【公立中高一貫校受検記】父が見てきた“学びを楽しむ子ども”の育ち方

受検期の親子の絆を深めた家族習慣

中学受検期は思春期の入り口とも重なり、進路や成績のこと以外にも、友だち関係で悩んだり、自分なりの価値観を模索したりと子どもがさまざまな葛藤を抱えやすい時期でもあります。しかし、親が面と向かって尋ねても、心のうちを話してくれるとは限りません。
子どもが自分の考えを話したいだけ話せる、そんな家族の団らんづくりが今回のテーマです。

教育系の記者として、公立中高一貫校への取材経験を多数おもちの著者・堤谷孝人さん。

父として、お子さんの中高一貫校受検をすぐそばで見てきたご経験を綴るエッセイの第5回です。

第4回まではこちら

 

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受検という過酷な長期ロードを最後まで走り切るには、子どもと親の絆が大切だとよくいわれます。子どもの側が親を心のオアシスにしたくとも、親の側が子どもを理解できていなければ、本当のオアシスになることができないからではないでしょうか。

わが家では、受検学年の小6でも、それまで同様に、ある家族習慣を続けていました。それは、「週に1度は、家族全員でゲームをしながら夕食を食べる」ことです。

 

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テレビ画面を観ながらの夕食は、賛否両論があるかもしれません。ですがわが家では、息子の大好きな餃子、お好み焼き、鉄板焼、水炊き、すき焼きなど家族でテーブルを囲んで作るメニューのときは決まって、じっくりと頭を使って考えるシミュレーションゲーム――たとえば「ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート Special」、桃太郎電鉄シリーズの中でも特に西日本マップがある「桃太郎電鉄12 西日本編もありまっせー!」や、アメリカがマップになった「桃太郎電鉄USA」など――で遊んでいました。

12月になって受検日が近くなっても、息子は「桃太郎電鉄」をもっとも長い100年設定で妻とスタートさせ、ますます励み始めた受検勉強と並行して遊んでいました。時には、2人でソファで寝落ちしていた日もあったそうです。

ラーメン鍋を食べながらゲームざんまい

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息子はこの時間を楽しみにしており、当日の日中はとくに意識してZ会の教材や学校の宿題に取り組んでいたように思えます。そして、ゲームの時間は他の日に比べて、家族の会話が増えました。

学校のこと、勉強のこと、友だちとのこと、そして受検や将来の夢について。ターン制のシミュレーションゲームでは、いつでも好きなだけ手を止めていられることもよかったのだと思います。ゲームの最中や中断している間、息子はたくさんのことを自分から話してくれて、親が気になっていたこともすっかり把握することができました。

おかげで、親として受検期の子どもの状態や心理状況に不安をもつことは一切ありませんでした。息子のほうも、親に話す時間を十分にもつことができて、比較的ストレスなく受験期を走り切れたように思えます。

 

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このほかにも、わが家でよく習慣にしていたことがあります。息子が小5のときに開催された「FIFAワールドカップ」で優勝国と上位国を予想してみたり、毎年12月に発表される「流行語大賞」や「今年の漢字」を予想したりと、世間のイベントを家族参加のゲーム仕立てにしてしまうことです。流行語や漢字を調べるなかで、私たち家族は自然と国内外の社会情勢や話題になったできごとについて話し合うようになり、息子にとっては世の中のことを知る機会になったように思います。

ちなみに、勝者になると事前に挙げておいた自分の希望が叶えられるのですが、息子は家族での夕食メニューを希望に挙げることが多かったです。

家族3人で、今年の流行語や漢字を予想しました
ワールドカップの順位を点数方式で予想。グループリーグ戦は家での食事メニュー、トーナメント戦は外食メニューの希望を書いておき、勝者の希望が叶えられるというもの

もちろん、必ずしもゲームでなくてもよいとは思いますが、家族の団らんができる定期的な時間を設けることで、お子さんが受検期をできるだけストレスなく乗り越えられるといいですね。

 

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「晩ごはんを食べながらのシミュレーションゲームって、受検の役に立った?」

 

息子「自分の考えを組み立てたり、論理的に話したりするのに役立ったかな。家族で何時間も思いっきり話ができるし。ゲーム習慣、今でも続いてるけど、楽しいよね」

プロフィール

堤谷 孝人 (つつみたに たかひと)

関西在住。2004年から子ども関連(保育・育児・教育)の取材、編集、制作をフリーランスで行う。職業柄、スーパーキッズや学校、教育機関などの取材をする機会多数。2008年、京都市立西京高等学校附属中学校を取材したことをきっかけに公立中高一貫校に強い興味をもつように。その後、長男が関西の公立一貫中学に合格。受検にあたりZ会小学生コース「公立中高一貫校適性検査」「公立中高一貫校作文」を利用した縁で、2023年4月よりこの連載をスタート。

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