会社等、商社、航空関係事業者など様々です。

小野さんが「情報科」の教員になられた理由は?


卒業生
中学校、高校時代から、コンピューターやインターネットを使った勉強の効率化のためのソフト作り、情報の加工・発信などをやってきました。これらを通して、情報技術は教育に大きく貢献できるということを確信していたので、「情報科」教員になるという1つの目標ができました。
一方で、より良いソフト制作やシステム作りをしたいという目標もあり、卒業後に大学院へ進学しました。学部時代までは大学の研究室の中で、コンピューターを前にした研究が中心でしたが、教育現場を知らずに調査を進めることに限界を感じ、高校教師になることを決意しました。
現在の勤務先であるお茶の水女子大学附属高校を志望した理由は、学校に情報科教員が僕1名であったからです。教員になるのなら、生徒の興味を持てる授業をしたい、役立つ授業をしたいと思っていました。少々独創的にもなるでしょうから、他の先生と足並みを揃えなければいけないというのは、私には無理かなと考えていました(笑)。

仕事のやりがいはどんな時に感じますか?


卒業生
生徒に関心を持って授業に集中してもらうよう工夫をしているので、こちらの意図が伝わったと感じた際や、また、授業で伝えた内容に対して生徒から「先生、あのシステムを使ってみました」と反応があった際にやりがいを感じます。
今後も、図書館情報学で培った学際的な知見を通して、本質的な情報教育の在り方を研究し、生徒の皆さんへ還元したいですね。

 

 


<次へ 1 2 3 次へ>