子どもと楽しむ料理の科学

防災の日に! 缶詰で作る簡単サバカレー

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

非常食を使ってカレーを作ろう

9月1日は防災の日。皆さんの家では災害に向けた備えをしていますか?地震や風水害によってライフラインや物流が止まってしまった場合に備え、各家庭で飲料や食糧をストックしておくと安心です。

防災備蓄というと、乾パンやアルファ米のように非常時専用に準備する食糧が想像されるかもしれません。しかし、非常食にも賞味期限があるので、適宜買い替えるなどの面倒があります。そこで最近では、缶詰や乾物など、普段の食事にも使えて日持ちもする食品を多めにストックし、日々の生活の中で入れ替えていく「ローリングストック」という考え方が広まりつつあります。自宅に食糧を多く備えておくと、外出を控えなくてはならないときにも役立ちますよ。災害のみならず、猛暑が続いたときや新型コロナウイルス感染拡大下での外出制限などで、その必要性を実感されたことのある方は多いのではないでしょうか。

今回はローリングストックにも便利なトマトの水煮缶とサバ味付缶を使った簡単カレーのレシピを紹介します。

サバとトマトの缶詰カレー

材料(4人分)
サバ味付缶 2缶(300〜400g程度)
 醤油味のものがおすすめだが、味噌味でもOK
トマト水煮(カットタイプ) 1缶(400g程度)
とんかつソースまたは中濃ソース 大さじ1
 なければおこのみソースやトマトケチャップで代用する
カレー粉 小さじ2〜3
おろし生姜、おろしニンニク 各小さじ1
ご飯 適量

1.材料を合わせて加熱する

深めのフライパンまたは鍋に、全ての材料を入れて火にかける。沸とうしたら、穏やかに沸とうする程度に火加減を調節する。

ポイント

サバなどの青魚は、魚の中でも生臭さが気になりやすいので、苦手という人もいますよね。魚が死ぬと、魚の体表にいる微生物によってトリメチルアミンという成分が作られます。これが生臭さの正体です。この成分は魚が死んでから時間が経つほど増えていきます。一方、缶詰の多くは産地の近くで鮮度の良いうちに加工されているので、比較的生臭さが抑えられています。

さらに、トリメチルアミンはアルカリ性なので、クエン酸を多く含むトマトのように、酸性の食材と組み合わせると中和されて揮発しにくくなり、においが抑えられます。柑橘類や梅などもクエン酸が豊富ですし、お酢も酢酸を多く含み、魚の臭み消しに便利な食材です。

生姜や玉ねぎ、ローリエ、セージ、キャラウェイ、シナモン、クローブ、タイムなどのスパイス・ハーブ類にも、生臭さを抑える効果があります。カレー粉に使われるスパイスはメーカーによって異なりますが、キャラウェイやクローブ、シナモンなどがしばしば用いられています。さらに今回のレシピではおろし生姜を使用しました。キッチンにこれらのスパイスやハーブがある人は、他の組み合わせを試してみるのもいいですね。

2.煮詰める

サバを食べやすい大きさにほぐしながら5〜10分ほど煮詰める。とろみがついてきたら火を止める。

ポイント

サバ味付缶にはサバの他に、醤油や塩、砂糖などの調味料が用いられています。そのため、開けてそのままおかずとして食べられるだけでなく、食材兼調味料として活用することもできます。缶汁ごと使うことでサバのうま味や調味料の甘味、塩味が加わって、少ない材料でも味わい深いカレーができます。

また、タレ(缶汁)にとろみをつけるためにデンプンやグァー(マメ科の植物)などの材料が使われているので、ルウを使ったり長時間煮込んだりしなくてもとろりとした仕上がりになります。

3.盛り付け

お皿にご飯を盛り、2をかける。お好みで素揚げまたは焼いた野菜をのせてもおいしい(写真はナス、ズッキーニ、パプリカ)。

具材にもダシにもなる缶詰

トマトにはグルタミン酸、サバなどの魚介類にはイノシン酸といううまみ成分がそれぞれ豊富に含まれています。そのため、これらの缶詰は調理済みの具材として使えるだけでなく、料理にうま味を与えるダシの役割も果たしてくれます。缶汁にもうま味成分が溶け出しているので、料理に入れるときはぜひ、丸ごと使うようにしましょう。

たとえばサバの水煮缶は、ネギやキノコなどお好みの食材と一緒に水で煮て、味噌を溶き入れるだけで食べ応えのあるお味噌汁になります。魚臭さが気になる場合は、生姜などの薬味を入れても良いでしょう。

また、グルタミン酸とイノシン酸を組み合わせるとうま味が何倍にもまして感じられる「うま味の相乗効果」という現象があります。「うま味たっぷり!コンソメいらずのトマト煮込み」では、それぞれのうま味成分が豊富な食材を紹介しているので参考にしてみてください。

たとえば、トマト缶はグルタミン酸が豊富なので、イノシン酸が豊富な肉や魚と一緒に使うのがおすすめ。ひき肉と合わせてミートソースやチリコンカンにしたり、魚や鶏肉と一緒に煮込むのもおいしいです。

トマト缶は今回のレシピで紹介したように、魚介の缶詰と組み合わせるのもいいですね。トマト缶とツナ缶をフライパンに入れ、おろしニンニクを加えて煮詰めたら、塩で味を整え、お好みで乾燥ハーブや粗びき黒こしょうを加えるだけでおいしいパスタソースになりますよ。

9/22(木)更新の次回では、「とろけるおいしさ!手作り生キャラメルに挑戦」について、科学の視点から解説いたします。お楽しみに!

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プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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