小田先生のさんすうお悩み相談室(3~6年生)

「割合」とはなにか

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? 保護者の皆さまから寄せられるさまざまなお悩みに、小田先生がするどくかつ丁寧にお答えしていきます。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

  こんにちは、最近はそうめんばかり食べている小田です。なんだか最近とくに、わたしのお腹周りに注意を向ける生徒が増えてきた気がします。子どもは容赦がないので、「先生太ってるー!」と気軽に言ってくるのです。一生懸命お腹をへこませて「いや、そんなことないし」とうそぶくと、そのあとずっとわたしのお腹を見ていたりもします。少し気が抜けてへこませていたのが元に戻ると、「太ったー!」とうれしそうに指摘してくれます。この夏、少しくらい痩せられるといいですよね。別に、だからそうめんばかり食べている、ということでもありませんが。
 さて、今回は“割合”についてのお悩みです。この“割合”も多くの人がつまずくところですね。この“割合”のカベを「ひとつのカベ」として捉えてしまうととても高く感じてしまいますので、そのカベを構成している要素をしっかり分析し、一つひとつ順番に越えていきましょう。
 それでは早速行ってみましょう。

お悩み6:「割合」とはなにか

 割合の問題で、困っています。問題文を読んで、自分で式を立てるのが苦手です。何を何で割るのか、それとも掛けるのかがピンとこないようです。どうしたらいいでしょうか。

(小5保護者)

さんすう力UPのポイント

割合をシンプルに捉えてみよう

 冒頭でも書きましたが、「割合」の分野は、かなり難しい範囲です。割合の問題をスムーズに解けるようにするためには、越えなければいけないハードルが、実はたくさんあるからです。
 まず1つ目は「割合」に対するイメージの問題でしょう。
 「割合」というと、「元にする量を1としたときの、比べる量を表す数」と習うことが多いかもしれません。これは決して間違いではないのですが、しかし、初めて割合を学習する人にとっては、少し理解が難しい表現でもあるでしょう。多くの人が、高いカベを感じてしまうのも、無理はありません。
 割合に初めて触れるとき、最初はもっとシンプルに捉えてみましょう。ひとまずは、「割合とは“何倍か”を考えることだ」と捉えてしまうのです。たとえば、「6は2の何倍ですか」と聞かれたら、「3倍だ」と答えるのは、それほど難しくありませんね。この「3倍」というのが、“割合”なのです。
 割合の難しさは、「見えない数を考える」ところにあります。下の図を見てください。「2個のリンゴ」と「6個のリンゴ」は目に見えますが、「3倍」の“3”というのは、直接は見えていません。

 この、“見えない3”を見出す“目”を身につける、というのが、割合を学んでいくうえでの最初のハードルになるでしょう。「元にする量を1とする」という考え方は、実は実際に目に見える数である「2」と「6」以外に、「基準としての“2”」という数を想定しています。そして、「2」が“2”の1倍、「6」が“2”の3倍、というのが、「元にする量を1とする」割合の捉え方です。

 もちろんこの理解もまちがいではなく、むしろ、それより後に学習する「比」へとつなげていくには重要な捉え方ではあるのですが、見ての通り「見えない数」が多すぎて、かなりハードルが上がってしまいます。まずは「見えない数を見る」ということに慣れるため、「割合とは“何倍か”を考えることである」とシンプルに捉えるのがいいでしょう。
 「百分率(%)」や「歩合(~割~歩)」も、基本的には同じです。「元にする量を100(歩合のときは10)」とする、と考えるのが難しい場合、まずはシンプルに「1%は0.01倍のこと」「1割は0.1倍のこと」と考えるのがいいでしょう。

分数・小数の計算に慣れよう

 「割合とは“何倍か”を考えることだ」と捉えて、「割合」の入り口にはなんとか入れたとします。次にハードルになるのは、やはり分数・小数のカベでしょう。たとえば、「6は2の何倍ですか」と聞かれると「3倍」とスムーズに答えられたとしても、「2は6の何倍ですか」と聞かれると途端にわからなくなる、という人は多いです。「6は2の何倍か」と考えるときは「にさんがろく(2×3=6)」というのがすぐに思い浮かびますが、逆の計算は「九九」にはないからです。

 結論から言うと、「2は6の何倍か」に対する答えは、「2÷6」で1/3です。「6は2の何倍か」と聞かれたときにどうやっているかを考えると、「2×□=6」と捉えてその逆算、つまり、「6÷2」をして「3」という答えを出しているのですから、「2は6の何倍か」と聞かれた場合は同じように「6×□=2」と考えて、「2÷6」をすればいい、ということになります。

