【公立中高一貫校受検記】父が見てきた“学びを楽しむ子ども”の育ち方

受検に向けた家庭学習とわが家の雰囲気

息子さんの受検挑戦が決まった堤谷家。しかし公立中高一貫校は倍率が高く、5倍前後となることも珍しくありません。めざす目標に向けて、選んだ家庭学習の選択肢は……。

教育系の記者として、公立中高一貫校への取材経験を多数おもちの著者・堤谷孝人さん。

父として、お子さんの中高一貫校受検をすぐそばで見てきたご経験を綴るエッセイの第2回です。

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さて、息子が受検することに決まり、まず家族で話し合ったのは、受検に特化した塾に通うのか、独学で挑戦するのか、それとも他の手段を選ぶのか、ということでした。そこで、息子がはっきりと言いました。

 

「塾に通うのはイヤだ」

 

彼は、決められたルーチンに沿う生活が好きではありませんでした。そのときに「したい」と思ったことに全力を注ぎたいのです。また、塾の往復にかかる時間がもったいないと思っていたようです。往復に時間をとられるくらいなら、前回記事でご紹介した「リバーシ(オセロゲーム)のオリジナルゲーム」で遊びたかったのかもしれません(笑)。

 

   *  *  *

 

親としても、おさいふ事情から、通塾を選ばない判断は正直に言って助かりました。

しかし、受検事情を取材してきて倍率や難度を知っている私にとって、独学で挑戦するのは現実的ではありませんでした。そこで話に出したのが、私も取材などを通じて関わりのあったZ会の通信教材です。

 

「自分の好きな時間にできるよ」

「一度にやらず、分けてやったりできるよ」

「家庭教師みたいに、自分だけに添削をしてくれるよ」

 

そんな私の言葉に、息子は快諾。5年生から、小学生コースと、専科「作文」と「公立中高一貫校適性検査」の受講を開始しました。受検には作文が必須ですし、記述式の問題が多く出題されます。私の見立てでは、彼は読書量は多めではありますが、ざっと読むのが好きな速読タイプで、語彙も多くはありません。それは、本人も自覚しているようでした。

Z会を受講し始めてから、息子は毎月、締切を守って課題を提出し、Z会から作文の添削指導を受け、私からのアドバイスも受けるようになりました。添削を受けた後で、それを生かして作文を書き直すといったこともしました。考えたことをアウトプットするのは得意ではなかったのですが、Z会をとおして社会への関心を高め、作文のコツをつかんでいきました。

添削問題を解くときにはタイマーで時間をきちっと計り、時間内に文章を読み、要約し、答えを書くことを意識しました。当初は、制限時間内で4分の1くらいしか解けませんでしたが、どうやれば時間内に終わるかを自分で考えて解くようにしていたことで、受検直前期には時間内に見直しができるまでになりました。

 

ソファでも食卓でも、気が向いたときに勉強

 *  *  *

毎月の添削で自分の文章力が上がっていることを実感し、自信がついてきた6年生の夏前ごろには、自分でテーマを決め、400文字の作文を書くことが日課になりました。
テーマの多くは、「大阪の魅力」「SDGs」「エコ」に関するものなど。このほか、新聞の記事から作文のテーマを探したり、本を要約したりといったことも続けました。

当時の作文

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受検にあたり、親として意識していたのは、息子の受検に対するやる気を削がないよう、これまでどおり見守り、生活リズムを安定させること、時間を意識して過ごす習慣をつけることです。息子はやる気にムラがあるタイプ。計画的に過ごすため、長期休みに入るときは前日までに必ず本人がスケジュールを立て、休み中は、スケジュールどおりできたかどうかを私が毎晩確認し、できていたらハンコを押す、といったことを続けました。

塾へ行くという選択をしなかったわが家には、食事中に社会や世界情勢のことを話し合ったり、ゲームをしたり、いろんな所へ行ったりする時間がありました。6年生の夏休みには竹田城に行ったり、受検まで1カ月を切った時期に、家族で「桃太郎電鉄」を100年設定で遊んだこともありました。

そんな空気感でしたので、息子にとっては受検が「しんどいもの」ではなく、「挑戦したいもの」「楽しんでアタックしてみるもの」として捉えられていたのではないかな、と思います。

自分でPDCAを意識し、長期休み後には計画どおりできたかを振り返りました

このころ、大きなモチベーションになったのが、6年秋の文化祭の部活体験で出合った「関数グラフアート」(これについては今後の回でご紹介できればと思います)。ノートに自作するくらいハマってしまいました。おかげで、入学したい気持ちがいっそう高まったようでした。

 

 

部活体験で「関数グラフアート」に出会ってときめく

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父「塾は塾で楽しい部分もあるんだけど、向いていなかったんだね」

 

息子「塾がイヤだったのは、バスに酔うからしんどいっていうのもあったんだよ」

プロフィール

堤谷 孝人 (つつみたに たかひと)

関西在住。2004年から子ども関連(保育・育児・教育)の取材、編集、制作をフリーランスで行う。職業柄、スーパーキッズや学校、教育機関などの取材をする機会多数。2008年、京都市立西京高等学校附属中学校を取材したことをきっかけに公立中高一貫校に強い興味をもつように。その後、長男が関西の公立一貫中学に合格。受検にあたりZ会小学生コース「公立中高一貫校適性検査」「公立中高一貫校作文」を利用した縁で、2023年4月よりこの連載をスタート。

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