親と子の本棚

アルバムを広げて

子どもには本好きになってほしいけれど、どう選べばよいかわからない……。そんなときはこちらの「本棚」を参考にされてみてはいかがでしょうか。

「うん、しってる」

『わたし、パリにいったの』より

「パリに いったときの しゃしん、みよう?」「うん、みよう、みよう!」――たかどの ほうこ『わたし、パリに いったの』で、おねえちゃんのはなちゃんが少し背伸びをして、棚からアルバムを取り出す。妹のめめちゃんとふたりで大きな緑色の表紙を広げる。――「はなちゃんと めめちゃんは、このアルバムを みるのが だいすき。もう なんかい みたか わかりません。/でも ちっとも あきません。」
「このなみきみち、すてきでしょう?」「すてき」――写真には、緑の並木道が写っていて、おかあさんと、小さかった、はなちゃんが立っている。めめちゃんは、はなちゃんがだっこしている、ぬいぐるみを指差して、「くーちゃん、くるしがってるね」という。はなちゃんは、「わたし、ちいさかったから ぎゅって しちゃったの」というと、「うん、しってる。くーちゃん、パリうまれなんだよね。」とめめちゃん。ぬいぐるみのくーちゃんは、いまでも、ふたりの仲良しだ。
めめちゃんは、何でも知っている。つぎの写真のポールさんの庭でのお昼ごはんのとき、残念なことに、はなちゃんが落としてしまったアイスクリームがいちご味だったことも。

「めめちゃん、わたしが おしえてあげたこと、ぜんぶ おぼえちゃったね」
と いって、わらいました。
 すると、めめちゃんが いいました。
「ううん、ちがうよ。わたしも いったから しってるんだよ」
「なに いってんの、めめちゃん、まだ うまれてないじゃない!」
と、はなちゃんが あきれた かおを しました。
 でも めめちゃんは、きっぱり いいました。
「わたし、おかあさんの おなかに ちゃんと いたもの」

アルバムの中のおかあさんは、おなかが大きいのだ。

10歳の少女

偕成社の『世界のともだち』は、アルバムのような写真絵本のシリーズだ。第10巻は、MIKA POSAの写真と文による『フランス おしゃれ大好き! プリュンヌ』。この巻の主人公、プリュンヌは、パリ郊外、セーヌ・エ・マルヌ県に住む10歳の少女である。マルヌ川が流れ、緑豊かな町で暮らすプリュンヌのようすが、たくさんの写真で紹介されていく。彼女の家族、商店街へのおつかいと食事、学校と友だち……。
プリュンヌの町からパリまでは列車で20~30分だ。本のおしまいの章は「パリとプリュンヌ」、秋のある日、家族は、おかあさんの友だちをたずねて、パリにやってきた。プリュンヌは、二輪のキックボードでパリの街をめぐる。のみの市では、好きなマンガを見つけた。最後の見開きは、エッフェル塔の下の広場をさっそうと歩くプリュンヌだ。
いろいろな写真が、『わたし、パリに いったの』のアルバムの景色とも重なってくる。

しっかりが大好き

『わたし、パリに いったの』のめめちゃんは、「わたし、おかあさんの おへそのあなから みてたんだもの」と、まだ、おかあさんと一体だったころのことを語る。
「世界中どこでも、赤ちゃんは、しっかりとだっこされるのが大好きです。」――エメリー&ドゥルガ・バーナード『世界のだっことおんぶの絵本』のはじめの見開きの文は、こう書き出される。絵には、赤ちゃんをだっこしようとしている手が描かれている。

そして世界中どこでも、お父さんとお母さんは、しごとやたのしみのために、両手をあけておかなければなりません。
めんどうをみてくれる人に、だきあげてつれて行ってもらうことで、小さな子どもたちの一日は始まるのです。
世界の人びとは、どんなふうに赤ちゃんをだっこするのでしょう?
赤ちゃんたちは、どんなふうにお母さんにおんぶされるのでしょう?

ページをめくった、つぎの見開きには、グァテマラの山あいの寒い夜明けが描かれている。生まれたばかりの赤ちゃんは、おかあさんの体にまきつけられた、やわらかい布の中にいて、おかあさんは、とうもろこしの粉をこねて、平らにのばす。丸い焼きパンを作るのだ。
そのつぎの見開きは、朝日がのぼったばかりのバリ島。女性たちは、肩からかけたスリング(吊りひも)に赤ちゃんを入れて、だっこし、頭の上のかごには、ほした魚やパンノキの実やバナナを詰め込んでいる。女性たちは市場へ出かけ、赤ちゃんたちも、だっこされたまま、市場への小道をすすむ。

今月ご紹介した本

『わたし、パリに いったの』
たかどの ほうこ
のら書店、2021年
この作品は、2021年12月、第59回野間児童文芸賞を受賞した。作者は、受賞のことばで「楽しかった話を繰り返し聞くと、自分も見ていたような気になり、その情景は既視感さえ帯びてくるものです。」と述べている。

世界のともだち10
『フランス おしゃれ大好き! プリュンヌ』

写真・文 MIKA POSA
偕成社、2014年
『世界のともだち』は全36巻。第1巻はルーマニア、最終巻はウズベキスタンだ。

『世界のだっことおんぶの絵本 だっこされて育つ赤ちゃんの一日』
エメリー&ドゥルガ・バーナード 文・絵、仁志田博司/園田正世 監訳
メディカ出版、2006年
サハラ砂漠でテントを片付けてラクダの背中に積み上げる、おねえさんの背中に、カナダの北の端の凍りついた入り江で氷に穴をあけて釣りをする、おかあさんの背中に、赤ちゃんがおんぶされている。
巻末の「この本に登場する人びと」には、絵本に出てくる世界各地の人たちの生活が紹介されている。

プロフィール

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)

1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事長。日本児童文学学会会長。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

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