どーんとこい!中学入試の算数

第6回 分配算ではない分配の問題

大人でもちょっと手こずってしまうような、難問奇問が続出する中学入試の算数。
でもだいじょうぶ、コツさえつかめば怖くありません!
学習サポートセンターのカズが、算数を楽しく学ぶ方法を伝授します。

ある数量をいくつかの数量に分けたとき、数量の差がどれだけ大きいかや何倍になっているかに注目して、いくつかの数量の大きさを求める問題を「分配算」といいます。たとえば、「1000円を兄と弟の2人で分けました。兄が弟よりも200円多いとき、それぞれいくらずつ分けたでしょうか」こんな問題ですね。

このような問題は、線分図をかいて解くことが多いのですが、Z会の対象校のような難関校では、単純な分配算はあまり出題されていないようです。テクニックを覚えているかどうかだけを試すような問題は、極力避けたいとの思いがあるのかもしれませんね。

今回は、分配をテーマにしているけれど、分配算の考え方は使わない問題をご紹介します。市川学園の問題をヒントにして作成した「場合の数」についての問題です。多少の根気は必要ですが、ぜひ考えてみてください。

なお、作問にあたって、ちょっとリアルなお金の話に改題してみました。それでは早速ですが、見ていきましょう。

問題

清兵衛の遺産5000万円を、貴子一郎次郎三郎四郎五郎の6人で分けることになりました。まず、清兵衛の配偶者である貴子が2000万円をもらい、残りの3000万円を子どもたち5人で分けることにしました。もらう順番と配分は、あみだくじで決めて配分したところ、5人は以下のように発言しました。

一郎  「残りのをもらったよ」
 
次郎  「残りのをもらったよ」
 
三郎  「残りのをもらったよ」

四郎  「残り全部をもらったよ」
 
五郎  「次郎と三郎の3人の中で一番少なかったよ」

5人の子どもたちがもらったお金は100万円分の札束ごとで、金額はそれぞれ異なる200万円以上です。

このとき、上の5人の話から、次郎と三郎のもらった合計金額はいくらになるでしょう。

ヒント

まず、子どもたちの発言から、最後にもらったのはだれかが決まります。また、5人のもらう金額が異なることから、一郎の順番に着目して考えてみましょう。一郎が次郎(または三郎)のすぐ後にもらうと、2人のもらう金額はどうなるでしょうか。

これらのことに注意しながら、どのような場合があるのかを漏れのないように書き出してみましょう。

(参考)

2017年度市川学園中学校 第3問

現実に、こんな複雑な相続をさせることができるのかどうかはわかりませんが、ケンカにならずに配分できたということは、よっぽどこの5人兄弟は仲がよかったのでしょう。

それでは、今回の解答解説を確認してみてください。

解答・解説はこちら

解答

「残り全部をもらったよ」という発言から、最後にもらうのは四郎であることがわかります。そこで、残り4人のもらう順番について考えます。

まず一郎は、次郎(または三郎)のすぐ後にもらうと、次郎(または三郎)と同じ金額になってしまうことから、最初にもらうか、五郎の後にもらうかのどちらかだとわかります。また、残りの金額から同じ配分をもらう次郎と三郎はお互いに順番を入れ替えてもほかの3人に影響はありません。

そこで、仮に次郎と三郎では、次郎のほうが先にもらうとすると、以下のような場合が考えられます。

 

(1)一郎が最初にもらう場合、残りの3人の順番は次の3通りです。

・次郎、三郎、五郎の順

一郎が3000万円の半分である1500万円をもらい、次郎が1500万円のである500万円もらうと、

残り1000万円になりますが、このとき三郎は1000万円のをもらうことができません。

・次郎、五郎、三郎の順

このとき、五郎、三郎に配分される場合は、「みんなが200万円以上をもらう」ことに注意すると、取り分は下の表のようになります。

このとき、五郎の取り分が三郎よりも多くなってしまい、条件を満たしません。

・五郎、次郎、三郎の順

次郎と三郎が続けてもらうときは、最初にある金額を1とすると、 のような減り方をします。

つまり、 に相当する部分が100万円分の札束単位になる場合は 9⇒6⇒4(束) が最小単位であり、一郎がもらった後の残りの金額は1500万円なので、下の表のようになります。

このときも、五郎が次郎と三郎よりも多くなってしまい、条件を満たしません。

 

(2)一郎が五郎のすぐ後にもらう場合は、五郎と一郎がセットになることから、このあとの順番は以下のようになります。

・次郎、三郎、五郎、一郎の順

次郎が3000万円のである1000万円をもらうと、残り2000万円になり、

このとき三郎は2000万円のをもらうことができません。

・次郎、五郎、一郎、三郎の順

このとき、みんなが200万円以上をもらうことに注意すると、以下の表のように2通りが考えられます。

前者は、五郎が三郎よりも多くなってしまい、条件を満たしません。後者は、五郎が次郎および三郎よりも少なく条件を満たします。

・五郎、一郎、次郎、三郎の順

このとき、みんなが200万円以上もらっていることから下の図のようになります。

五郎が次郎および三郎よりも多くなってしまい、条件を満たしません。

 

以上から、条件を満たすのは、五郎が200万円、一郎が900万円、三郎が300万円の場合で、このとき、次郎が1000万円、四郎が600万円になります。

次郎と三郎の合計金額は、順序が逆であっても同じことから、1300万円になります。 (答)

いかがでしたでしょうか。次郎と三郎がこのお金を使って何をしようとしているかはわかりませんが、身近(!?)な話題からみなさんが算数の問題に興味を持ってくれればうれしく思います。

プロフィール

出題・文

学習サポートセンター カズ

Z会の学習サポートセンターで、日夜会員のみなさんからの質問相談に応じている。

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