特集

コロナでどう変わった? 小学生の生活と学び(前編)(1)

コロナ第1波から約2年。この間、緊急事態宣言からの休校、夏休み短縮、行事や体験活動の縮小・中止、外出制限、学校でのデジタル端末の導入など、小学生の生活環境には大きな変化がありました。そこで、Z会をご受講中の保護者の皆さまから昨年末のアンケートでいただいたお声をもとに、発達心理学の研究者である東京都立大学の酒井厚先生にお話をうかがいながら、コロナ禍による子どもたちへの影響を振り返ります。

<本記事の「後編」は、2022年4月28日公開予定です>

記事中のアンケートデータ・ご紹介する保護者の方の声はすべて、下記の調査によるものです。

Z会小学生向けコース会員保護者アンケート
「コロナ禍における小学生の生活と学び」より
(実施期間:2021年12月23日〜2022年1月6日/回答者数:1,589人)

目次

 

◆アンケートから見る、子どもたちの身体と心への影響

Q.コロナ禍で外出が制限されていた期間中、お子さまが次のような心身の状態になったことはありましたか。

<フリーアンサーより>

  • 運動不足で、少し外出しても、すぐに帰りたいと言うようになった。 友だちと会えなくて、家にいてもつまらないともよく言っていた。(1年生)
  • 運動不足で逆上がりができなくなってしまい、本人もショックを受けていた。(2年生)
  • 外出もしなくなり、家にこもってばかりいたのでちょっとしたことで「疲れた」と言うようになり、体力の低下を感じた。(3年生)
  • 休校明けの体育の授業で転んで骨にヒビが入ってしまった。運動不足が顕著に出たのだろうと感じた。(4年生)
  • イライラしていることが増えた。オンライン授業のもどかしさなども感じていた様子。 運動不足による肥満もあった。(5年生)
  • 運動不足・生活の刺激不足からか、夜なかなか眠れない日が続いた。(6年生)

――コロナ禍での外出制限によって、小学生の子どもたちの心身にどのような影響があったかについてお聞きしたところ、目立ったのは「運動不足」で、8割以上の方が多少なりともそれを感じていたという結果となりました。これについて、酒井先生はいかがお考えでしょうか。

身体を動かす機会がなくなれば、やはり体力は落ちていくかもしれませんね。
それは、登下校がなくなったとか、体育の時間がなくなったということだけではなくて、友だちと遊ぶ機会がなくなったことも大きいのではと思います。
子どもにとって、遊びはストレスの発散にもなる大事な活動ですが、一緒に活動する「相手」がいることで遊びやすいということがあると思います。友だちと遊べないうえに、ごきょうだいがいなかったりご家族で何かをする時間がなかなかとれなかったりとなれば、身体を動かす機会は減ってしまいます。

体を動かすということだけ考えれば、たとえばYouTubeなどには、体操のしかたなどを教える動画がたくさんありますから、それを見るのもいいでしょう。著名なスポーツ選手が公開している動画もありますし、利用されたことのある方も多いのではないでしょうか。
でも、子どもの場合は、大人と違って「よし、運動不足を解消するために何かするぞ」とか、そのために動画を見ようとはならないと思います。なかには、自分一人でも身体を動かそうと考えるお子さんもいるかもしれませんが、多くの場合には、やはり周囲の働きかけが必要です。

これまで、友だちという「相手」がいることで、遊びをとおして自然に身体を動かしていたことを考えれば、保護者の方が代わりになって、「一緒にやってみようよ」と誘って身体を動かす機会をつくるのも大切でしょう。

――コロナ禍での生活の工夫として、「体を動かす時間をもつようにした」「公園などでリフレッシュする機会を設けた」という声は多くありました。ずっと家にいると飽きてしまうから気分転換が必要、という意味だけではなくて、子どもにとっては、身体を動かして、ぐっすり眠る、そうした生活を送れるようにしてあげることがやはり必要なのですね。

そうですね。アンケートを拝見して、多くの方が意識してそういう機会をつくろうとされていたのではと思いました。
さまざまな制約のあるなかで、お子さんのために機会をつくっていらっしゃるんだなと感じます。

Q.コロナ禍で外出制限があった時期(休校期間を含む)、小学生のお子さまの生活習慣や意欲を維持するために、なにか工夫されたことがありますか。(複数回答)

