小田先生のさんすう力UP教室

あてはまるものを探してみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、お気に入りのものがよく店頭から消える小田です。スーパーやコンビニなどで、繰り返し購入するものに限って、いつの間にか棚に置かれなくなることが多々あります。最近では、冷凍の海鮮丼の具が消えました。確かに、実験的なシリーズではあったのですが、そこまで他の人にウケていないとは思いませんでした。しかたがないので他のシリーズの冷凍海鮮丼を買ってみたところ、正直そちらの方がおいしかったです。なるほど、とは思いましたが、そのシリーズはマグロ系しかないんですよね。サーモンを食べたいです。サーモン。 
 さて、今回は条件にあてはまっているかどうかを確認していく問題です。6月号に引き続き、“論理”の力を鍛えるトレーニングではあるのですが、まずは気軽にチャレンジしてみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage30:あてはまるものを探してみよう

例題

数字が3つ書かれたカードがあります。(ア)(イ)(ウ)のうち、「5より大きい数が書かれたカード」をすべて選んでください。

例題の答え

(ア)と(ウ)

まずは問題の意味が理解できているかどうか、確認してあげましょう。それぞれのカードには3つの数が書かれていますが、そのうちの1つでも5より大きい数が書かれていればそれを選ぶ、という問題です。問題の意味がいまいちピンときていないな、と感じたら、1枚ずつカードに注目してもらい、「このカードには5より大きい数は書かれている?」と順々に聞いてあげてください。また、「5“より”大きい」には5は含まれません。そこを間違えているようでしたら、それも伝えてあげてください。

お子さんが答えを選んだあとは、まずその選んだカードに「5より大きい数が書かれているかどうか」を確認してあげましょう。「このカードのうち、どれが5より大きい?」と聞いてあげてください。「5より大きい数」を指摘できればOKです。先ほどお伝えしたように、(イ)のカードで「5」を選んでいたら、「5“より”大きい、には5は入らない」と説明してあげてください。選んだカードについて、順々に確認してあげたら、「他のカードには、5より大きい数はないかな」と聞いてあげましょう。カードを過不足なく選べていたら、それで正解です。選んだものが足りなかった場合(1つしか選んでいなかった場合)は、他の2枚のカードについて、それぞれ「これには5より大きい数は書かれていない?」と確認してあげましょう。

解いてみよう

Level 1

数字が3つ書かれたカードがあります。(ア)から(オ)のうち、以下の(1)(2)(3)にあてはまるものをそれぞれすべて選んでください。同じものを繰り返し選んでも構いません。

(1)3の数字が書かれているもの

(2)書かれている数の和が15より小さいもの

(3)左端に書かれている数よりも、右端に書かれている数のほうが大きいもの

 

Level 2

数字が4つ書かれたカードがあります。(ア)から(オ)のうち、以下の(4)(5)(6)にあてはまるものをそれぞれすべて選んでください。同じものを繰り返し選んでも構いません。

(4)書かれている数の中で一番大きい数が、右端に書かれているもの

(5)書かれている数の中で、一番大きい数と一番小さい数の差が6以下のもの

(6)両端に書かれている数の差が、残り2つの数の差より大きいもの

 

Level 3

数字が5つ書かれたカードがあります。(ア)から(オ)のうち、以下の(7)(8)にあてはまるものをそれぞれすべて選んでください。同じものを繰り返し選んでも構いません。

(7)書かれた5つの数のうちの2つの数の和が、他の3つの数のうちのいずれかになるもの

(8)書かれた5つの数の中で一番大きい数が、2番目に大きい数よりも右に書かれているもの

解答

Level 1

(1)(ア)と(ウ)と(エ)

(2)(イ)と(ウ)と(オ) 
※ それぞれの和は (ア) 16  (イ) 12  (ウ) 9  (エ) 20  (オ) 13

(3)(ウ)と(エ)と(オ)

Level 2

(4)(ウ)と(エ)と(オ)

(5)(ア)と(エ)と(オ) 
※ それぞれ最大と最小の差は (ア) 6-2=4  (イ) 9-2=7  (ウ) 8-1=7  (エ) 5-2=3  (オ) 7-1=6

