子どもと楽しむ料理の科学

とろけるおいしさ!手作り生キャラメルに挑戦

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

生キャラメルの基本のレシピと、大人のほろにがレシピ

濃厚な味わいがおいしい生キャラメルは、生クリームをたっぷり使って作るキャラメルの一種です。キャラメルとは、牛乳や生クリームなどの乳製品に、砂糖や水飴などを加えて煮詰め冷やし固めたもの。生キャラメルは通常のキャラメルに比べて、生クリームやバターなど脂肪分が多い材料をふんだんに使用するため、やわらかく仕上がり、口の中でなめらかにとろける食感が魅力です。比較的シンプルな材料と道具でできるので、家でも手作りしやすいお菓子です。

キャラメルや生キャラメルの甘味づけには、砂糖だけでなく水飴を加えたり、蜂蜜、みりんなどが使われたりすることもあります。これらの違いは何でしょうか? また、プリンに使われるカラメルとお菓子のキャラメル、名前は似ていますが何が違うのでしょうか? そんなキャラメルのはてなについて考えながら、手作りの生キャラメルに挑戦しましょう。

基本の生キャラメル

材料(作りやすい分量)
グラニュー糖 100g
水飴 30g
牛乳 100ml
生クリーム 200ml
バター(有塩・無塩どちらでもOK) 20g

※上記分量で12.5×15.5cm(手札判)のバット1枚分の生キャラメルになります。1個あたりの大きさにもよりますが、24粒程度できます。
※上記の分量で作る場合は、直径18cm前後の鍋がおすすめです。液に粘り気があるので、容量に余裕のある鍋を使わないと吹きこぼれやすくなります。また、十分に色や香りをつけるためにはじっくりと加熱する必要がありますが、鍋が大きすぎるとあっという間に煮詰まってしまいます。半分の分量で作る場合は直径14cm程度のミルクパンがおすすめです。

1.材料を煮詰める

バター以外の材料を鍋に入れて火にかける。沸騰したらやさしく沸騰が続く程度に火加減を調節し、ときどき混ぜながら煮詰めていく。

2.型の準備

バットにクッキングシートを敷いておく。2枚のシートを、バットの横幅と縦幅にそれぞれ合わせてカットし、十字に配置すると敷きやすい。

3.バターを加える

20〜30分程度加熱すると、薄く色がついてねっとりとしてくる。ここでバターを加えてさらに煮詰める。煮詰まってくると吹きこぼれたり焦げ付いたりしやすいのでこまめに混ぜる。

ポイント

乳製品に糖を加えて加熱すると、徐々に色づき、香ばしい風味がつきます。これはメイラード反応によるものです。アミノ酸やタンパク質と、糖が結びついて複雑な反応をし、メラノイジンという褐色の物質と、様々な香りの成分を生み出します。パンや肉を焼いたときの風味や、焼き菓子の香りなどもこの反応によるものです。

一方、液が煮詰まってくると粘り気が増して対流しにくくなるため、こまめに混ぜないと鍋に接する部分の温度が高くなりすぎてしまいます。これによって生じる「焦げ」はメイラード反応とは別物なので注意しましょう。なめらかで香りの良い生キャラメルを作るには、焦がさないよう、じっくり丁寧に加熱することが重要です。

4.固める

十分に煮詰まって、液状からもったりとした飴状になったら火から下ろす。ヘラの跡がすぐに消えずに残り、混ぜたときに鍋の底が数秒見えるくらい。料理用の温度計がある場合は、115℃が目安。

火から下ろし、熱いうちに2の型に流し入れる。粗熱が取れたら、冷蔵庫でよく冷やす。

※ちょうどいい大きさのバットがない場合は、大きめのバットを使って薄く作り、粗熱が取れたところで二つに折りたたむ。めん棒などで軽く押し延ばして接着し、冷蔵庫で冷やし固める。

5.切る

クッキングシートを剥がして、包丁で切り分ける。キッチンペーパーにサラダ油をしみこませて、包丁に薄く塗ると貼り付きにくい。切っている途中で柔らかくなってきたら再度冷蔵庫で冷やすとよい。

適当な大きさに切ったクッキングシートやグラシンペーパーで包み、冷蔵庫で保存する。

大人のほろにが生キャラメル

材料(作りやすい分量)
グラニュー糖(カラメル用) 30g
グラニュー糖 100g
水飴 30g
牛乳 100ml
生クリーム 200ml
バター 20g

1.牛乳と生クリームを温める

牛乳と生クリームを合わせて60℃程度に温めておく。(電子レンジを使用すると簡単)

2.カラメルを作る

鍋にグラニュー糖30gを入れて火にかけ、褐色に色づくまで加熱する(このときスプーンなどで混ぜると結晶化してしまうので、加熱ムラがある場合は鍋を優しく動かして混ぜる)。ちょうどよく色づいたらすぐに火を止め、1を加える。

3.煮詰める

残りのグラニュー糖と水飴を加えて火にかける。あとは基本の生キャラメルと同様に作る。

ポイント

お菓子の「キャラメル」と、砂糖液を煮詰めて作る「カラメル」は似ているようで実は別物です。キャラメルは砂糖や水飴と乳製品とを煮詰めたもの。ひとつ前のポイントで解説したように、糖やアミノ酸が「メイラード反応」を起こすことによって色や香りを生じます。

一方、カラメルは、砂糖液を160℃程度に加熱し「カラメル化」させたもので、甘い香りと苦味があります。褐色に色づく点は似ていますが、生じる風味は少し異なります。

メイラード反応だけで作るキャラメルは香ばしい風味と濃厚な甘みがありますが、最初にカラメルを作って一緒に煮詰めると、より複雑な風味とほろ苦さで、大人な味わいのキャラメルになりますよ。

キャラメルを作るときに水飴を入れる理由

砂糖も水飴も、比較的クセの少ない甘味料として料理やお菓子作りに使われます。甘味をつけるだけなら砂糖だけでも良さそうですが、ここにさらに水飴も加えるのはなぜでしょうか。それは、水飴に含まれる成分が砂糖にはない性質を持っているからです。

まず、これらは糖の種類が違います。砂糖の主成分がショ糖であるのに対し、水飴はブドウ糖や麦芽糖が甘味の中心です。これらは「還元糖」に分類される糖で、非還元糖であるショ糖に比べてメイラード反応を起こしやすいという性質があります。水飴を加えることによってメイラード反応がよく進み、キャラメルらしい色と香りがつくのです。同じく還元糖である果糖とブドウ糖が豊富な蜂蜜や、ブドウ糖が豊富なみりんも、メイラード反応を起こしやすい甘味料です。

また、水飴には「デキストリン」という成分も含まれています。これはブドウ糖が数十個繋がった鎖のような分子で、これらが絡み合うことで水飴の粘り気が生じます。ショ糖を含む液を煮詰めていくと、糖が結晶化してシャリシャリとすることがあります。デキストリンが絡み合ってできた網目は、ショ糖の動きを邪魔して結晶化を防ぐため、生キャラメルをなめらかな食感に仕上げる効果があります。

写真の手前に置かれているのは、水飴を加えずに砂糖と乳製品だけを煮詰めたもの。色は白っぽく、風味もキャラメルとは少し違います。ショ糖が結晶化してシャリシャリとした食感になりました。

 

10/27(木)更新の次回では、「包丁不要 ハサミと電子レンジで作る鶏のテリヤキ丼」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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