<編集部より>

「公園など密にならない場所でリフレッシュする機会を設けた」がいちばん多く6割以上、「体操など体を動かす時間をもつようにした」は5割近くに上りました。次いで、「家でできる新しい趣味を見つけた」「生活上の時間割を決めた」もそれぞれ4割以上の方が実践している、という結果となりました。

 

◆さまざまなかたちで表れた、子どものストレス

Q.コロナ禍で外出が制限されていた期間中、お子さまが次のような心身の状態になったことはありましたか

<フリーアンサーより>

  • 急な休校や短縮授業、会話の禁止など学校生活が目まぐるしく変わることにストレスを感じていた。 外出自粛中は楽しみにしていたイベントに参加できないうえ、授業は詰め込み、大量の宿題、慣れないオンライン授業などで精神的に疲れきっていた。(2年生)
  • 分散登校などいつもと違った状況が続いたことでやはりストレスがあったらしい。当時を振り返って、あのときは本当に嫌だったと今でも言っている。(3年生)
  • 引っ越しも重なり、学校で友だちをつくれないストレス、学校に馴染みたくても行けないストレスが重なり、イライラしがちで、親やきょうだいとぶつかることが多くあった。(4年生)
  • 友だちと会えないストレスで、ふだん泣くことのない子が時折涙ぐむ姿があり、見ていていたたまれなかった。(5年生)
  • 休校中は友だちと遊べずさびしそうにしていた。また、いずれ遊べるようになると親が話しても「コロナのせいでそうはならない」と泣き出して反論してきて、精神的に不安定さが見られた。(5年生)

――「運動不足」と比べると割合は下がるものの、イライラしたり、さびしさを感じていたり、学習や生活全般で意欲が低下したりする様子があったという声もありました。

イライラしたり、身体を動かすのが億劫になったり、無気力になったりするというのは、ストレス反応の一つと考えられます。コロナ禍は大人にとってもストレスのかかる事態ですから、お子さんにそうした反応が出るのはやむを得ないことです。子どもがストレスを感じているとわかることは、保護者の方がケアやサポートをするうえで重要です。

ストレス反応への対処のしかたが良くないと、そのあと抑うつ状態(気分が落ち込んで気力が乏しくなるなど)がひどくなったり、不安が高まったりしてしまうことがあります。

たとえば、海外で行われた研究では、親子でコロナに関して話し合うことが多い家庭のほうが、子どもの抑うつや不安が抑制され、メンタルヘルスが良いという結果が報告されています。
この結果は、お子さんがつらかったり不安だったりする気持ちを、一番身近にいる保護者の方にお話しして、それを受け入れてもらえることで、安心につながることを示唆しています。周囲にいる大人が、お子さんの話をよく聞いてあげること、言語化して確認し合うことが大切だと言えるかもしれません。

イライラしたり、怒りっぽくなったりといったお子さんの様子を目にすること自体、保護者の方にとってつらいことだと思います。でも、すぐに「変えなきゃ」とか「もとに戻してあげなきゃ」と考えるより、まずは現状の子どもの気持ちを理解して、共有してあげてほしいと思います。

大人は、ストレスを受け止めてくれる相手を自分で探すことができるかもしれません。また、その相手に話すタイミングを探ることもできるかもしれません。子ども、とくに低年齢の子であればあるほどそれは難しいわけですから、大人の側から話を聞いてあげることが必要です。
子どもにとっては、自分の気持ちを聞いてもらえた、理解してもらえたということがとても心強く、ストレスとうまくつきあう支えになると思います。

――コロナ禍の出口がなかなか見えず、大人であっても、具体的な解決策や、こうだから大丈夫などと言えるわけではないけれど、しんどい気持ちを率直に言葉にするだけでもよいということですね。

そうですね。今の気持ちを話す、現状を親子で共有するということが大事だと思います。
当然ながら、家族の中で互いのストレスについて理解しあう関係がうまくいっていなければ、家族外の関係、たとえばお子さんと友だちとの関係も、うまくいかないことが出てくる可能性があります。

⇒次ページに続く 「学校に行きたくない」という言葉の受け止め方

 

プロフィール

酒井厚(さかい・あつし)

東京都立大学人文社会学部教授。早稲田大学人間科学部を卒業後、同大にて博士号取得。国立精神・神経センター精神保健研究所、山梨大学を経て現職。専門は発達心理学、発達精神病理学。主な研究テーマは、子どもが他者に抱く信頼感と仲間関係の発達プロセス。日本パーソナリティ心理学会賞、日本子ども学会優秀発表賞など受賞。

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