(6)(イ)と(エ) 
※ それぞれ両端の差と残り2数の差は (ア) 3と3  (イ) 7と2  (ウ) 4と7  (エ) 3と1  (オ) 2と3

Level 3

(7)(ア)と(ウ)と(オ)
※ (ア) 5+4=9  (ウ) 5+2=7  (オ) 2+4=6

(8)(イ)と(ウ)
※ それぞれ、最大の数と2番目に大きな数は (ア) 9と8  (イ) 9と7  (ウ) 8と7  (エ) 9と8  (オ) 9と6

さんすう力UPのポイント

算数の学習の相談の際、「算数をやる上で国語力が必要かどうか」という話になることがよくあります。やはり、いわゆる“文章題”でつまずくお子さんが多いのでしょう。そういったお子さんを見ていると、確かに、算数の学習より先に国語の勉強もさせなければいけないのではないか、と感じてしまうことはありますね。正直に言えば、“文章題”でつまずくのは単純に“国語力”の問題だけではないのですが、それはそれとして、算数の学習を進めていく上で、ある種の“言葉”に関する力が必要であることは事実でしょう。

6月号で、「論理的に考える力」の具体的な要素のひとつとして、「想定される結論の候補を列挙する力」のお話をしましたね。そうやって、結論として考えられる候補を“列挙”した次の段階で必要になるのが、今回のテーマである「条件にあてはまるかどうかを判別する力」です。「まずは“与えられた条件から導かれる結論の候補”を列挙し、その中から“目的の条件を満たすもの”を選ぶ」という流れは、算数の問題を解いていく上で重要な考え方のひとつです。たとえば、次のような問題があったとします。

AさんとBさんは、あわせて10個の貝殻を拾いました。Bさんが拾った貝殻の個数がAさんの拾った貝殻の個数の2倍より多く、3倍より少ないとき、それぞれが拾った貝殻の個数は何個ですか。

まずは「あわせて10個」という条件に注目してみましょう。あわせて10になる数の組み合わせは、「1と9」「2と8」「3と7」「4と6」「5と5」ですね(数を入れ替えただけのものは省略しました)。その中で「Bさんが拾った個数がAさんが拾った個数の2倍より多く3倍より少ない」のは、「Aさんが3個、Bさんが7個」のときだけです。「Aさんが2個、Bさんが8個」ではBさんの個数がAさんの個数の3倍より多くなってしまいますし、「Aさんが4個、Bさんが6個」ではBさんの個数がAさんの個数の2倍より少なくなってしまうからです。よって、この問題の答えは「Aさんが3個、Bさんが7個」とわかります。今回の問題は、こういった“考え方”のうちの、後半の部分のトレーニング、ということですね。

あてはまるかどうかを判断する力は、問題を解く際だけではなく、普段の算数の学習においてもとても重要です。子どもたちの様子を見ていると、「本来その問題では使えないはずの公式を使ってしまって間違える」というパターンも多いですね。たとえば、台形でない形に対して、“台形の面積の公式”を使っていたりします。そういう場面を見たりしてしまうと、「何も考えずに公式にあてはめるな!」と言ってしまいたくなるときもあるかもしれません。ただ、そういった子たちをよくよく見ていると、別に「何も考えずに公式にただあてはめているだけだから間違える」わけではないことに気づきます。公式を使えない場面で使ってしまう子たちに必要なものこそ、実は「あてはまっているかどうかを判別する力」なのです。大人が見れば“台形”ではないとわかるものでも、その子にとっては“台形”に見えていることがあります。だから、“台形の面積の公式”を使ってしまうわけですね。今回のテーマに沿って言えば、“台形”にあてはまるものとあてはまらないものの区別がついていない、ということでしょう。“台形の面積の公式”を適切な場面で使えるようになるためには、「台形とは何か(台形と言えるための条件)」を言語化、つまり“言葉”にして、それにあてはまるかどうかを確認する習慣がまず必要なのです。

算数の学習を進めていくと、いろいろな“用語”に出会います。その際に、その用語が指しているものをまずは“言葉”で捉えることが大事です。その基準はときに“感覚”と食い違うこともありますが、それでも、その感覚に惑わされることなく、言葉の通りにあてはまる・あてはまらないを判別していくことが重要です。今回のような問題で練習することで、その「あてはまる・あてはまらない」を振り分ける力を身につけていってくれると嬉しいです。


 いかがでしょうか。暑い日々が続きますね。あまりに太陽が頑張っているので、私もついに日傘デビューすることにしました。SNSで仕入れた情報によると、外側が白などの薄い色、内側が黒などの濃い色のものがいいらしいですね。人気のあるものは入手が難しい時期もあったようですが、無事そういったタイプのものを入手することができました。実際使ってみると、効果は抜群ですね(個人の感想です)。流石に長時間外をうろうろすると暑いですが、家を出た直後から日光に焼かれて暑い、みたいなことはあまりなくなった気がします(個人の感想です)。今年の夏も、なんとか上手い感じに乗り切っていけるといいですね。

 それではまた来月!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

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