【公立中高一貫校受検記】父が見てきた“学びを楽しむ子ども”の育ち方

【公立中高一貫校のリアル】合格発表後から中学生活スタートまで

年が明け、適性検査本番を迎えると、そのあとは合格発表、入学手続きや備品の準備、卒業と、慌ただしい日が続きます。進学はお子さんにとって大きな変化。のちのちそれがわが子に合った選択だったと思えるよう、1日1日、ベストを尽くしたいですね。

教育系の記者として、公立中高一貫校への取材経験を多数おもちの著者・堤谷孝人さん。
父として、お子さんの中高一貫校受検をすぐそばで見てきたご経験を綴るエッセイの第10回です。
第9回まではこちら

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受検を控えたご家庭は、いっそう気忙しい毎日を送っていらっしゃる時期かと思います。わが家も、「もし合格したら……」というタラレバ話を多少はしていたものの、受検が近づくと親も子も目の前のことで精一杯。あっという間に受検と合格発表を迎え、それからはバタバタの毎日で、気づくと中学入学目前でした。

今回は、中学生活が始まる直前から学校生活に慣れるまでの実際と、親として感じたことなどを書いてみたいと思います。春からの生活について何らかの見通しをもつきっかけや、受検を終えるまでのポジティブな会話などの種になれば幸いです。

 

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Z会を選んでいるご家庭のなかには、「子どもが通塾に向いていない」「自分の好きな時間に勉強するほうが得意」などの理由から、Z会1本で受検にのぞむ方も多いのではないでしょうか。わが家もそうでした。

そして、「受検に合格したら……」というタラレバ話の中で、もし合格したら引っ越しをしようと決めていました。家から学校までは電車を使って片道1時間30分。往復3時間を毎日、6年間使わせるなら、いっそ学校近くに引っ越して、できるだけ時間を豊富に使えるようにしたほうが息子向きだろうと思ったのです。そうすれば(本人の頑張り次第ではありますが)、通塾なしの今の学習スタイルを入学後も貫けるかも、とも考えました。

受検直前、息子は作文を書くことや面接の練習に重点を置いていました。とくに面接については、妻とさまざまなテーマで毎日練習を繰り返していました。受検2日目の面接では、学校の体育館に座って順番を待つあいだ、頭の中で質問と答えをシミュレーションしていたそうです。それでも、実際の面接では、2分ほど言葉に詰まる場面もあったと話してくれました。

息子の友だちの受験組は、みんな先に合格を決めていました。友だちの中では息子の合格発表が最後だったのでみんなから注目されていたこともあり、発表当日はとても緊張したそうです。発表は息子が一人でスマホを開いて確認。無言でこちらを見て、スマホを渡してきました。妻が確認すると番号があり、親のほうがビックリして声を出してしまいました。可能性があるとは思っていましたが、「通塾なしでも合格できるものなんだ」と実感し、喜びが湧き上がってきました。

当時は、コロナによって外出自粛が続いていました。ご近所の方や友だちに引っ越しの挨拶を満足にできないなか、学校手続きや引越作業などに追われながらも、入学式までには学校から通学30分以内の便利な場所へ引っ越すことができました。

▲入学式が中止になったため、近隣の公園の桜の下で記念写真

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心機一転、新しい環境で中学生活が始まるかと思いきや、緊急事態宣言で入学式が何度も延期に。先にオンライン授業が始まるということで、自宅には大量の教科書類や貸出のChromebookが入った段ボール箱が届きました。結局、入学式が開催されることはありませんでした。

初日はホームルームのみでしたが、息子は緊張と楽しみで朝6時30分に目が覚め、教科書を読み込んでいました。

通学が不要なオンライン授業ですので、「急いで引っ越しをする必要なかったね」などと家族で話していましたが、息子は時間を持て余すことなく、授業が終わると教科書の問題を解いたり、予習したりしていました。

また、むしろ時間があることを喜び、家にある本を片っ端から読んだり、引っ越し前に近所のお姉さんからもらった高校の教科書や参考書を読んでみたり、ときには高校入試用の教材で勉強をしていることもありました。はじめて学ぶ内容でも臆せず自学自習できる習慣は、Z会で強化されたように思います。夜21時過ぎまで勉強することもざらでした。

 

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さて、私は専門学校の非常勤講師もしているのですが、この年に初めて、勤務先からオンラインで授業することを求められました。そこで、息子と一緒にZOOMの使い方を勉強したり、互いに通信して練習したりしました。私のオンライン授業は週2回ですが、息子は週5回もオンライン授業を受けるわけですから、むしろ私が息子から教わるほうが多かったです。コロナ禍にあって、入学した学校がオンライン授業やICT活用に積極的でいてくれることを、親としてとても心強く思いました。

▲心待ちにしていたオンライン授業

入学後に課される課題はどれもユニークかつ自分で試行錯誤する必要のあるものが多く、息子は学習意欲や創作意欲を大いに刺激されていました。宿題で課された「自己紹介スライド」を夜遅くまで凝りに凝って作っていた姿が、授業の楽しさを物語っていました。

▲何時間もかけて作り直した自己紹介スライド
▲自分で英単語帳を作るという課題

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緊急事態宣言が解除されると、通学しての対面授業が始まりましたが、ハイブリッド型授業という形で、授業を学校で受けても自宅で受けてもよいことになっていました。また、対面授業が始まってからもICT活用はむしろ進化するばかりで、宿題は自宅からオンラインで提出する、小テストや定期テストもChromebookで受けてオンラインで提出するなど、先進的なICT活用の取り組みが非常に魅力的で、親の私もワクワクしました。

入学してできた友だちは、何かしらの特技や才覚をもっているお子さんばかりだったそうです。息子は、バイオリンを習っている友だちに刺激を受けて、これまでいっさい触ったこともなかったバイオリンをやってみたいと言い出しました。友だちに勧められた、説明書や参考DVDが付いた1万円の初心者セットに、嬉々として取り組んでいました。

また、朝な夕なオンラインで友だちと勉強を教え合ったり、ゲームをしたり、会話をしたり。オンラインを使いこなしながら、多様な友だちに影響を受けて一気に興味・関心が広がっている姿を見て、受検して本当に良かったなと思いました。

 

「初めて学校に登校した日は、どんな気分だった?」

 

息子「オンラインでいつも話していた友だちが、学校の門の前に15人くらい集まっていて、ぼくを迎えてくれたよ。ようやくリアルで会うことができて、後から登校してきたクラスメートを一緒に迎えられたのが楽しかったなぁ。」

プロフィール

堤谷 孝人 (つつみたに たかひと)

関西在住。2004年から子ども関連(保育・育児・教育)の取材、編集、制作をフリーランスで行う。職業柄、スーパーキッズや学校、教育機関などの取材をする機会多数。2008年、京都市立西京高等学校附属中学校を取材したことをきっかけに公立中高一貫校に強い興味をもつように。その後、長男が関西の公立一貫中学に合格。受検にあたりZ会小学生コース「公立中高一貫校適性検査」「公立中高一貫校作文」を利用した縁で、2023年4月よりこの連載をスタート。

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