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わが子のタイプ別! 算数力を伸ばすかかわり方

「『わかってる!』というくせに、答えはまちがいだらけ」「何度説明しても『わからない』と言って、なかなか解き始められない」など、算数の宿題やZ会の教材に取り組むお子さまの様子を見て、不安や疑問を抱く保護者の方は多いようです。そんなお悩みの多くは、お子さまの「タイプ」に着目して、声かけやかかわり方を工夫することで、解決が可能かもしれません。Z会東大進学教室数学科講師の石田浩一先生に、お子さまの「タイプ」の見極め方と、タイプ別の効果的なかかわり方についてうかがいました。
 (取材・文 松田 慶子)

目次

「タイプ」に応じた学び方で、算数に苦手意識をもたせない!

【算数タイプ チェックリスト】お子さまは、「じっくりタイプ」? 「さくさくタイプ」?

 

「タイプ」に応じた学び方で、算数に苦手意識をもたせない!

――算数のテストで点がよくても、難しい問題や応用問題にはなかなか取り組もうとしなかったり、テストで点が取れないのに、計算の反復練習をいやがったり……。子どもの算数への取り組み方を見ていて、このままでいいのかと心配されている保護者は多いようです。

それはもしかすると、お子さまに合った学び方ができていないのかもしれません。算数の学び方は、大きく2つのタイプに分けることができるとわたしは考えています。詳しくは後述しますが、2つのタイプとは、どんどん新しい問題に挑戦したがる「さくさくタイプ」と、まじめにじっくり学んでいく「じっくりタイプ」です。その子のタイプに応じて、声かけの方法やかかわり方を工夫することで、その後の算数の実力の伸びが変わってくることがあります。

たとえば「さくさくタイプ」の子は、解き方を基本から丁寧に解説されても「つまらない」ので、すぐにあきてしまいます。このタイプの子には最初から考えさせる問題を渡し、取り組むなかで解き方を理解させるという方法が効果的です。しかし、同じことを「じっくりタイプ」の子にすると、「習っていないからできない」と思ってしまい、なかなか問題を解き始めることができません。

その子に合わない学び方をさせてしまうと、いたずらに「つまらない」「できない」という意識を刷り込むことにつながり、算数嫌いになりかねません。算数に苦手意識があると、学年が上がったり算数から数学に進んだりするなかで、より複雑になる問題に立ち向かっていけなくなってしまいます。

 

【算数タイプ チェックリスト】お子さまは、「じっくりタイプ」? 「さくさくタイプ」?

それではさっそく、算数の学び方について、お子さまのタイプをチェックしましょう!
次の①~⑥の質問について、お子さまにあてはまるかどうかを考えてみてください。

※今回のタイプ分けは、学年が上がり、算数の学習が進んでいくと、傾向がよりはっきりしてきます。後半の項目については、低学年のお子さまは考えられる範囲で答えてみてください。

※低学年のお子さまは、チェックリストの後、「じっくりタイプ」「さくさくタイプ」の項目に進む前に、まずは「低学年のお子さまの場合」の項目をお読みください。

 

  1. 途中式を省いたり、計算の数字を雑に書いたりすることが多い。
  2. テストや「てんさく問題」などは、見直しをしないのでケアレスミスが多い。
  3. 計算ドリルなど、同じような問題にたくさん取り組むのは嫌いだ。または、あきてすぐに投げ出すことが多い。
  4. Z会の教材などで、学校ではまだ習っていない単元を学習するときでも、自分で説明を読んで練習問題を解くことができる。
  5. 学校の宿題やZ会の教材などの、初めて見る問題や応用問題にも、とりあえず挑戦してみようとする。
  6. 自分で答え合わせをするときに、正解をよく見ずに勢いで〇をつけてしまうことがある。また、解答の形式(小数で答えるのか、分数で答えるのかなど)などの細かい点は気にならない。

 

あてはまる項目の少ないお子さまは、「じっくりタイプ」の傾向が強く、あてはまる項目が多いお子さまは、「さくさくタイプ」の傾向が強いといえるでしょう。

 

 

低学年のお子さまの場合

タイプがはっきりしない低学年のうちは、生活のなかで体験をとおした学び方を!