 ここでさらっと“同じように”と言いましたが、実際に本当にスムーズに“同じように”考えるのは、なかなか難しいでしょう。それはひとえに、「答えが整数ではなく分数になるから」に他なりません。割合の問題を解いていると、「割り切れない割り算」が頻繁に出てきます。ある意味ではそのためにその前の段階で「分数・小数」を習っているのですが、分数・小数は難しい分数編小数編でもお伝えしたように、「分数・小数」はとても難しいです。習ったからといって、すぐにその「分数・小数」の世界を自由に動き回れるわけではありません。不慣れな「分数・小数」の計算がたくさん出てくる、というのも、「割合」が難しく感じる原因のひとつなのです。その意味では、分数・小数のところを再度復習する、というのも、「割合」を克服するひとつの手段となるでしょう(とくに、分数の「割り算の答え」としての側面が十分に理解できていれば、割合の計算も随分スムーズになるはずです)。

国語力を高めよう

 割合をシンプルなイメージで捉え、分数・小数の計算にも慣れたら、あとは日本語の読み取りの問題でしょう。これは割合の問題に限らず、算数の文章題全般に言えることです。新井紀子さんが書かれた『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』という本に、「(中高生の)3人に1人が、簡単な文章が読めない」という指摘があります。「係り受け」を理解せず出てきた単語だけを“検索”して読むため、文章を書かれた意図通りに読むことができない、という子が意外に多いのです。お悩みにもありますが、「何を何で割るかわからない」状態というのは、多くの場合、この「(問題の)文章が読めていない」というところに原因があります。そこまでいくと国語の問題になってしまいますが、そういった場合、まずは「てにをは」まで含めて、問題文を正確に音読する練習から始めたほうがいいでしょう。実際、音読させてみると「単語」や「数値」以外の部分を読み間違える子は多いです。音読していても間違う、ということは、黙読しているときには(無意識にせよ)読み飛ばしている、ということです。まずはその姿勢から改めていく必要があるでしょう。
 細部まで正確に読めるようになったら、次は「どういう数値について考えているのか」を読み取る練習が必要です。たとえば、次のような問題があったとします。

A、B2つの棒があります。Aの棒は120cmで、Bの棒は150cmです。Bの棒の長さに対するAの棒の長さの割合はいくらでしょう。

 この問題で出てきている“数値”は「Aの棒の長さ」「Bの棒の長さ」「その間の関係(つまり割合)」の3種類ですね。ここで注意しないといけないのは、「何の値を考えているか」に注目するのであって、実際に出てきている“数字”を探すのではない、ということです(冒頭の「2つ」などは、確かに数字で書かれてはいますが、今回の問題で重要な“数値”ではありませんよね)。
 問題に出てくる“数値”が何か、を把握したら、その関係を整理します。文章題などを解くときに、よく「図をかけ」と言う人がいますが、本来はここまでできてようやく「図をかく」ことができるのです。今回の問題の数値関係を図にすると、次のような感じでしょうか。

 問題文の最後、「Bの棒の長さに対するAの棒の長さの割合はいくらでしょう。」という文の主語は「A(の棒の長さ)の割合」なので、「A“が”Bの何倍か」を知りたい、と解釈できます(このあたりが、結局「係り受け」を正確に読み取れるかどうか、ということでしょう)。式にすれば「150×□=120」となるので、「120÷150」を計算して、4/5が答えになります(小数なら0.8、パーセントなら80%、歩合なら8割です)。
 問題文を正確に読み、出てくる数値を把握し、その関係を整理する。こう書くと簡単に見えますが、それぞれの段階での練習は、やはり必要なのです。

 いずれにしても、「割合」の問題をスムーズに解けるようになるためには、そこまでにいろんなハードルが存在します。個人的な感想としては、これだけ難しければ、「割合を習ってもすぐにスムーズには解けない」というのは、言ってみれば「あたりまえだ」という他ありません。その意味では、割合がすぐに理解できなかったとしても別に苦手意識をもつ必要はありません。いきなり「割合」ができるようになることを目指すのではなく、一つひとつのハードルを丁寧に乗り越えていくことが、遠回りに見えて、実はいちばんの近道なのです。


  いかがでしょうか。

 わたしの運営している数理学習研究所では、「個々人の算数・数学学習」を大事にし、それをサポートするのがこちらの役割、と考えております。その一環として、長期休暇中の授業は個々の希望に応じる形にしており、そのため、夏休みはお休みになる子もいれば、逆に夏休みの間だけくる子もいます。とくにこの夏は、久しぶりに会う子が多かったのですが、子どもって少し会わないだけでも急に成長しますよね。算数・数学の学習が進んでいるかどうかはさておいて、背が伸びたり言動が大人びたりしているだけでも、とてもうれしくなってしまいます。いろんな子の成長を手放しで楽しめる、というのも、この仕事のひとつの役得かもしれません。夏休み明けに久しぶりに会う子たちの成長も、楽しみにしています。

 それではまた来月!

保護者の皆さまから算数のお悩みを募集します!

お子さまの算数の学習に関して、悩んでいることやお困りのことはありませんか。もしございましたら投稿フォームからお送りください。どのような内容でも大歓迎です!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

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