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ニュースに関心がもてる子になる(1)

日々、国内・世界各地から寄せられるさまざまなニュース。子どもがニュースに関心をもち、それに対して意見をもてるようになるために、家庭ではどのようなことができるでしょうか。将来、入試で問われることもある時事問題への対応も含め、Z会エクタス栄光ゼミナールで難関国私立中学合格を目ざす子どもたちに社会科を教える髙原篤史先生にうかがいました。

(取材・文 浅田 夕香)

目次

ニュースに関心をもつことが大事なのは、なぜ?

――そもそも、ニュースに関心をもつことは、なぜ大事なのでしょうか?

ニュースに関心をもつことが、「机上の勉強や自分自身と、世の中で起こっていることは結び付いている」ということをイメージできるようになることの助けになるからだと、私は考えます。
これからの社会で求められる力の一つとして、自分で課題を見つけ、その課題について自分で考え、行動したり、解決したりする力があることは、保護者の方もよく耳にされているでしょうし、2020年度から始まる新学習指導要領でも言われていることだと思います。

これまで日本の多くの人たち――とくに40代以上――は、物ごとに臨む際、失敗しないように、うまくコトが運ぶようにと、想定しうる事態はすべて洗い出して準備する方法でやってきました。ところが、今の世の中は、その準備や想定を上回るようなことがどんどん起こるようになっています。それに対して、アドリブで切り抜けていく力が、日本全体で、あまりにも足りていないのが現状です。そこで、このような力の育成が目ざされているのだと思います。

未知の、あるいは想像を超えるできごとに対して、柔軟に対応し、もっている知見を総動員して解決をはかることができるようになるには、世の中で起こっていることやさまざまな人たちと自分がかかわり合っていることをイメージする力を、子どものころから少しずつ育てていくことが大事だと、私は思います。その手段の一つが、ニュースに関心をもつことではないでしょうか。

家庭でできる、子どもがニュースに関心をもつ方法

――では、子どもがニュースに関心をもつために、ご家庭ではどのような働きかけをするとよいのでしょうか?

学年によってアプローチの仕方は異なるので、低学年と高学年に分けてお話しします。
まず、3年生くらいまでは、できるだけさまざまなことを実体験させてあげましょう。というのは、3年生くらいまでは、いくらニュースを見せたり、保護者が話を聞かせたりしても、自分とのつながりがイメージできなければ「おとぎ話」のように現実味のないものとして受け取ってしまうからです。したがって、将来、遠い世界の情報が入ってきたときに「これって前に家族で見たものだ」などと自分と結び付けて考えられるよう、まずは、実体験という「貯金」をたくさんしておくのです。
たとえば、旅行は異なる文化や習慣を知ることのできる実体験の一つですが、旅行に限らず、まだ見たことのない世界を見せてあげて、その子の世界を広げてあげましょう。

――4年生以上の場合はいかがでしょうか?

2つあります。1つ目は、日常的にニュースに接する機会をつくること。朝でも夜でも、休日だけでも構わないので、ニュースまたはニュースバラエティがテレビから流れている時間をつくることをおすすめします。

できれば、大人と一緒に見られるといいですね。そうすれば、子どもが興味をもった話題について一緒に話すこともできますし、大人の会話から子どもが視野を広げることもできますから。皆でかしこまって正座して見る必要はないですが、もし家族がそろう時間が限られているなら、ニュースを録画しておいて、皆がそろったときに見る方法もあると思います。

――2つ目は何でしょうか。

2つ目は、何か1つの事象を取り上げて親子で話す時間をつくることです。そうすると、世の中の事象と自分とのかかわりや、事象そのものへの理解が深まります。これは、純粋に自分の考えを言葉にする、また、言葉にする過程で自分の考えをまとめていくトレーニングにもなります。かしこまって「さあ時間です」と始める必要はなくて、食事のときでも、寝る前でも、車での移動中でもいつでも構いません。頻度も、「ときどきそんな時間がある」というのでよくて、毎日である必要はありません。
ただ、その際に保護者の方に意識していただきたいことが3つあります。

まず、子どもにとって身近な話題・事象を取り上げること。そうでないと、その事象が自分とつながっていることをイメージするのが難しくなってしまいます。たとえば、香港の民主化デモの話題など、話題としてあまりにも大きい、あるいは、遠いものよりも、災害による停電の話題など、家族やその少し外の地域・日本でのできごとなど、身近なところから始めましょう。

次に、保護者の方が、多様な見方を示してあげること。「こういう見方もあるんだよ」「こんなふうに言っている人もいるんだよ」などと、逆の見方や、多様な見方があることも示してあげないと、子どもは、偏った、一面的な見方しかできなくなってしまいます。

最後に、大人の言葉で、大人の考え方や枠組みをそのまま説明すること。かみ砕いて説明するとなると保護者の方も大変ですし、子どもは、高学年くらいになれば、明確に理解できなくても「たぶん、こういうことだろうな」と思いながら話を聞けます。その結果、子どものなかに誤解が生じていても、いずれどこかで学べますし、子どもから「これってどういうこと?」と聞いてきたときに、かみ砕いて説明してあげればいいことです。

――一方で、そういった働きかけがなかなか響かない、まったくもってニュースに関心をもたない子もいると思います。その場合、どのようにアプローチするのがよいでしょうか?

一つ考えられるのは、その子が興味をもっていることから攻めることでしょうね。ファッションなり、昆虫なり、車なり、何かしら興味をもっているものがあるでしょうから、そこから視野を広げてあげる。たとえば、「車が好き。レーサーの仕事に興味がある」という子であれば、「車にかかわる仕事には、レーサーはもちろん、車のデザインや、エンジニア、宣伝・マーケティングなどの仕事もあるんだよ」といった話をして視野を広げてあげるうちに、世の中とつながっていくと思います。

⇒次ページに続く 「中学、高校、大学入試における時事問題出題の意図」

プロフィール

髙原篤史(たかはら・あつし)

筑波大学附属駒場中学校や「御三家」と呼ばれる都内最難関私立中学群(開成中、桜蔭中など)の合格を目ざすZ会エクタス栄光ゼミナール講師。成城学園校室長。専門は社会科。中学受験の指導歴は2019年で24年目。後進の指導や教材・テストの制作などにも携わる一方で、現在も受験生指導の第一線に立っている。栄光ゼミナールをはじめ株式会社栄光が直営する全学習塾を挙げて行われる授業力コンテスト(Excellentスタッフグランプリ)で3度優勝し2014年に殿堂入り。2016年には、フジテレビ系「めざましテレビ」の夏休み企画「受験に出るニュース」コーナーを担当。北海道出身。

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