小田先生のさんすう力UP教室

あてはめて問題を解いてみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。

 こんにちは、最近運動不足な小田です。先日、忘れ物をした生徒を追いかけて全力で走った際、足だけでなく、腰や背中にまで痛みが出て、これはさすがにまずいと思いました。これでも一応大学時代には、スポーツもやってそれなりにトレーニングをしていたはずなのですが。ちゃんと日ごろから運動しなければいけないなあ、と思いつつ、うーん、どうしよう、と先延ばしにしている今日この頃です。

 さて、今回は文章題ふうの問題です。大人の視点では、“文章題”というと決まった解き方があるように見えてしまいがちですね。しかし、そうやってパターン化してしまうことは、実は算数ができなくなる大きな原因の一つになってしまいます。まずは頭をまっさらにして、“文章でかかれたパズル”だと思って取り組んでみてください。

 それでは早速問題に行ってみましょう。

Stage31:あてはめて問題を解いてみよう

 リンゴとミカンがあわせて10個あります。リンゴの数はミカンの数よりも少ないですが、ミカンの数の半分よりは多いです。このとき、リンゴとミカンは、それぞれ何個ありますか。

 

指導のヒント

 冒頭で書いたように、これは“パズル”であって、“文章題”ではありません。

 まずはいつも通り(そしてタイトル通り)、「あてはめていく」ことが大事です。

 考えこんでしまって手が止まっているお子さんには、「あわせて10個になる組み合わせには、たとえばどういうのがある?」と聞いてみましょう。一つ例をあげられたら、「リンゴの数はミカンより少ない」という条件と「リンゴの数はミカンの数の半分より多い」という条件をそれぞれ満たしているか確認してみます(奇数個の半分、たとえば、“7個”の半分は、“3個半”くらいの説明でかまいません)。

 逆に、あてはめて解きだしたお子さんについては、大いにほめてあげてください。決して「考えなさい」と言ったりしてはいけません。

解答

リンゴ:4個、ミカン:6個

さんすう力UPのポイント

 いわゆる“文章題”は、多くの人が算数を苦手になるきっかけのうちの一つです。

 “文章題”が苦手だと思う大きな原因の一つは、やはり「どう解けばいいかわからない」からでしょう。そして、どう解けばいいかわからず、それでもいろいろと“考え”、さんざん悩んだ末にギブアップすると、これはこういうふうに解けばいいんだよ、と「解き方」が与えられてしまいます。これも、あまりいい状況ではないでしょう。多くの“文章題”は、たくさんの問題を見てきた大人からすると、すでに類型化された問題かもしれません。その「解き方」は、覚えておくと便利なものに見えます。しかし、経験の少ない子どもたちにとっては、それらは“初めて見る問題”です。そうすると、その「解き方」は自分には手の届かない魔法のようなものであり、「そんなの思いつかないよ!」となってしまうのです。

 素直な子どもたちは、もしかすると、その「解き方」を受け入れるかもしれません。しかしそうすると今度は、“文章題”を見るたびに、「これは何算の問題だろう」と考えるようになってしまいます。ストックしている解き方で対応できているうちはまだだいじょうぶかもしれませんが、いずれその“ストック”は膨大な量となり、これ以上覚えきれない、覚えていてもうろ覚えでまちがえてしまう、ということになります。そこでやはり「文章題って苦手だなあ」となってしまいます。

  低学年のうちはとくに、「算数の問題との向き合い方」を身につけてほしい時期です。つまり、文章題だろうと何だろうと、「自分のできることをいろいろとやってみて、正解(条件に合う答え)を探りあてる」という姿勢です。2017.3.23更新の「やってみる力を育てよう」以来、まずは「やってみる」ことが大事、と書き続けてきましたが、それは文章題でも同じなのです。

 今回の問題は、足し算ができる子であれば「合わせて10になる2数の組」をいくつか考えることはできるでしょう。それらをそれぞれリンゴ・ミカンの数と考え、大小関係を考えることも難しくないはずです。“半分”を考えるところで少し引っかかる子もいるかもしれませんが(「ヒント」で示したように、奇数個の半分は「~個半」でかまいません)、そこがクリアできれば、条件と照らし合わせて当てはまっているかどうかを確認することができます。

 たとえば、リンゴ1個、ミカン9個としてみた場合はどうでしょう。リンゴのほうがミカンより少ない、という条件は満たしていますが、半分より多い、という条件は満たしていません。順に見ていくと、リンゴ3個、ミカン7個でもまだ半分より少なく、リンゴ4個、ミカン6個で条件を満たします。リンゴ5個、ミカン5個だと同じ数になってしまい、再び条件を満たさなくなるので、答えは「リンゴ4個、ミカン6個」とわかるのです。

 こういった過程を踏んで問題を解いた場合、子どもは「自分の力で解く」ことを学びます。それを繰り返していくうちに、「算数の問題は、やっていけばできる」というイメージをもつでしょう。そうすると、その後いろいろと学習していく「解き方」は、あくまで“道具の一つ”という認識になっていきます。そうした基盤のうえに、さまざまな「算数的道具」を置いていってあげると、それらを「どう使いこなしていくか」という発想をもつことができ、算数が得意になっていくのです。

もっと問題

(1)ミカンとリンゴがあわせて15個あります。ミカンの数がリンゴの数の2倍より多く、3倍より少ないとき、それぞれ何個ありますか。

(2)鮭おにぎりと梅干おにぎりがあわせて20個あります。鮭おにぎりの数は梅干おにぎりの数の半分より多いですが、梅干おにぎりよりも5個以上少ないです。このとき、それぞれのおにぎりの数は何個ですか。

(3)太郎くん、次郎くん、三郎くんの3人兄弟がいます。太郎くんがいちばん年上で、三郎くんがいちばん年下です。3人の年齢を足すと、ちょうど10になります。次郎くんが三郎くんの2歳上のとき、3人の年齢はそれぞれ何歳でしょう。(三郎くんは1歳以上とします。)

    • 解答

(1) ミカン:11個、リンゴ:4個

(2) 鮭おにぎり:7個、梅干おにぎり:13個

(3) 太郎くん:6歳、次郎くん:3歳、三郎くん:1歳

 


 いかがでしょうか。全然関係ない話ですが、先日、「11+12」が突然できなくなる日がありました。とある授業で生徒にパズルを解いてもらっていたのですが、その際、生徒に「この問題解けない」と言われたのです。手元の解答を確認すると、ヒントとして与えられている数値が、「11+12」の結果なのに「36」となっていたのでした。ここで訂正できればまだよかったのですが、なぜか「ごめん、そこ33で」と言ってしまった結果、またしばらくして「やっぱりこの問題解けないんですけど」と言われてしまいました。それはそうですよね。いろんな親御さんから「うちの子の計算ミス、どうしましょう」というご相談をよく受けるのですが、ミスは誰でもするものだ、と割り切って、むしろ「ドンマイ!」と励ましてあげるのが、いちばんいいんじゃないのかなあ、と(けっこう本気で)思っています。

 それではまた来月!

文:小田・敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

関連リンク

おすすめ記事

数のパズルを楽しもう数のパズルを楽しもう

小田先生のさんすう力UP教室

数のパズルを楽しもう

同じ形に分けてみよう同じ形に分けてみよう

小田先生のさんすう力UP教室

同じ形に分けてみよう

数字の構造をとらえよう数字の構造をとらえよう

小田先生のさんすう力UP教室

数字の構造をとらえよう


Back to TOP

Back to
TOP