【公立中高一貫校受検記】父が見てきた“学びを楽しむ子ども”の育ち方

【公立中高一貫校のリアル(2)】中学3年間での子どもの成長

今回のテーマは、無事、志望校への入学を果たしたあとの3年間の姿。親の手を離れ、友だちや先生との出会いによって自分の世界を広げていく子どもの姿はまぶしいほどですね。しかしそうした成長も、幼いころに知的好奇心の土壌が耕され、意欲や自信の種がまかれていてこそなのかもしれません。

教育系の記者として、公立中高一貫校への取材経験を多数おもちの著者・堤谷孝人さん。
父として、お子さんの中高一貫校受検をすぐそばで見てきたご経験を綴るエッセイの第11回です。
第10回まではこちら

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今回は、息子の中学3年間について振り返ってみたいと思います。中学受検で公立中高一貫校に入学した生徒は、勉強一辺倒ではなく、他の生徒と比較して多様な才能がある、リーダーシップがある、知的好奇心が強い、などといわれます。

これには異論もあると思いますが、息子の中学3年間を見ていると、普通の公立中学に通った私の主観的な見方では、わりと当てはまる印象です。

私が中学生のときには周囲にいなかった異才の持ち主や、高いレベルで得意教科をもつ友だちがたくさんいて、息子は毎日好奇心をかき立てられているようでした。

▲中1のころの息子。このころ欲しいものは、ガリレオ温度計、ラジオメーター、スターリングエンジンなど、親の私には全くわからない科学おもちゃばかりに……

そうした友だちに息子も触発されたのか、円周率を100桁暗記することを目標にして、何桁まで覚えたかをLINEグループで報告しあってみたり、数人で京都の寺社や岡山の町並みを見学しに行ったり、オンラインでポーカーをしたりと、それまで興味をもっていなかったことに次々トライするようになりました。

また、どちらかというとおとなしめだった息子が、完全オンラインで実施される中学のオープンスクールで、生徒によるプレゼンテーションのスピーカーに立候補し、選出されたことも、私にとっては驚きでした。

 

  *  *  *

 

息子の友だちの中には、中学受検のために通塾して合格した生徒が多く、入学後もかなりの割合で通塾を続けているようでしたが、Z会一本で合格した息子は入学後も通塾を選びませんでした。

ところで、世間では「お金持ち」より「時間持ち」になったほうが幸福度が高い、という論があるようです。お金があればある程度の時間を買える場合があるため、この論は「どちらかしか選べない」ものではないとは思いますが、おそらく息子にとっては、塾に通うより自宅学習で学力を伸ばすほうが幸福だったのではないかと思えます。

通塾を否定するわけではなく、もし塾に行っていたら、自分では気づけなかったこと・知らなかったことを教えてもらえる、そこでの友だちができるなど、得られるものはあったと思います。しかし、時間を自由に使いたい息子にとっては、自宅学習が向いていたようです。

通塾しなかった中学3年間、息子は、他の生徒に比べておそらく豊富にあった時間を使い、下記のとおりさまざまなことに興味をもち、積極的に取り組んできました。これは、本人のもともとの気質もあるでしょうが、中学受検の際に、Z会をとおして主体的な学びが定着したことの影響も大きいと、私は考えています。

【中学1年生】
ITパスポート(iパス)という資格を取得したいと、毎晩、日が変わるまで勉強し、2度目の試験で合格・取得。この頃は、高校を卒業したら大学に行かず発展途上国をバックパッカーで巡りたく、どこでも生きていけるようにたくさん資格を取っていきたいと宣言していました。

●関数グラフアート「Desmos」にハマる。デジタル似顔絵やイラストを作成し、友だちや家族にプレゼントしていました。

▲母の日にプレゼントした、デジタルイラスト入りの手紙

●毎晩寝る前に、海外で流行りの宇宙版人狼ゲーム「Among Us」で遊んでいました。この頃は日本語未対応。国内外のプレイヤーと略語を交えた英語でチャットしながら推理して進めていました。

●英語と数学への興味が高まり、関数グラフ描画サービスDesmosの制作者による数学解説YouTubeチャンネル「3Blue1Brown」にハマっていました。「素数の法則を可視化するとスパイラルになって、綺麗だからお気に入り」だそうです。特に好きな動画はこれとのこと。

 

【中学2年生】
●生物分類技能検定4級に向けて猛勉強後、ギリギリで合格。いつもスマホかノートPCのみ使って勉強する息子が、珍しく紙ノートを使っているなと思ったら、スケッチを画面に映し出して模写していました。スマホはBGM用に活用。

▲がんばって獲得した認定証

●アニメ『文豪ストレイドッグス』ブームをきっかけに、文学好きの友だちの影響を受けながら、本棚にあった太宰治や中島敦、梶井基次郎作品などを見つけ、読み漁りました。日本三大奇書の筆頭『ドグラ・マグラ』上下巻も読破しました。

●夏休みに入って取り掛かった、Desmosによる自身最大作の関数アート「ドクター=ファンクビート」というボーカロイド曲のサムネイルを再現した作品を完成させました。18日間、計30時間で式数2114によるものでした。

▲「ドクター=ファンクビート」のサムネイルを表現した力作。

●Chromebookを使っての作詞作曲に夢中になり始めました。作詞をするために、思いついたフレーズやいいなと思った単語などをこまめにメモ帳へ記す習慣を身につけていきました。

●自主応募した「第2回 Desmos国際数学アートコンテスト」で、「カテゴリー Ages13-14」にて世界3位に選ばれました。副賞のオリジナルデスモスTシャツ欲しさにチャレンジ。約5000の式数によるもので、Tシャツに加えて100ドルを贈られました。題材のチョイスも評価されたようです。

▲コンテストでの入賞作品

●理科の先生に勧められたことと、本人としても「理科の勉強に役立ちそうだから」という理由で、「危険物取扱者試験 乙種第4類」の勉強を始め、翌年度中3春に受検して合格、取得。

 

【中学3年生】
●こどもの日にボーカロイド音声ソフトを贈りました。オリジナル作詞作曲の楽曲を、自身で開設したYouTubeチャンネルで公開し始めました。

 

  *  *  *

 

中学3年間を終えて、彼は自分でチャレンジする目標を設定し、プランを立て、道のりを策定し、着実にこなして目標達成する、という一連の行動を自分だけで行えるようになったと思います。

こういった、いわゆる「自立した学習者」が身につけるべき「自学自習の態度」は、高校生活はもちろん、それ以降の社会生活でも必要になるものと思います。その礎は、やはり幼いころから徐々に身につけてきた習慣やマインド、学習環境によるところが大きいのではないかと、私は考えています。

 

「中学校では、どんな生徒が多かった? 」

 

息子「理数系に強かったり、暗記するのがとても速かったり、英語ができたりとか、得意なものがはっきりしている人が多かったな。ゲーム好きな友だちも多かったけど、勉強する習慣が身についているからか、ゲームばかりになって成績が下がる人はほとんどいなかったよ。」

プロフィール

堤谷 孝人 (つつみたに たかひと)

関西在住。2004年から子ども関連(保育・育児・教育)の取材、編集、制作をフリーランスで行う。職業柄、スーパーキッズや学校、教育機関などの取材をする機会多数。2008年、京都市立西京高等学校附属中学校を取材したことをきっかけに公立中高一貫校に強い興味をもつように。その後、長男が関西の公立一貫中学に合格。受検にあたりZ会小学生コース「公立中高一貫校適性検査」「公立中高一貫校作文」を利用した縁で、2023年4月よりこの連載をスタート。

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