子どもと楽しむ料理の科学
夏は特に要注意! 細菌性食中毒を予防しよう
2020.5.28
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「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。
食中毒を防ぐには
つけない・増やさない・やっつける
身近な細菌性食中毒の多くは、食品に付着した菌が増殖し、菌そのものや菌の作った毒素を多く含んだ食材を食べてしまうことで起こります。したがって、そもそも菌を「つけない」ことや、ついてしまった菌を「増やさない」ことが大切です。また、生産や流通の過程で菌がついてしまうことはある程度避けられないので、調理によって菌を「やっつける」ことも必要です。この3つのポイントについて順番に説明していきましょう。
まずは菌を「つけない」こと。目には見えませんが私たちの手には意外とたくさんの菌がついています。調理前、鼻やスマートフォンなどを触った後、トイレに行った後は必ず手を洗いましょう。
また、⾷品から⾷品に菌が移らないように注意することも必要です。腸管出血性大腸菌(O-157など)やカンピロバクターは鶏、豚、牛など動物の腸にすんでいて、と畜処理の過程で肉の表面に付着することがあります。買ってきた肉には「菌がついているものだ」と考えましょう。魚にも腸炎ビブリオなどの菌がついているおそれがあります。肉や魚についた菌は煮たり焼いたりすることで死滅しますが、誤って生野菜などの加熱しないでそのまま⾷べる⾷材に付着させてしまうと、菌を殺さないまま食卓に出してしまうことになります。店で肉や魚を買ったらパックをポリ袋に包んで持ち帰り、冷蔵庫でも他の⾷材とは分けて保存するとよいでしょう。調理時にも、肉・魚用のまな板と野菜用のまな板とを分ける、野菜を切ってから肉・魚を切る、というように道具やタイミングを分けて調理すると安心です。
野菜など他の食材にドリップが付着しないよう、肉や魚のパックはポリ袋に包んで持ち帰り、冷蔵庫でも入れる場所を分けておくと良いでしょう。
肉・魚用のまな板と野菜用のまな板とを分けると安心です。
NG例。サラダ用の野菜など生で食べる食品のそばで肉や魚を扱うと、誤って触れてしまったりドリップが⾶んでしまったりすることがあります。近くに置かないようにしましょう。
二つ目に「増やさない」こと。食中毒の原因となる菌の多くは低温では増えにくく、30℃台でよく増えます。肉や魚は買い物後、保冷剤などと一緒に持ち帰り、なるべく早く冷蔵庫に入れるなど、菌が増えやすい状態をなるべく短くするようにしましょう。調理後の料理も、すぐに食べない場合は(粗熱が取れてから)冷蔵庫にしまうなど、室温での放置は避けた方がよいです。また、冷蔵庫にものを詰め込みすぎると、十分に冷えないことがあるので、適量を心がけてください。すぐに食べない食品は、バットなどに浅く広げて手早く冷ますとよいでしょう。
とろみのある煮込み料理は冷めにくく、たくさん作って鍋に入れたままにしておくと菌が繁殖しやすい温度が長く維持されてしまいます。すぐに食べない場合は、浅いバットなどに広げて手早く冷ましましょう。
最後は「やっつける」こと。食中毒菌の多くは十分な加熱で死滅します。肉や魚は必ずしっかり火を通しましょう。また、残り物を翌⽇⾷べる場合などは、調理後に増えた菌を「やっつける」ために再度加熱するようにしましょう(ただし、本来は夏場は作り置きをしない⽅がよいです)。
プラス知識! おにぎりも気をつけて!
6/25(木)更新の次回では、「ひと工夫で料理がもっと彩りよく 色素の科学」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!
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プロフィール
科学する料理研究家、料理・科学ライター
平松 サリー(ひらまつ・さりー)
科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。