●大学生活について
中里さんが入学されたときには、航空操縦学専攻ではなかったのですね。
■卒業生
はい。当時は、航空操縦学専攻はなく、パイロットを目指すには、航空大学校に行くなどしなければなりませんでした。私もパイロットになりたかったのですが、実は、視力が当時の規定では足りず、諦めていたのです。それで、整備士を目指して、東海大の航空宇宙学科を受験しました。ところが、その後、規定が変更されて、視力は矯正して1.0あればよいということになりました。これなら、私もクリアできます。よし、それなら、アメリカで操縦士免許を取得しようと思っていたところに、航空操縦学専攻が新設されて、転専攻も認められることになったのです。本当にラッキーでした。
入学してみて、どんな印象を持ちましたか?
■大学生
僕が入学式で同級生に会って驚いたのは、茶髪の人がいたり、何か違和感を覚えるような人がいたことでした。とても残念に思ったことをよく覚えています。でも、その茶髪の人は入学後、髪も元の黒髪となり、留学先でルームメイトになり気心が知れてくると志は一緒であることがわかって、すっかり仲良くなりました。およそ40名の同級生の中には、女性も3人いて、彼女達も頑張っています。
■卒業生
私の場合、航空操縦学専攻では第一期生でしたから先輩はいませんでした。ただ同級生には、社会人を経験していたり、他大学から移ってきたりと、年齢も経験も様々でした。それでも全員が、パイロットになりたいという思いと情熱があり、一期生として操縦学専攻をみんなで良いコースにしていこうという熱い気持ちがありました。それで全員が集まってよく話し合いをしていました。
勉強は難しかったですか?いま活かされている講座はなんですか?
■大学生
もちろん、大変でした。とくに僕は、数学と物理が苦手でしたから。はじめて勉強する内容もあり、みんなで放課後残って、お互い苦手なところを補い合ったり。教科書は合わせると厚さが4〜50センチにもなり、勉強しなければならないことが山ほどありました。パイロットになりたいという強い思いがなければ続かなかったと思います。
■卒業生
仕事に活かされている講座があるかと聞かれれば、すべてそうだといえます。パイロットという職業をこなすには、飛行機に関するシステム、気象や医学、実際に飛行機を操縦する技術、運航知識など、広範囲にわたる勉強が必要です。このような専門知識を一つひとつ積み重ねていくことが重要で、無駄な講座や勉強は何一つありません。アメリカでの実機訓練でも、当時の自分の性格面も含めた多くの失敗と反省が、今のフライトの糧となっています。今はジェット機を運航していますが、機体が大きくなっても、操縦の基本は変わりません。先輩方にも基礎訓練を思い出せとよくいわれます。ですから、何かに迷ったときには、この東海大学で学んだ基礎にいつも戻るようにしています。
なかでも面白かった講座はありますか?
■大学生
航空基礎講話(現在は入門ゼミナール)という授業があります。これは、航空関係のいろいろな方が講師となって毎週お話をしてくださるものです。たとえば、現役の機長の方など、現場で働いている方がご自身の仕事に関することなどを聞かせてくださって、とても面白くて夢もふくらみ、また参考になりました。
航空宇宙学科の素晴らしさについて教えてください。
■先生
東海大学の一番の特長は、JCAB(国土交通省航空局)の操縦士ライセンスをアメリカ人の試験官がテストをして取れるというところにあります。それと、3年次までに資格を取ってしまい、4年次では、さらに主専攻科目をじっくり学び、卒業研究へと進みます。これは単に技能だけを習得するのではなく、パイロットとして必要な人間性を養うことも目的としているからです。本学の後に操縦士免許を取得できる大学もいくつか出てきましたが、歴史も浅く、卒業生がパイロットとして日本の空を飛んでいるのは本学だけです。
■卒業生
私は、まず、航空宇宙界の最前線で研究および活躍されている教授の方々から授業を受けることができることを挙げたいと思います。航空機や気象に関しても実際に運航に携わってきた経験深い教授から学びました。さらに、技能については、エアラインや航空局で活躍されてきたベテランのパイロットの方から教えていただきますから、会話のなかから、目指すべきプロパイロットの姿や実際のライン運航ついて知ることができました。このことはいまでも役に立っています。また、実機訓練では、ノースダコタ大学で、最新の訓練機を用い、4本の滑走路を保有する国際空港で行いますから、スケールが違います。初めて渡米し、この空港に降り立ったときには、その規模に感動しました。帰国後も、東海大学が保有する固定式フライトシュミレータで訓練を受けることができます。
■大学生
とにかく環境が整っているということが一番だと思います。たとえば、アメリカので訓練を行うノースダコタ大学も全米でも評判のところで、ピカピカの最新鋭の機材を使っていますし、教授陣は、會澤先生をはじめとして一流のすばらしい先生方がいらっしゃる。おもいっきり努力するしがいがありますね。パイロットになる環境は整えられていますから、あとは、自分の努力です。
■先生
1年生が入ってきたときと、4年になって卒業するときでは、顔が変わります。パイロット顔といいますか、立派になるというか、それを見るのが一番楽しいですね。授業でよく、学生にこう質問します。「飛行機はなぜ落ちないのか」。物理的なことはともかく、それは飛行機に携わる人みんなが翼を支えているから落ちないんだよと教えます。まわりから様々なサポートがあって、はじめて安全にフライトが行えるわけです。自分中心ではなく、それをわかるパイロットになってほしいと、そのことをいつも願っています。
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