東大料理愛好会レシピ
さっぱり味も、こっくり味もおまかせ! イカ
2019.9.12
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東大料理愛好会のメンバーが毎月1つずつ食材を取り上げ、旬の食材のレシピをご紹介します。
今月のテーマは「イカ」
今年は猛烈な残暑がことの外厳しく感じられましたが、いかがお過ごしでしょうか。9月とはいえ、こまめに水分と塩分を摂取し、熱中症にならないように気をつけたいものです。大学生の私は8月、9月は夏休みなので、海に山、花火大会やお祭りなどのイベントにとても忙しい毎日です。お祭りの屋台で飲み食いするものって、とても美味しく感じますよね。小学生のころ、友人と行った地元のお祭りの屋台で食べたイカ焼きの味が今でも忘れられません。しょうゆの焦げた香りに包まれた丸ごとのイカ。金魚すくいや射的と一緒で、私にとってはお祭りになくてはならないものでした。今でも夜店にイカ焼きは欠かせません。 イカは漢字で「烏賊」と書きます。この烏という字は「からす」と読むのですが、これはカラスが水面にプカプカと浮かんで死んだふりをしているイカをついばもうとしたところを、イカが10本ある足でカラスを捕まえたという中国のちょっと怖い言い伝えが由来という説もあるそうです。海賊の賊の字があるのも納得ですね。 ところで、イカを焼くと身が丸まってしまいますが、実はこれはイカの体が特殊な構造をしているからなのです。体の軸の方向に、強靭なコラーゲン線維が表皮側に走っています。そしてこの線維は加熱すると縮まろうとする性質があるので、焼くと体の軸の方向に丸まるのですね。イカの身に格子状の切り込みを入れた料理はよく見かけると思いますが、イカの表皮側に切れ込みを入れるよりも内側に入れる方がよく曲がるのも、表皮側に強い線維があるからです。さらに茹で時間で硬さが変わります。加熱し80℃を超えると一旦硬くなり、その後やわらかくなるので、さっと加熱するか長時間加熱するのがよいです。 今月はそんなイカをテーマにレシピを作りました。1品目は、チャンジイヨウユイです。上記のイカの性質を活かして、内側に切り込みを入れることで身をくるんと曲げています。華やかな見た目といろいろな食感が楽しめる、素敵な一皿です。2品目は、魚介のトマトピラフです。魚介の旨味とトマトの甘さがよく合います。どちらも暑い季節に合うレシピですので、ぜひご家庭で試してみてくださいね。 執筆:相原 東京大学2年 |
主菜 姜汁魷魚(チャンジイヨウユイ) 〜生姜のタレと飾りイカ〜
材料(4人分 ※盛り付け写真は2人分。2皿できます。)
スルメイカ・ ・・・・・・1杯
水・・・・・・・・・・・700cc
塩・・・・・・・・・・・小さじ1/2
酒・・・・・・・・・・・大さじ1/2
きゅうり・・・・・・・・2本
トマト・・・・・・・・・1個
生姜のタレ
おろし生姜・・・・・・・15g
醤油・・・・・・・・・・大さじ1
酢・・・・・・・・・・・大さじ1/2
作り方/レシピ
<生姜のタレ>
(1)タレの材料を全て器に入れて、混ぜる。
(2)冷蔵庫で冷やしておく。
<イカ>
(1)胴の内側(☆)に指を入れ、軟骨にそって胴とくっついている部分を剥がす。
(2)エンペラ(上の三角形の部分)と目の部分をしっかり持って、内臓ごと引き抜く。
(3)細長い軟骨も引っ張って取り除き、軟骨がついていた根元の固い部分はそぐ。
(4)エンペラを合わせ、付け根の中心部分(◎)に指を入れて外す。
(5)キッチンペーパーなどを使って、エンペラを外したすじから皮をむく。
(6)すじに包丁を入れて開き、内側の薄皮をむき、上下を切って10cmの長さに整える。
(7)イカの皮側ではなく内側に、身の半分くらいの深さまで斜めに5mm幅の切り込みを入れる。さらに90度回して同じように切り込みを入れる。
(8)縦半分に切り、横に四等分して8切れに分ける。
(9)小さめのナベに湯を沸かし、塩と酒を加える。
(10)すぐにあげられるようにザルを用意しておき、(8)を20秒間サッとゆでる。
<きゅうり>
(1)よく洗い、上下を落とし、5.5cm長さに切ったら5mm幅の千切りにします。
<トマト>
(1)よく洗い縦半分に切り、ヘタを三角に切り落とし、2㎜幅の薄切りにします。
※1個のトマトから2つの薔薇ができます。
(2)(1)の薄切りを縦にスライドさせ、くるくる巻いて薔薇のような形を作る。
イカ、きゅうり、トマトを飾りつけ、タレをそえて完成。
レシピのポイント!