――低学年のうちから、タイプの傾向がはっきりあらわれるものでしょうか。

低学年のうちは、お子さまがどちらのタイプなのかをはっきり分けることは難しいかもしれません。たいていは3~4年生以降にどちらの傾向が強いかがはっきり見られるようになります。

 

――それでは、低学年の時期には、どうかかわっていくのが適切なのでしょうか。

低学年のうちは、後述する「じっくりタイプ」に近いかかわり方が効果的です。具体的なモノをとおして、「確かにそうなるんだ」と、とにかく納得させてあげましょう。低学年の学習内容を一つひとつ納得して進められると、3年生以降で分数や小数、3桁のたし算などの抽象的な概念が出てきても、つまずかずに済みます。たとえば「12-3=9」なら、おはじきなどの具体的なものを使って、本当に9になることを確かめる。「10+20」のような、10をひと塊ととらえて計算したいときは10円硬貨を使うなど、とにかく具体的にするとよいでしょう。

また、子どもは1回「わかった!」と思っても、すぐに忘れてしまいます。10をひとかたまりととらえて計算することを勉強したら、お風呂で「1,2、3……」と数える代わりに「10、20、30…」と1000まで数えさせるなど、生活のなかに組み込んで、覚えたことを繰り返し使うようにしましょう。スラスラと出てくるようになって、初めて「身についた」といえるのです。

また、なかなか身につかない子にも、「どうしてわからないの!?」「そうじゃないでしょ!」のような、わからない・できないことを責めるような言葉は決して使ってはいけません。「まちがえるのは悪いことなんだ」と刷り込まれ、まちがえることへの恐怖心や、数字への苦手意識を抱きかねません。この時期に学習することは、今わからなくても、何年かすれば必ず身につきます。長い目で見るようにしてあげてください。

 

低学年のお子さまは……

まだまだ「じっくりタイプ」なのか「さくさくタイプ」なのか、はっきり傾向が分かれません。
内容を具体的に示して納得させてあげるとよいでしょう。身につくのが遅いと感じても、長い目で見てあげてください。

【算数タイプ チェックリスト】で、お子さまが「じっくりタイプ」または「さくさくタイプ」のどちらかにあてはまりそうだった方は、この後の「じっくりタイプ」「さくさくタイプ」の項目も参考になるはずです。また、今はどちらともいえないお子さまも、学年が上がり傾向がはっきりしてきた際には、ぜひ参考にしてください。

 

「じっくりタイプ」の場合

”腑に落ちる”感覚を大事に。不安感を払拭してあげる声かけを!

――「じっくりタイプ」には、どんな子が多いのでしょうか。

このタイプの子は慎重でまじめなので、じっくり問題に取り組み丁寧に見直し、ミスが少ないです。ノートをきれいに書き、宿題にもきちんと取り組むので、成績も優秀です。

ただし「本当にこの公式で答えが出るんだ」と納得するまで時間がかかり、納得できないまま先に進むのをいやがります。このタイプの子の慎重さの根底には、まちがうことや周囲と違うことに対する不安があります。不安が強いまま学年が上がり中学生になると、問題が抽象的になったときに、「本当にこれでいいのかな?」という不安から、思考停止に陥ってしまう心配もあります。まずは、納得して先に進める手助けをしたり、不安を取り除いたりしてあげましょう。自信がつけば、難問に出合っても思考停止に陥らず、手を動かしてみようという挑戦心が芽生えてきます。そうすれば、もともとまじめなタイプの子ですので、素直に成績が伸びていくでしょう。

 

――では、「じっくりタイプ」の子には、どのようにかかわっていくのがよいのでしょうか。

「じっくりタイプ」のお子さまには、低学年のお子さまに効果的な学習法でもご紹介した「具体的に示して納得させてあげる」ことが効果的です。納得できなくて立ち止まっているときは、どこにつまずいているのか一緒に探し、つまずきポイントがわかったら、具体的なものを使って説明したり、一緒に考えたりしましょう。たとえば、「距離」と「時間」と「速さ」の関係の公式がどうしてそうなるのかよくわかっていない様子だったら、同じ距離を自転車と徒歩で移動したときに何が違うのかを一緒に考える。「4/5÷1/10=8」という1より小さい数のわり算を授業で習ったときに、答えがもとの数より大きくなることに納得がいっていないようだったら、「4/5Lのジュースが入ったペットボトル」を用意し、「1/10Lずつコップに注いでみる」と「ジュースの入ったコップが8つできる」ことを確かめる。など、「ああ、こういうことなんだ」と腑に落ちた感覚をつかむと、次に進みやすいのです。

しかし、学年が上がるにつれて、具体例を示すことにも限界があります。そんなときは、スモールステップで学ばせることをおすすめします。まずは確実にできる問題を与え、1つできたら「正解! よくできたね!」「それでいいんだよ」と評価して安心させ、次の問題に進ませます。答えが違っていても「ここまではできたね」と、できている部分を評価しましょう。

