ことばのおしり、ことばのあたま : さぽナビ | Z会

親と子の本棚

ことばのおしり、ことばのあたま

子どもには本好きになってほしいけれど、どう選べばよいかわからない……。そんなときはこちらの「本棚」を参考にされてみてはいかがでしょうか。

「る」の対策

『しりとりボクシング』より

新井けいこ『しりとりボクシング』の「ぼく」(恭平)たちの学年行事は、保護者が主催して、1年に一度行われる。ことしは、「しりとり大会」だという。――「しりとりなんて、おおぜいでやって楽しいのかな。」いつもは、二人三脚とか玉入れとか、親子で体を動かすものが多い。去年は、ドッジボールだった。
「しりとり大会」の一回戦では、6人ずつのグループになって、しりとりをしていく。係のお母さんがストップウォッチをもっていて、10秒の制限時間内にことばが出て来ないとアウト!になる。6人のうち、ふたりが二回戦に進む。
これは、「しりとり大会」で優勝をめざす「ぼく」と、「ぼく」の友だちで、クラスでは翼たちにバカにされている健太の「しりとり大作戦」(トレーニング)の物語だ。
「りんご」―「ゴリラ」―「ラッパ」―「パイナップル」―「ルビー」―「ビール」。しりとりは、いつでも「る」で行き詰まる。まず必要なのは、「る」の対策だ。「ぼく」は、辞書の「る」のページをひらく。「類義語」「類似」「ルーツ」……「留守」は使えるが、「留守番」はだめだ。「ん」で終わる。すると、健太が急に言い出す。――「ルリクワガタ」。生き物が大好きな健太は、図書室で動物や昆虫の図鑑ばかり見ているのだ。――「健太、すごいじゃん! その手があったのか」
「しりとり大会」で「ぼく」のライバルになりそうなのは、同じクラスの小春や、1組の 勇人だ。「ぼく」は考える。

【る】で守る。
つまり、【る】のつく言葉のひき出しをたくさん作ること。
それにくわえて、【る】で攻める、というのもあるんじゃないか。
最後に【る】のつく言葉で、相手を攻める。
【る】の攻撃だ。
【る】は防御にもなるし、攻撃にもなる。

「る」で終わることばをつぎつぎ繰り出せば、相手は、すぐにアウトになる。お父さんは、「スポーツはほとんどが、攻撃と防御のせめぎあいだよな。ボクシングなんか、こうして……」とポーズをとる。

「あ」から「わ」まで

「あめりかうまれの/ありのありすさんが/あるあきの/あかるいあめのあさ……」――松岡享子・長新太の詩の絵本『それ ほんとう?』の「あ」のはじまりだ。しりとりのように、ことばの「おしり」を取るのではなくて、ことばの「あたま」をそろえていく。
「あ」は3ページつづくのだけれど、おしまいは、こうだ。――「あせをかきかき/あぱーとにかえり/あすぴりんをのむやら/あかちんをぬるやらしたけれど/あとあとまで/あとがいたんで/あわれな/ありさまだったって。 それ ほんとう?」
ページをめくると、つぎは「い」で、「いっこくもののいかが/いどばたのいしのうえで……」。「う」「え」「お」「か」……「わ」までつづく。

ことばの仕組み

『しりとりボクシング』の「ぼく」は、一生懸命辞書を読み、だんだん、ことばの世界に入り込んでいく。
安部朋世・宮川健郎文、田中六大絵『えほん こどもにほんご学』全5冊は、ことばの世界がもつ仕組みを語る。たとえば、3冊めは、『敬語のえほん 「ロックだぜ! あっ、ロックですよ」』。本文がはじまる前のページ「ぴったりの言い方、しってるかな?」には、こんなことが書かれている。

つぎの二つの文は、どちらも本を借りたいことを相手に伝える文ですが、言い方が違っています。
① この本、貸して?
② この本、貸してください。

ページのなかには挿絵が2枚あって、1枚では、男の子が友だちに「この本、貸して?」といって、友だちが「いいよ」と答えている。もう1枚では、同じ男の子が図書室の先生に「この本、貸してください」といって、先生が「いいですよ 貸し出しの手続きをしましょう」と答えている。
このページのおしまいには、こうある。――「この本では、相手や場面によって、どのように言い方を変えているかについて、見ていきます。」絵本は、ロックのライブをひらく、ゆうくんの物語だ。

今月ご紹介した本

『しりとりボクシング』
新井けいこ 作、はせがわ はっち 絵
小峰書店、2017年
「ぼく」は、健太に辞書のことをこういう。――「知らない言葉を新しくおぼえるというより、知っているのにめったに使わない言葉ってあるだろ。そういう言葉をすぐにひきだせるようにするんだ。とにかく、【あ】から読んでいこう」。「ぼく」は、辞書を徹底的に見直して、「る」だけでなくて、「ら」「り」「れ」「ろ」や、「ぬ」「ず」の対策もする。

『それ ほんとう?』
松岡享子 ぶん、長 新太 え
福音館書店、2010年
おしまいの「わ」は、「わらいだけをたべて/わらいじょうごになったら……」。どの音からはじまっても、最後には「それ ほんとう?」といわれるような、ふしぎな世界が作られる。
1973年に刊行された本の新装版。

えほん こどもにほんご学 3『敬語のえほん「ロックだぜ! あっ、ロックですよ」』
安部朋世 宮川健郎・文、田中六大・絵
岩崎書店、2018年
シリーズのほかの4冊は以下のとおり。『主語・述語のえほん 「ぼくは とりだよ!」』、『副助詞のえほん 「ぼくにも かえるよ!」』、『だれが主役かのえほん 「どっちが どっち?」』、『活用形のえほん 「ことばのきがえ」』。

プロフィール

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)

1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学文学部教授。大阪国際児童文学振興財団理事長。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

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