【公立中高一貫校受検記】父が見てきた“学びを楽しむ子ども”の育ち方

わが家と公立中高一貫校との出会い

教育専門の記者であり、公立中高一貫校に通う子をもつ父でもある著者が、自身の体験を率直に綴ります。

2023年4月、新連載スタート!

教育系の記者として、公立中高一貫校への取材経験を多数おもちの著者・堤谷孝人さん。
父として、お子さんの中高一貫校受検をすぐそばで見てきたご経験を綴るエッセイです。
 

教育専門の記者として仕事を始めた2004年から、私は、スーパーキッズや特色ある学校、先進的な教育機関などを取材する機会が多くありました。公立中高一貫校を初めて取材したのは2008年。京大合格者数躍進の秘密を探るため、全国から注目を集めていた京都の公立中高一貫校を複数、取材しました。その中で私は、これまでになかった新しい教育が受けられることに、ときめきました。

 

また、生徒たちからは前向きなエネルギーを感じました。「新しい学校だから価値観や考え方もしばられないのがよかった」「好きな物事に思う存分没頭できる環境に恵まれた」といった話を聞くこともできました。私は、当時1歳の息子にも、できることなら将来、こんなふうに生き生きと学びを楽しんでもらいたい、と思いました。

 

   *  *  *

カプラで建物ができた!

て、私の息子は、あれこれと考えたり想像したり、自分で遊びを作り出したりすることが好きで、興味をもったら何時間でも没頭するような子どもに育っていきました。

例えば、リバーシ(オセロゲーム)の盤と石を使ってオリジナルゲームを考え、一人で毎日遊んでいた時期がありました。石を並べたり数枚重ねたりしてマップを作り、一人二役でサイコロを振りながら石を移動させてバトルする、というもので、細かいルールも自分で作り、遊びながら改良していったようです。

また、ひらがなパズルマットで建物を作ったり、公園に落ちている木の枝でめいろを作って友だちに遊んでもらったり、プラレールやソフト積み木などを組み合わせて街やゲームを作ったり、といったことも好んでいました。

公園で木の枝のめいろ
プラレールやソフト積み木などを組み合わせて

こんな息子が小学4年生のとき、京都に比べて公立中高一貫校の設置が遅れていた大阪に新設校ができるというニュースが飛び込んできました。その学校の特徴を一言で表すなら、「自由」。当時の私は「ここに入学できたら、息子の楽園になるだろうなぁ」と思うほど、舞い上がりました(笑)。息子にとって「与えられる学び」ではなく、「自分の好きなことを際限なく探求できる学び」を得られる場があればいいな、と常々考えていたからです。

 

こうして、私は「受検」を意識するようになりました。

 

   *  *  *

 

ただ、息子はケアレスミスでの失点が目立ち、人間関係では少々シャイな部分がありました(この原稿を執筆している現在の息子も変わりませんが……)。それに、好きなことなら没頭しますが、そうでなければ驚くほどすぐに飽きます。倍率が4〜5倍は当たり前、10倍を超えることもある公立中高一貫校。勉強ができる子どもたちの中で、合格点をとれるのか、面接で自分を伝えきれるのか。近年では、公立中高一貫校合格のための塾が人気です。息子も通塾するべきか、塾の環境は合うのか、自分がしたいことを我慢して勉強を継続できるのか……など、私はしばらく思いをめぐらせました。

 

また、新設校で受検そのものにも、その後の進路に関しても情報がないことに、親としての勇気が試される部分もありました。しかし、決められたロードマップではなくゼロから道筋を模索してゴールするのは息子に合っているのではと思いました。この模索こそが学びであり、息子は楽しめるだろうと信じる気持ちもありました。

 

「受検してみる?」

 

考えたあげく息子と妻に聞いてみたところ、二人ともその学校に興味をもっていたことが判明。こうして、家族での受検チャレンジが思いのほかアッサリと決定したのです。思えば、受検をするのは息子ですし、大きなサポーターは妻です。はじめから気軽に話し合いをしていればよかったのかもしれませんね。

 

 

父「小さいころから、1人遊びでずっと熱中していたなあ。なにがそんなに楽しかったの?」

 

息子「もののいろんな使い道を発見するのが好きだったんだ。自由に動かしたり試したりしてると、ワクワクするんだよ」

プロフィール

堤谷 孝人 (つつみたに たかひと)

関西在住。2004年から子ども関連(保育・育児・教育)の取材、編集、制作をフリーランスで行う。職業柄、スーパーキッズや学校、教育機関などの取材をする機会多数。2008年、京都市立西京高等学校附属中学校を取材したことをきっかけに公立中高一貫校に強い興味をもつように。その後、長男が関西の公立一貫中学に合格。受検にあたりZ会小学生コース「公立中高一貫校適性検査」「公立中高一貫校作文」を利用した縁で、2023年4月よりこの連載をスタート。

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