小田先生のさんすう力UP教室

やってみる力を育てよう 2

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)

 こんにちは、怪我の原因になったクーポンは結局使わなかった小田です。まあ、ふだんからレシートについているクーポンはあまり使わないのですが、それならなぜ階段を降りながら切り取っていたのか、ということですよね。そのあたりは、正直私にもよくわかりません。そういう日もある、というのが私の口癖だったりするのですが、今回はまさにそういう日もある、という話でした。

 さて、今回はあみだくじの問題です。あみだくじ自体に慣れていない場合は、まずあみだくじの説明からしてあげてください。なかなか難しい問題ではありますが、まずは気軽にチャレンジしてみてください。

 それでは早速行ってみましょう。

Stage36:やってみる力を育てよう 2

例題

下の図に横線を何本か引いて、和が5になる数同士がつながるようなあみだくじを完成させてください。

 

例題の答え

まずはいつも通り、問題の意味を理解できているかどうか、確認してあげてください。とくに今回は、「あみだくじ」に慣れていない場合、そもそも問題に取り組む以前のお話ですので、まずは普通の「あみだくじ」で一緒に遊ぶところから始めてあげてください。

ある程度あみだくじに慣れているお子さんであれば、まずは好きにやらせてあげればいいでしょう。“横線”は斜めになったりしても構いませんが、途中で交わったりしてはいけません。また、1つの点から枝分かれするように書いてもいけません(どちらに進めばいいかわからなくなるので)。

お子さんが答えにたどりついたら、まずは順にたどって確認してあげてください。1からたどって4に、2からたどって3に、3からたどって2に行くようになっていれば正解です。上記の解答例以外にも、“正解”はいろいろあります。下の図のように、同じ場所を往復するような線を引いても構いません。実質的には“無駄な線”になってしまいますが、それも含めて「条件を満たしていれば正解」としてあげてください。

 

逆に、たどっていってうまくいっていないようなら、不正解です。たとえば1が4につながっていない場合、まずは「1はどこにつながるようにしたい?」と聞いてみてください。「4につなげたい」ということがわかっているようでしたら、「これだと4にいかないね」と確認してあげましょう。

解いてみよう

Level 1

下の図にそれぞれ横線を何本か引いて、和が10になる数同士がつながるようなあみだくじを完成させてください。

Level 2

下の図にそれぞれ横線を何本か引いて、和が15になる数同士がつながるようなあみだくじを完成させてください。

Level 3

下の図にそれぞれ横線を何本か引いて、和が20になる数同士がつながるようなあみだくじを完成させてください。

解答

※ それぞれ、解答の例です。その他、条件を満たしていれば正解です。

Level 1

Level 2

Level 3

さんすう力UPのポイント

中学入試がほぼ一通り終わり、高校入試や大学入試も人によっては終わる時期になりました。大学受験の場合は、なかなかその後も継続して指導させてもらうことはほとんどありませんが、ありがたいことに、中学受験や高校受験をした生徒さんは、引き続きその後の数学の指導をさせていただけることも多いです。そういった“受験後”の生徒さんの“その先”の指導を考えるとき、やはりいろいろ考えてしまうことはありますね。
2月号でお伝えしたような、「算数・数学をなぜ学ぶか」「算数・数学を学ぶメリットは何か」というような話もそうでしょう。そして、そもそも「算数・数学を学ぶ、というのはどういうことなのか」も、この時期によく考えるテーマです。
とくに受験生は、受験に向けてたくさん問題演習をしてきました。受験というのはどういう形であれ、「問題に答える」「期待されている答えを返す」という構造にはなっています。もちろん、時代の流れによって問題の内容(問われる要素)や聞かれ方などに変化はありますが、いずれにしても、「問題に答える」練習が有効であることは確かでしょう。私自身も、“受験生”に対しては、やはりそういう指導はしていきます。しかし、「問題を解く」というのはあくまで「算数・数学の学習」の手法のひとつであり、それだけが「算数・数学の学習」ではない、というのは忘れてはいけないでしょう。
「算数・数学を学ぶ」というのはどういうことなのか、という問いの答えとして、私なりに、今のところのひとつの答えはあります。それは、「自分の中にある“数学の庭”を育てる・豊かにする」ことだ、ということです。2月号で、算数・数学の学習を進めると「世界に対する“解像度”が上がる」というお話をしましたね。その“世界に対するものの見え方”を例えたものが“数学の庭”です。“庭”と表現したのは、その中に自由にもの(新しい概念)を置いたり、並べ替えたりできるところが、まさに「自分だけの庭」というイメージにマッチするからです。そしてそれと同時に、実は「外の世界と隔たったものである」というのも、“庭”のイメージと一致します。算数・数学を“正しく”理解する、というのはとても難しく、個人的には、それはコンピュータではない人間にとっては、そもそも不可能なことではないかな、とさえ思っています。しかし、それらを学んでいく中で、より“正しい”理解に近づいていく、自分の認識をより“正しい”理解に近づけていくことは可能でしょう。それこそが、「算数・数学を学ぶ」ということだと思うのです。
外の世界、つまり算数・数学の世界を探検し、そこで見つけたものを自分の“庭”に持ち帰る。そして、それらを組み合わせて自分なりの“庭”の風景をつくる。さらに探検を繰り返す中で、“庭”の配置をいろいろ変えて、よりしっくりくる形に組み替えていく。そうやって自分の中の“数学の庭”を、より豊かにしていくことが、「算数・数学を学ぶ」ということなのでしょう。
1年間、さまざまな問題を紹介させていただきました。しかし、それらは「問題を解けるようになる」ということが大事なわけではありません。今回の問題もそうですね。問題を出しておいて言うのもなんですが、別にあみだくじが思うように作れなくても、算数の学習に何か支障が起きるわけではありません。それでも問題を紹介してきたのは、やはりその「問題を解く」中で、何か面白いもの、自分の“庭”に持ち帰れるものを見つけてほしいからです。保護者の皆さんも、ぜひお子さんが“探検”している様子を、ぜひこれからも温かく見守ってあげてほしいと思います。


 いかがでしょうか。
そんなこんなで、今年度も最終回を迎えました。最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。来年度も引き続きこのコーナーを担当させていただきますが、ひとまずは一旦の区切りです。
 昨年度の終わりには、「100名城スタンプ」を集めるぞ、と意気込んでいたようなのですが、結局は1つも増えませんでした。「続100名城」のほうは2つ増やせたんですけどね。来年度こそは、いろいろと遊びに行けたらいいな、と思っています。

 それではまた来年度!

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書

まだZ会員ではない方

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