文章題を解くときに、まちがえることが怖くて、解き始めからまったく手が動かない子もいます。そんな様子が見られたら、問題文を一緒に読みながら「これはどういうことかな?」と問いかけ、答えたら「それでいいんだよ。図にかいてごらん」と促します。たくさんの問題を解くうちに、「この解き方でいいんだ」と納得でき、徐々に自信がつくので、難しい問題にも挑戦しようという気持ちが出てくるはずです。

「じっくりタイプ」のお子さまには「きちんと理解することを積み重ねていけば、算数はできるようになるんだよ」ということを伝え、目の前の学習内容を一つひとつ理解していけばよいということに気づかせてあげることが大切です。「目の前のことをちゃんと理解しておけば、新たな学習内容を習うときに、前に学んだことが使えるんだ!」ということに気づけた子は、新しい学習内容に向かう姿勢ができてきます。新しい学習内容も自分なりに納得して理解できると、さらに自信が深まり、また次の学習内容へ進むエネルギーになります。そうして、どんどん「わかる」ようになるので、算数やのちの数学を学ぶことが楽しくなっていくでしょう。

 

――「じっくりタイプ」の子に、かけると逆効果になるような言葉はありますか。

とくに、ご自身が「さくさくタイプ」の保護者の方は、「じっくりタイプ」の子のゆっくりなペースを見守ることが苦手です。「教えたのになぜわからないんだ!」「さっき、『わかった』って言ったよね?」などと口にしがちではないでしょうか。これらの言葉は、子どもを委縮させ、算数嫌いにさせてしまう恐れのある言葉です。

保護者の方が教えたことをお子さまがうまくできない場合は、もしかしたら説明が抽象的過ぎるのかもしれません。具体的なものに置き換えるなどして、お子さまが本当に理解できているのかどうか、様子をよく見ていただきたいものです。

 

「じっくりタイプ」のお子さまには……

具体例を示したり、スモールステップで進めたりして納得させ、不安を払拭してあげましょう。自信がついてくれば、この後出合う難しい問題にも臆せず挑戦できます。「算数って楽しい!」と思えると、この後もどんどん伸びていくでしょう。

 

「さくさくタイプ」の場合

挑戦をほめてやる気を伸ばす

――「さくさくタイプ」には、どんな子が多いのでしょうか。

このタイプの子は、算数の考え方や解法をゲームの攻略法のようにとらえているので、ひと通り答えの出し方を習ったら、どんどん使ってみたがります。挑戦心が旺盛で初めて見る問題にもどんどん取り組める一方、基本を繰り返すことが苦手なので、練習問題を解かなかったり、宿題をしなかったりする様子も見られます。見直しもあまりせず、テストで途中式を書かなかったり数字を雑に書いたりすることもあるので、ケアレスミスが多い子も。一部の、非常に優秀な子を除くと、小学生のうちはテストであまりいい点数をとれません。ご自身が「じっくりタイプ」の保護者の方が、「うちの子、だいじょうぶ?」と心配になるということはよくあります。

でも、だいじょうぶです。「さくさくタイプ」の子の多くは、中学3年生~高校2年生になると落ち着いてきて、細かい点にも目が向くようになるもの。途中式をきちんと書いたり数字を丁寧に書いたりする大切さに気づくと、難しい問題にも臆さない分、数学が得意になることも多いです。目の前の点数だけをみて判断するのではなく、長い目で見てあげてください。

 

――「さくさくタイプ」の子には、どのように勉強させればよいのでしょうか。

やる気を失わせないようにすることが何より大事です。正しい答えを出すことよりも、「難しそうな問題にもチャレンジする」という姿勢を続けることが、中学以降で力を発揮するからです。「じっくりタイプ」と同様に、まずはその子ができていることをほめるようにしましょう。

たとえば、「難しい問題に挑戦したこと」自体をほめましょう。ケアレスミスがあっても、「ここまでは合っているね」「ここでミスをしなければ、正解だったね」とほめます。文章題を解くときに、最後まで解けなかったとしても、絵や図をかいて考えようとした形跡が読み取れるときは、とくにほめてあげてください。「まずは手を動かして、解決の糸口を探る」という姿勢は、中学以降の数学の、さまざまな要素が絡み合った複雑な問題でいきてきます。

