【公立中高一貫校受検記】父が見てきた“学びを楽しむ子ども”の育ち方

冬の追い込み勉強と、受検当日の迎え方

試験直前となるこの時期、受検生のご家族では、お子さんの集中力を切らさないようにと、あらゆる面からのサポートに心を尽くしていらっしゃることでしょう。来年、あるいは数年後に受検を予定されている方には、その時期の過ごし方をイメージしながらお読みいただけると幸いです。

教育系の記者として、公立中高一貫校への取材経験を多数おもちの著者・堤谷孝人さん。
父として、お子さんの中高一貫校受検をすぐそばで見てきたご経験を綴るエッセイの第9回です。
第8回まではこちら

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12月に入り、受検を控えたご家庭では一家で団結して追い込みモードに入っていることと思います。親御さんは、お子さんの勉強のサポート、体調管理、精神的ケアなどに取り組んでいらっしゃるでしょう。実を結び、花が咲くのはもう目と鼻の先。後悔のないよう、1日1日を大切に過ごし、できれば記憶に残るよう楽しんでいきたいものですよね。
今回は、わが家のこの時期から受検までの期間を振り返ってみたいと思います。

 

   *  *  *

 

5年生から開始したZ会の添削で適性検査問題の解答作成にもずいぶん慣れ、6年生になってから毎日の日課としていた400字作文も、この時期には書くスピードがだいぶ上がってきていました。息子は、毎日ひたすら公立中高一貫校適性検査の過去問題集や作文に、時間を計って取り組んでいました。日々、所要時間が少しずつ短縮されるのがやりがいに感じられたようで、ときには自ら深夜まで勉強していたこともありました。これも、ゲームでいうとスコアを伸ばすような感覚だったのかな、と親としては思います。

一方、たとえば算数などでは解き方のわからない問題にぶつかることもありました。そんなときはまず一人でじっくり考え、親に聞いても解決しないときは、難関校を受ける予定の友だちや、通塾している友だちに教えてもらうこともありました。

▲入学志願書と一緒に提出する、自己申告書。志願理由を考えるうちに、自分のしたいことがより明確になっていった

適性検査では時事問題と絡めた出題もよくあるため、その対策として、新聞記事を切り出して要約してみることも自発的にしていました。政治経済については小学校教科書の知識だと理解が断片的になりがちなので、家にあった政治経済の仕組みについての本や、高校を卒業した近所のお姉さんからもらった高校政経の教科書を読んだりもしていました(学校の休み時間に読むため、教科書に別の本のカバーを付け替えるといった工夫もしていたようです)。そうした学習を積極的にする反面、途中で、歴代の内閣総理大臣の名前を書き出すことに熱中しだし、ほかにやるべき宿題などがそっちのけになることもあり、親としては悩ましさもありました。

▲歴代内閣総理大臣の名前を書き出すなど、一度興味をもつと没頭してしまうことも

面接対策としては、聞かれそうな質問をスマホアプリに入力しておき、時々それを眺めては、どう答えるかを考えながら、頭の中で面接のシミュレーションをしていたそうです。

 

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さて、私はというと、息子をサポートするために、自分もチャレンジをしてみることにしました。読書にしても運動にしても、子どもが挑戦しようとしているとき「自分だけがする」のではなく、「親と一緒にする」ことで勇気を与えられたり、楽しみが増えたりするものだと、私自身は考えています。息子はどう思っているかはわかりませんが。子どもに本を読んでもらいたければ、親が楽しく読んでいる姿を、勉強に励んでもらいたければ親が夢中になって勉強している姿を、運動してもらいたければ親が運動を習慣化した姿を見せればいい、と思って取り組んできました。

そこで、息子にとっては受検の2日目、グループ面接がある日の同日、私は初めての英検を受けようと考えました。実は、私は英語が非常に苦手で、中学時代は時に30点台を取ってしまうほどの弱点科目でした。しかし、やがて文章執筆の仕事をいただけるようになり、次第に英語関係の記事を書かせていただく機会が増えてきたことから、この2年ほど前より月に1度ほど、英語のプライベートレッスンを受けるようになっていました。

もともとわが家では、毎日少なくとも10分は、家族全員が一斉に集中する時間を設けていました。それぞれ、取り組むことは、読書や勉強、筋トレなど何でもよいのです。そこで私は、その時間を英語の勉強に充てることにしました。息子も、追い込み期間中ではありましたがその時間だけは英語を勉強していました。

 

   *  *  *

 

そして、受検当日の1月終わり。
私は息子を家から送り出すときに「がんばれ」とは言わず「楽しんで」と言いました。これは、自分に向けての言葉でもありました。

結果、息子は志望校に合格。わたしも、無事に英検3級を取得することができました。
その日は家族の恒例となっている、食卓を囲みながらのゲームで1日を締めました。

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「受検の追い込み時期、どんなことを考えてたの?」

 

息子「秋に中学校の学園祭に行って、数学研究部の部長さんと素数の話で盛り上がったことを思い出してた。入学したら絶対この部に入りたいと思ったから、学校の休み時間に数学の勉強をしたりしてたなぁ。」

▲志望校の文化祭の部活体験で出合った「関数グラフアート」。すっかり魅了されてしまい、ノートに自作するほどに。これが追い込み時期のモチベーションになった

プロフィール

堤谷 孝人 (つつみたに たかひと)

関西在住。2004年から子ども関連(保育・育児・教育)の取材、編集、制作をフリーランスで行う。職業柄、スーパーキッズや学校、教育機関などの取材をする機会多数。2008年、京都市立西京高等学校附属中学校を取材したことをきっかけに公立中高一貫校に強い興味をもつように。その後、長男が関西の公立一貫中学に合格。受検にあたりZ会小学生コース「公立中高一貫校適性検査」「公立中高一貫校作文」を利用した縁で、2023年4月よりこの連載をスタート。

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