子どもと楽しむ料理の科学
ひと工夫で料理がもっと彩りよく 色素の科学
2020.6.25
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「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。
「おいしい」は、料理の見た目も大事
緑色の野菜は食べる直前に調理する
鮮やかな緑色の食材があると食卓が華やぎますよね。メインの食材としてたっぷり使ってもよし、トッピングとしてパラリと散らしてもよし。そんな野菜の緑色は「クロロフィル」という色素によるものです。
この色素は熱や酸に弱く、⻑時間加熱したり酸性の条件にさらしたりすると、黄褐色の「フェオフィチン」という成分に変化し、色が悪くなってしまいます。酢、醤油、みそなど、私たちが普段使っている調味料には酸性のものが多いので要注意です。
和え物の味付けや、ドレッシングをかけるなどの仕上げは食べる直前がよいでしょう。お弁当にブロッコリーやスナップエンドウを入れる際、マヨネーズ等が触れる状態で詰めてしまうと食べる頃には色が悪くなっている、なんてことも。スペースがあれば小さいカップにマヨネーズを分けて入れておくと、食べるときまできれいな状態をキープできます。
みそ汁や煮物を作る場合も、青菜などの火が通りやすいものはなるべく食べる直前に加えて仕上げるようにすると、青々とした状態で食卓に出すことができます。
赤や紫の鮮やかな色素
トマトやパプリカ、人参などの赤、黄色系の野菜があると、食卓が一層華やかになりますよね。これらの色はカロテノイド系の色素によるもの。この色素は熱や酸に強く、空気に触れて変色することもないので、お弁当や作り置きなどにも便利です。
一方、紫色の色素「アントシアニン」は酸で鮮やかに発色する性質があります。去年「色が変わる!?不思議なジュース」で解説したように、アントシアニン色素は、酸性にすると鮮やかな赤〜赤紫色に変化します。さっとゆでたミョウガを甘酢に漬けたり、紫キャベツをお酢やレモン汁の入ったドレッシングで和えたりするときれいなピンク色に。アントシアニンはこの他にも、ナスの皮や紫玉ねぎ、赤カブなどに豊富に含まれています。
注意点は水に溶け出しやすいこと。紫キャベツを切っていると、あっという間にまな板の上が紫色になりますし、煮物に入れると煮汁がものすごい色になってしまいます。
ナスの皮も同様で、煮物やみそ汁にそのまま入れてしまうと、皮の色が落ちてまだらになったり汁が黒っぽくなったりと、見た目が悪くなってしまいます。
一度素揚げにしたり多めの油で炒めたりしてから使うと、水の中での調理時間が短くなりますし、油で表面がコーティングされるので見栄えよく仕上がります。
作り方/レシピ
2.具を煮る
鍋にだしと油揚げを入れて火にかける。だしが沸騰したら、青菜の茎を入れて火を弱め、火が通るまで煮る。みそはおたま1杯分程度の煮汁を加えて溶いておく。
※他のおかずを作る、家族が帰るのを待つ、など、すぐに食べない場合はここで一旦ストップ。仕上げは食べる直前に。
3.仕上げ
青菜の茎に火が通ったら、青菜の葉と溶いたみそを加え、沸騰直前で火を止める。お椀に盛り付けてできあがり。
※帰りが遅い家族の分や、翌日食べる分など、すぐに食べない分の葉は仕上げに加えずによけておき、温め直すときに加えると色よい状態で食べられます。
3.パプリカを揚げる
残った油にパプリカを入れ、炒め揚げにする。油が全体に回ったら取り出す。余熱で火が通るので、長く加熱する必要はありません。
4.ひたす
油を捨て、残った油をキッチンペーパーなどで拭き取る。同じフライパンに*を入れて加熱し、沸騰したらパプリカとナスを入れる。一煮立ちしたら火を止めて粗熱をとる。1時間以上ひたして味がしみたら器に盛り付け、青ネギをのせてできあがり。
(青ネギは煮汁にひたしておくと色が悪くなるので食べる直前に加える)
冷蔵庫で2〜3時間、よく冷やして食べるとおいしいです。3〜4日ほど日持ちするので、前日に作って冷やしておくと便利です。素麺に添えたり、冷しゃぶを加えたりして食べてもよいでしょう。
プラス知識! 野菜を変色させないコツ
7/23(木)更新の次回では、「はちみつの活用法」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!
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プロフィール
科学する料理研究家、料理・科学ライター
平松 サリー(ひらまつ・さりー)
科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。