そうしてやる気をほめながら、少し難しめの問題をときどき出してあげてください。がんばって取り組むはずです。難しくても頭をひねって、なんとか解こうとする過程で考える力がどんどんついていきます。解けたときは、「こんな難しい問題が解けるなんて、すごい!」と大いにほめてあげましょう。

「さくさくタイプ」の子は、文章題の問題文をきちんと読まない・読めていないことも多いでしょう。文章題を解くときに、文章のキーワードに線を引いたり、数字を○で囲ったり、読み取ったことを図にかいたりしながら丁寧に読むように指導しましょう。

 

――「さくさくタイプ」の子に、かけると逆効果になるような言葉はありますか。

「またミスしているよ、だめじゃない」は、せっかくのやる気を阻害するので禁物です。また、テストや「てんさく問題」の点数が低かったからといって、単純な計算問題や基礎問題ばかりに取り組ませるのもあまりよくないかもしれません。

 

丁寧に取り組む必要性には、「自分で気づく」ことが大事

――中学以降にだんだんとなくなっていくとはいえ、中学受験を考えている場合などは、小学生のうちからケアレスミスはできるだけ防ぎたいものです。

テストの点を上げたいと自ら考えているような子なら、採点後の答案用紙を見て、「点数を上げるにはどうしたらいいかな?」と一緒に考えるといいですね。「ケアレスミスがもったいなかった」と気づけば、「見直したほうがいい」とか「文字を丁寧に書いたほうがいい」と、行動につながります。また、狭いスペースに筆圧の弱い文字でごちゃごちゃと途中式を書いたり計算したりすると絶対にまちがえます。ノートを半分に折って「ノートの半分は計算に使うスペース」と決めてあげるのも、ケアレスミス予防のテクニックです。

「さくさくタイプ」のお子さまには……

「難しい問題にも挑戦したこと」自体をほめ、やる気を維持しましょう。中学以降の伸びに期待しながら、丁寧に取り組む必要性は「自分で気づく」のを待って! 難しい問題に頭をひねりながら取り組むことで、考える力がどんどんついていきます。

どのタイプの子も、小学生のうちに身につけておきたい力

――ここまで、タイプ別の効果的なかかわり方について教えていただきましたが、どのタイプの子にも共通していることはあるのでしょうか。

タイプにかかわらず重要なのは、「本質を理解する」ための練習を重ねることです。「本質を理解する」とは、たとえば、「習ったことを『自分の言葉で』表現できる」とか、「算数の文章題を解くときに『ここでは何が問われているのか?』をきちんとつかむことができる」ということです。

「じっくりタイプ」の子はきれいでカラフルなノートをとることが多いのですが、そこにこだわるあまり、内容をきちんと理解できていないこともままあります。そんな子には、一緒にノートを見直しながら、「これってどういうこと? 余白に自分の言葉で書いてごらん」などと声をかけるとよいでしょう。理解したつもりになっていても、意外と自分の言葉で書くのは難しいもの。Z会の教材でも、要点がまとまっているページの余白に、その子なりに自分の言葉でまとめやポイントを書き込むようにすると、「わかったつもり」を防ぎ、理解を深めることができます。

「さくさくタイプ」の子が陥りやすいのが、「表面的に解法を覚えているだけで、実は本質を理解できていない」という状態。単純な解法の暗記はいずれ限界が来るので、今のうちから「ここでは何が問われているのか」を考えさせる練習をするとよいでしょう。あまり深く考えずにどんどん解いてしまっている様子が見られたら、「そこはどうしてそうなるの?」「わたしにもわかるように教えてくれる?」などと問いかけると、一度手を止めて意味を考えるきっかけを与えられます。

「じっくりタイプ」も「さくさくタイプ」も、小学生のうちに「本質を理解する」ための練習を重ね、今までに習ったこと・これから習うことへの理解を深めていくことは、目の前の算数の力だけでなく、将来の数学の力を伸ばすことにもつながります。

「本質を理解する」ための練習は……

プロフィール

石田 浩一(いしだ・こういち)

Z会東大進学教室数学科講師。プリパス石田道場主催。開成中学・高等学校から東京大学理科1類に進学。同工学部卒業後、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。同博士課程中退後、母校である開成中学・高校で数学科専任教諭に。10年間勤務した後に独立。Z会東大進学教室で教鞭をとり、多くの生徒を超難関校合格に導くほか、大手予備校のテキスト等を執筆。また数学指導における男女差への対応の有効性を提唱し、森上教育研究所等で主に中高教員を対象にした研究会を継続的に開催するなど、男女別学教育研究をリードする。著書に『「基本のカギ」だけで解く入試数学』(学研)他がある。

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