●5年後に向けて
先生が、超伝導の世界に入ったきっかけは何だったのでしょうか?
■先生
私は大学4年生の時に、はじめは「スピネル系材料の金属絶縁体相転移」についての研究をやりたいと言って、研究室を選んだんです。それが1987年でした。ちょうど1986年に先ほど言った銅酸化物の発見があった時で、私が大学院に行きたいと話をしたら、先生のほうから「きみ、これからは超伝導の時代だ。超伝導の研究をやってくれないか。うちの研究室はまだやっていないけど、先陣を切ってくれ」と言われました。それは面白そうだと思って、軽く入ったというのが、いちばんのきっかけですね(笑)。
はじめの頃は何も知らない状態で超伝導に足を踏み入れましたが、やってみればみるほどこれほど面白い研究はないということで……今ハマっている、という感じです。
面白いというのは、どういう部分でしょう?
■先生
まず初期研究の段階では、かたっぱしからいろいろな材料を作っていくんです。それで何かができると、実験をしてデータを見ていくうちに、自然の神様が我々にいろいろなことを語りかけてくれるわけです。自分が予想していたものと違う結果になった、これは何なんだろう、というわくわく感などで、若い頃は毎日が楽しかったですね。まあそれで、いつのまにかこうなってしまいました(笑)。
皆さんの5年後の夢を聞かせてください。
■大学生
とりあえず大学院に進学するので、将来の仕事について、まだ明確には考えていないんですけど、今の大学生活を生かせるような仕事に就きたいとは思っています。企業研究者の道もあると思いますが、大学で得られたことは知識だけではないので、いろいろな分野での活躍を考えています。技術者だけでなく、営業でも、ふつうの商社の営業じゃなくて、この製品はこういうスペックを持っていて、とか理系でないとできないような営業もあると思うので、漠然とそういうのもいいなと考えています。
■卒業生
昔「プロジェクトX」っていう番組があったじゃないですか。私はああいう仕事がしたいなと思います。
それは、日本を変えるような仕事ということですか?
■卒業生
そこまでじゃなくてもいいんですけど、会社を守れるような技術を作ったり、産業の主流となるようなものを開発したりしたいですね。
■先生
企業では、常に利益を考えてやっていかなくちゃいけないですけど、それに対して大学というものは、夢を追えるんですね。成果は出さなくちゃいけないですけど、それが世の中のためになると信じていることをやっていける。その信じていることが実現できて、世の中の生活が一変するような、そんな社会を作る一助となりたいと思いますね。
5年後に室温超伝導は実現するのでしょうか?
■先生
神のみぞ知るですね。今までも長年みんながそれにチャレンジしてきましたが、1986年以前には、そんなの無理だと言われていた。それが、現在ここまで来ているということは、その努力を神様がどこかで見ていて、誰かにプレゼントをくれるんじゃないかと。で、そのプレゼントを我々がもらいたいと(笑)。
誰にもわからない道なき道を我々は行くわけですから、その道を今少しずつ作っていくということです。
その道を作っていく過程で、いろいろな付随した成果もあるわけですよね。
■先生
その付随した成果というものも、いろいろな分野で活躍しています。ゴールはそこ(室温超伝導)にありますけど、いろいろな形で世の中に貢献していけたらうれしいなと思います。
|