【公立中高一貫校受検記】父が見てきた“学びを楽しむ子ども”の育ち方

手作りの遊びを親子で楽しんだ、幼児期からの子育て

今回は受検からぐっと遡って、幼児期からの遊びがテーマです。「質が高い」「人気がある」とされるおもちゃや絵本は世の中に数あれど、頭をひねって「手作り」した遊びには、「子ども自身が主役になれる」という喜びが詰まっています。将来、進みたい道をつかみとるのに必要な主体性は、日々のそんな遊びからも培われていくのかもしれません。

教育系の記者として、公立中高一貫校への取材経験を多数おもちの著者・堤谷孝人さん。

父として、お子さんの中高一貫校受検をすぐそばで見てきたご経験を綴るエッセイの第6回です。

第5回まではこちら

 

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縛られるのが嫌いで、何でも自分で考えたり作ったりするのが好きな息子ですが、思い返せば、息子が幼稚園に入る前から学びも遊びも“手作り”してきたことが今に影響しているかもしれません。

私はたいてい自室で仕事をしているのですが、幼い息子は絶えず「あそぼー」と絵本やブロック、車の玩具などを持ってきました。そんなとき、私は自分の椅子のとなりに小さな丸テーブルと座布団を用意し、簡単なめいろやパズル、ひらがなや計算のテキストを作って印刷し、テーブルの上に置いていました。

 

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幼稚園に入ると、息子はさまざまなことに興味をもつようになって、私の手作りの幅が広がりました。たとえば、隠されているものを探す絵本の『ミッケ!』に息子が熱中した時期には、絵本を一緒に読むのと並行して、親子で「ミッケ!ごっこ」を楽しみました。

「ミッケ!ごっこ」をするには、まず息子と相談してテーマを決めます。とにかく丸や円を集める「まる!まる!!まる!!!」や、外で拾ってきた物を集合させる「たくさんの ひろいもの」など。そして、テーマに沿った物を並べて構図を考え、三脚を立てて写真撮影します。撮れたらその場で確認して、必要なら整え直して再撮影。ここまで、極力息子が自分でできるよう、私が用意したり手助けしたりしていました。

OK写真が撮れたら、息子が並べた物の片付けをしている間に、私がPCで写真の色補正をし、簡単な文章をつけてレイアウト、光沢紙にプリントします。最後は、息子が手書きで「◯◯をさがせ」といったクイズやヒントを書き足します。

このように、息子が興味をもったものがあったら、単にそれを受け身で楽しむのではなく「より自分ごとになる」「自分にとって身近な物事になる」よう、息子がかかわる形で一緒に作ることが多かったように思います。

『ミッケ!』を自分で作ってしまう、「ミッケ!ごっこ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほかにも、息子がゲームで勝ったときや、地域のお祭りで盆踊りに出たときなど、ちょっとしたチャレンジを頑張ったときに私が手作りした絵本に、「さがせシリーズ」というものがあります。

これは、その時期に私が撮影した写真を集めてPC上でコラージュし、その中のあちこちに、息子の写真を切り抜いて隠したもので、絵本『ウォーリーをさがせ!』のように、よく見ないと見つけることができません。息子の成長や日々の思い出などを記録するために撮った写真をそうやって活用するうち、息子が卒園する頃には50作品に達しました。それをすべてホッチキスで留め、マスキングテープを使って、ごく簡単に製本しました。表紙とうら表紙は息子が描きました。これも、息子自身が参加することで自分ごとになり、買った絵本よりも、集中して探すことを楽しんでいたように思います。

手作り絵本で「自分をさがせ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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終始このような感じで子どもと一緒に学びや遊びを手作りしながら、決められたやり方どおりにすることや、遊び方の決まったおもちゃで遊ぶよりも、子ども自身がものを作りながら遊ぶほうが、より強度な試行錯誤や創造性が必要になり、探求的な姿勢が生まれる、ということを実感しました。

親としては、全部こちらでやってしまうほうが制作時間を短縮できたり、質の高いものができたりするので、じれったいと感じることも多くありました。でも、「試行錯誤し、答えを模索している最中こそが、力の伸びているときだ」と辛抱強く“待つ”“見守る”ことが大切だとも感じていました。せっかちな私としては、自分との闘いの時間でもありました。

息子は、私に助けや答えを求めることはあまり多くありませんでしたが、たまにそれがあっても安易に助けたり答えを教えたりせず、「この本にヒントが載ってたよ」とか、息子に逆に質問して本人の中から答えを引き出すよう意識しました。

 

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そのようにして育った息子は、小学5年生になると、イラストレーターというソフトを使い、自分の好きなゲームにちなんだカードや、家族旅行のしおりを作るようになりました。また、受検直前の正月には息子がすごろくを自作し、家族で遊んだりもしました。

 

自分でカード作りに挑戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6年生のころに自作したすごろく

 

彼にとっては創作するという行為が、「自由が好き」という自分の特性や、学びや遊びを掘り下げるという性質を強化していったのかもしれません。

子どもにとってのきっかけづくりを親が少しだけ頑張れば、子どもはその芽を勝手に伸ばして実をつけていくものなんだなぁ、と今になって感じています。

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「『ミッケ!ごっこ』で思い出に一番残っていることはなに?」

 

息子「盆踊りで踊りの輪に入るのがちょっと怖かったけど、お父さんに『踊りながら1周したら1つ作ってあげる』と言われたからがんばって20周したんだよね。そしたら、ホントに20枚、一緒に作ってくれたことがうれしかったな」

プロフィール

堤谷 孝人 (つつみたに たかひと)

関西在住。2004年から子ども関連(保育・育児・教育)の取材、編集、制作をフリーランスで行う。職業柄、スーパーキッズや学校、教育機関などの取材をする機会多数。2008年、京都市立西京高等学校附属中学校を取材したことをきっかけに公立中高一貫校に強い興味をもつように。その後、長男が関西の公立一貫中学に合格。受検にあたりZ会小学生コース「公立中高一貫校適性検査」「公立中高一貫校作文」を利用した縁で、2023年4月よりこの連載をスタート。

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