・イカの切り込みは、皮側ではなく内側に入れます。同じ深さ・同じ幅・同じ角度に切り込みを入れていくところがポイントです。綺麗にくるりんと曲がります。
・彩りと見栄えがよく、食卓が華やかになります。イカ・トマト・きゅうり、それぞれの食感を楽しむことができます。
主食 魚介のトマトピラフ
材料 (4人分)
米・・・・・・・・・・2合
☆玉ねぎ・・・・・・・1/2個
☆にんにく・・・・・・1片
★赤パプリカ・・・・・1/2個
★黄パプリカ・・・・・1/2個
トマト缶・・・・・・・1/2個
冷凍シーフード・・・・300cc
ライム・・・・・・・・適宜
オリーブオイル・・・・大さじ3
◎水・・・・・・・・・300cc
◎白ワイン・・・・・・50㏄
◎固形コンソメ・・・・1個
◎ターメリック・・・・小さじ1/3
(カレー粉でも可)
作り方/レシピ
(1)シーフード(エビ・イカ)を30分程塩水で解凍し、適宜食べやすい大きさに切る。
(2)◎を合わせてコンソメを溶かしておく。
(3)☆をみじん切り、★を細切り、ライムを輪切りにする。
(4)オリーブオイル大さじ1をフライパンにひき、☆を弱火で炒る。玉ねぎが透き通ったら取り出す。オリーブオイル大さじ1を追加し、水気を切ったイカを炒め、それも取り出す。
(5)さらにオリーブオイル大さじ1を加え米を弱火で5分程炒める。
(6)米にツヤが出て透明になってきたら◎とトマト缶を加えて軽く全体を混ぜる。
(7)エビ・イカ、☆★を加えて強火にし、沸騰するまで熱する。
(8)沸騰したら蓋をして弱火で15分前後加熱する。
(9)火を止め10分程蒸らす。
(10)盛り付け、ライムを載せて完成。
レシピのポイント!
・シーフードミックスは3%濃度の塩水につけると縮まず、臭みも取れて美味しく解凍できます。海水の塩分濃度と同じにすることで浸透圧の影響による旨味の溶出を防ぐことができるからです。
・盛り付ける前に火を強めておこげを作っても美味しいです。
レシピ開発裏話
1品目は「姜汁魷魚(チャンジイヨウユイ)」で、魷魚とはイカのことです。生姜とイカときゅうりを使ったシンプルな中国料理に、真っ赤なトマトを加えることで彩りよく仕上げました。切り方を工夫して薔薇の形にするだけで、華やかに盛り付けられます。きゅうりは長さと幅が揃っていると見栄えがよいですよ。
イカには疲労回復、生姜には食欲増進の効果があります。タレは簡単に作れて炒め物などにも応用できます。イカと生姜で夏バテを予防し、まだまだ暑い9月を乗り切りましょう!
また、スルメイカは意外と簡単に捌くことができ、今回のレシピでは使用しなかった足やエンペラなどももちろん美味しくいただけます。この機会にチャレンジしてみてはいかかでしょうか。
執筆:濵 女子栄養大学2年
2品目は魚介のトマトピラフです。残暑の厳しいこの季節、あまり食欲がないという方も多いのではないでしょうか? そこで今回はトマト缶とスパイスを使用して食欲増進を狙ったピラフを考案しました。作っている間は香りがよく出来上がりが待ち遠しかったです。また魚介の旨味を吸ったご飯はとても美味しいですよ。
そして1品目の裏話にある通り、イカのタウリンという成分は疲労回復に効果てきめんですし、具材を炒めてスープを注ぎ放っておくだけで完成するピラフは意外と簡単に作れるため、おススメです。具材や米を炒めてから炊くピラフやパエリアなど日本のお米料理とは違う西洋の調理法を通して、お子さんが世界へ興味をもてたら素敵だなと思います。
執筆:佐々木 東京家政大学3年
*この記事で紹介しているレシピはアレルギー対応はしておりません。アレルギーをお持ちの方はご注意ください。
東京大学料理愛好会
東京大学を中心に、さまざまな大学・専門学校に通うメンバーで構成されている。都内のキッチンスタジオで週に1度調理実習を行い、腕を磨く。
最近では、NHK総合テレビ『あさイチ』にメンバーが出演したり、大手回転寿司チェーンかっぱ寿司にメニュー提供など積極的に活動。
著書に『東大料理愛好会 頭がよくなるレシピ』など。