子どもと楽しむ料理の科学

包丁不要! ハサミと電子レンジで作る鶏のテリヤキ丼

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

火も包丁も使わず完成 テリヤキ丼

キッチンバサミと電子レンジ、ふだんどれくらい使っていますか? キッチンバサミは普通のハサミと同様、袋を切る、紙パックを開くといった用途にも使えますが、野菜や肉などの食材を切るのにも便利です。電子レンジは、お惣菜や残り物のあたためだけでなく、食材の加熱調理にも使えます。まな板や鍋を使わないので洗い物が減りますし、包丁や火を使わずに調理できるのでお子さんと一緒に料理をするのにも安心ですね。

今回は、キッチンバサミと電子レンジを活用し、包丁や火を使わないどんぶりレシピを紹介します。休日のお昼ご飯にお子さんと一緒に挑戦してみてはいかがでしょうか。

鶏のテリヤキ丼

材料(1人分)
鶏もも肉 150g
*醤油 大さじ1
*みりん 大さじ1
*砂糖 小さじ1
*おろしにんにく 少々
片栗粉 小さじ1
水 小さじ1
水菜 1/10袋
ご飯 お茶碗1杯分
マヨネーズ、粗びき黒こしょう お好みで

1.水菜を切る 

水菜をハサミで4cmの長さに切る。

2.鶏肉を切る 

電子レンジ加熱可能な容器を用意する(加熱時に煮汁が沸騰するので深さがある方が良い。鶏肉を広げて入れられる大きさの丼やガラスボウルがおすすめ)。 

鶏肉をハサミで一口大に切って容器に入れる。

ポイント

キッチンバサミは葉野菜やブロッコリー、薄切り肉、鶏もも肉、油揚げ、ベーコンなどを切るのに便利です。ボウルや器の上で切ると、洗い物が少なく済みますよ。

複数の食材を切る際は食中毒を防ぐため、包丁やまな板と同様に、野菜→生もの(肉や魚)の順に切り、生ものを切った後は必ず洗剤でしっかり洗うようにしましょう。分解できるタイプのものを使うと清潔な状態を保ちやすいです。

3.調味料を入れる 

2に*の調味料を加え、ざっと混ぜて絡めたら、鶏肉を容器の底に広げるように並べる。

ポイント

電子レンジで食材を加熱するときは、加熱ムラを防ぐため、浅く広く並べるようにしましょう。
電子レンジにはマイクロ波という電磁波を発生させる装置が内蔵されています。このマイクロ波が食品に浸透し、水などの分子を振動させます。これによって摩擦熱が発生し、食品が温められるのです。

このマイクロ波は、食品の中を進むにつれて徐々に吸収されて熱に変換されていくため、深く浸透するほどマイクロ波は減少していきます。水分の多い生鮮品の場合、浸透できる距離は表面から5cm前後、塩分を含む場合にはさらに短くなります。そのため厚さのある食品や、食材が分厚く重なった部分では、真ん中までマイクロ波が届きにくく、加熱されにくいのです。

4.加熱する 

ラップをして電子レンジに入れる。600Wで2分間加熱する。上下を返してさらに30秒加熱する。(2人分の場合は3分20秒+50秒)

ポイント

鍋やフライパンで食材を加熱する場合、食材の量が増えても、加熱時間はそれほど変わりません。一方、電子レンジ加熱では、食材の量が増えるとその分多くのマイクロ波を当てる必要があるため、加熱時間が長くなります。量が2倍になったら加熱時間は約1.7倍、3倍なら約2.6倍が目安です。

5.とろみをつける 

片栗粉に水を加えて水溶き片栗粉にする。4のラップを外して上下を返したら水溶き片栗粉を加え、ざっくり混ぜて全体に絡める。すぐにラップをして電子レンジに入れ、600Wで30秒間加熱する。(2人分の場合は50秒)

6.盛り付け 

丼にご飯を盛り、1の水菜を広げ、5の鶏肉をのせる。お好みで、マヨネーズや粗びき黒こしょうをかけてできあがり。

電子レンジ調理が苦手なこと

電子レンジ調理は、様々な利便性がある反面、苦手なこともいくつかあります。特徴をよく理解して使い分けたり、苦手を補ったりするとより便利に使えますよ。

まず、大量調理が苦手です。ポイントでも解説したように、食材の量が増えるとその分加熱時間が長くなります。そのため、少量調理では時短になりますが、大量に作る場合はかえって時間がかかってしまうことも。また、量が多くなると加熱ムラも生じやすくなります。主菜は1〜2人前、副菜は1〜4人前が適量でしょう。

また、焼き色がつきにくいという難点もあります。電子レンジは主に食品中の水分子を振動させ、発熱させます。水は100℃で水蒸気に変わってしまうので、それよりも高い温度になりにくいのです。

焼き色がつかないと、見た目や食感、さらには風味にも影響が出ます。鶏の照り焼きなどは、焼き色の香ばしいにおいもおいしさの重要な要素ですよね。したがって、フライパンで作るのと同じ材料で電子レンジ調理をしても、ぼんやりとして物足りなく感じられるでしょう。

そこで焼き色がつかない分を補う工夫が必要です。たとえば今回のレシピでは、肉の臭みを覆い隠し風味を補うため、ニンニクや黒胡椒をプラスしています。甘味づけには、砂糖だけでなくみりんも使うとより風味が複雑になります。また、水菜のシャキシャキ感が食感にメリハリを与えてくれます。

 

11/24(木)更新の次回では、「酵素でおいしくやわらかく 鶏ささみの塩麹漬け」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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