親と子の本棚

本は宝、本は宇宙

子どもには本好きになってほしいけれど、どう選べばよいかわからない……。そんなときはこちらの「本棚」を参考にされてみてはいかがでしょうか。

本のふぶき、言葉のかけら

『この本をかくして』より

「ばくだんが図書館にあたって、まちはもえてしまった。てきの飛行機がおとしたばくだんだった。」――マーガレット・ワイルド文、フレヤ・ブラックウッド絵の絵本『この本をかくして』は、こんなふうにはじまる。

図書館がばくはつしたとき、本はみんなこっぱみじんになった。ページのかけらがひらひらと空にまいあがって、ふぶきのようだった。人びとは、おもわずたちどまり、手をのばして言葉のかけらをつかみとろうとした。

こなごなにならなかった本が1冊だけあった。ピーターのおとうさんが図書館から借りていた赤い表紙の本がのこったのだ。おとうさんが何度も大事に読んでいた本だ。
やがて、敵の軍隊が町にやってきて、みんなを追い出す。ピーターのおとうさんは、鉄の箱に赤い本を入れて持ち出した。おとうさんは、「うちの宝もの」だという本を厚い布につつみながら、ピーターにいう。――「ぼくらにつながる、むかしの人たちの話がここにかいてある。おばあさんのおばあさんのこと、おじいさんのおじいさんのまえのことまでわかるんだ。ぼくらがどこからきたか、それは金や銀より、もちろん宝石よりもだいじだ」
町から追い出された、みんなは、歩きつづける。つめたい風がふき、雨がふるなかを何週間も。体がほそくなった、おとうさんは、道ばたで息をひきとる。そして、亡くなる前に、鉄の箱の宝ものをピーターに託したのだ。
苦しい旅のなかでも、ピーターは、鉄の箱を持ちつづけたけれど、山を越える前に、村はずれの大きなシナノキの根もとに、それを埋める。――「だれもここにばくだんをおとしはしないだろう」

ブックポストは夜の図書館の入口

ピーターは、山を越え、港にたどり着く。船で海も越え、新しい国で新しい言葉をおぼえ、戦争が終わるのを待つ。本をこなごなにした戦争がようやく終わると、ピーターは、あの大きなシナノキのところに行って、宝ものを掘り出す。おとうさんの本は、復興した故郷の町の新しい図書館に納められた。
ピーターがたずねた新しい図書館の棚には、新しい本がならんでいた。アニー・シルヴェストロ文、タチアナ・マイ=ウィス絵の絵本『としょかんへ ぴょん!ぴょん!ぴょん!』にも、図書館が出てくる。
うさぎが本が好きになったのは、図書館の外で、赤いめがねをかけた、おねえさんが子どもたちに本を読んでいるのを、木のかげで聞いたときからだ。お話を聞いていると、高い山にも登れたし、船の船長にも王様にもなれた。
ところが、夏が終わると、お話の時間は、図書館のなかになってしまった。動物は図書館には入れないけれど、うさぎは、お話が聞けないのが、がまんできない。毎晩、本のことばかり考えて、ねむれない。「こうしちゃいられない。」――ある夜、うさぎは、図書館に行ってみるが、かぎがかかっていて入れない。

……ブックポスト!
としょかんが しまっているときに、ほんをかえすところです。
ずいぶん たかいところにありますが、うさぎは とびはねるのが とくいですから、なんてことありません。
びょーん!
うさぎは、とってに しがみつき、あいた すきまに からだを ねじこみました。
どすん! と、なかに おちると……

そこには、たくさんの本棚いっぱいの本があった。

にじのかけらで

『この本をかくして』のおとうさんは、ピーターに、本には私たちの大切な歴史が詰まっていると教えたけれど、リニエルス『エンリケタ、えほんをつくる』のエンリケタは、本棚から抜き出した1冊を木かげで読みながら、「ほんは もちはこべる うちゅうだね」という。
そのエンリケタがママから色鉛筆をもらう。「いろえんぴつの セットって、にじのかけら みたいだね」といった彼女は、それで絵本をつくりはじめる。『3つのあたまと2つのぼうしのモンスター』、「さく エンリケタ」だ。エンリケタは、「この だいめい どうおもう?」とネコにたずね、ネコは、「うまい!」とこたえる。エンリケタは、絵本をどんどん作っていくが、1ページ描くごとに、ひとりごとをいったり、ネコと話したりする。それがおもしろい。

今月ご紹介した本

『この本をかくして』
マーガレット・ワイルド文、フレヤ・ブラックウッド絵、アーサー・ビナード訳
岩崎書店、2017年
原著は、2013年にオーストラリアで刊行された。文のワイルドは南アフリカ生まれ、絵のブラックウッドはスコットランド生まれだが、それぞれオーストラリアに移り住む。訳者のアーサー・ビナードは、アメリカ生まれだが、現在は日本に住み、日本語でも書く詩人。

『としょかんへ ぴょん!ぴょん!ぴょん!』
アニー・シルヴェストロ文、タチアナ・マイ=ウィス絵、福本友美子訳
絵本塾出版、2017年
うさぎは、森の仲間といっしょに夜の図書館へ入り込むようになる。りすはサーカスの話の本を集め、あらいぐまは、ならずものと追いはぎの本、かえるは昔話……。やがて、入口のかぎを開ける音がして……。

『エンリケタ、えほんをつくる』
リニエルス作、宇野和美訳
ほるぷ出版、2017年
色鉛筆で絵本を作っていくエンリケタの絵が力強くカラフルで、すばらしい。作者は、アルゼンチンで大人気のマンガ家だという。

プロフィール

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)

1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学文学部教授。大阪国際児童文学振興財団理事長。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

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