【公立中高一貫校受検記】父が見てきた“学びを楽しむ子ども”の育ち方

やる気を引き出し、成果も得られた「アウトプット型」学習

「自分の力を試してみるのが好き」「挑戦したい目標があると燃える」ーー受検に向けてがんばる力につながりそうなこうした気質も、実は、幼いころからの積み重ねでつくられるものなのかもしれません。今回は、堤谷家が親子で楽しみながら挑戦していた、検定や大会、コンテストの数々をご紹介いただきました。

教育系の記者として、公立中高一貫校への取材経験を多数おもちの著者・堤谷孝人さん。
父として、お子さんの中高一貫校受検をすぐそばで見てきたご経験を綴るエッセイの第7回です。
第6回まではこちら

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学習を「インプット学習」と「アウトプット学習」の二つに分ける考え方があります。「講義を受ける」「本で知識を得る」「映像を視聴する」などがインプット学習にあたるのだとすれば、「得た知識を使ってみる・試す」ことは、広い意味でのアウトプット学習といえるのかもしれません。

 

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さて、思い返してみれば、わが家では息子が小学1年生のときから、そのようなアウトプット学習に力を入れていたのだと思います。
たとえば、幼児期から絵本で国旗に興味をもっていた息子は、小学校に入ってすぐ、「世界の国旗検定」というWebテストを受験しました。もちろん、私が「こんな検定があるよ」と伝えたのですが、予想どおり息子は「ゲームみたい。おもしろそうだ!」と思ったのでしょう、「やりたい!」と言いました。

私としては、検定で合格すれば自己肯定感が高まるだろう、検定に向けてさらに国旗に興味をもって学ぶだろう、という意図がありました。息子は受験までの2か月で、国旗の絵本をさらに読み込みました。また、私と風呂に入っている間も、壁に貼った国旗つきの世界地図を見ながら、国名の当て合いをしました。夢中になって当て合いを止めない息子が風呂でのぼせることに、妻が心配したほどでした。

国旗検定は(キッズ級)は全30問で、各国旗を見て4択から正しい国名を選びます。大人でも、チリと台湾の国旗を間違えたり、そもそもセーシェルやバチカン市国の国旗なんて知らないよ、といった人が少なくないのではないでしょうか。息子はみごと全問正解で、合格認定証をもらうことができました。

※編集部注:「世界の国旗検定」は現在は終了しています。
▲「世界の国旗検定」の受験シーン。初めてのWeb検定でドキドキ

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その後も、検定やコンテスト、大会を見つけては息子に紹介し、それらにチャレンジする、ということが続きました。数字に強い興味を示していた息子が小学1年生からほぼ毎年チャレンジしたのが、「算数オリンピック」です(小学1年生から3年生までは「キッズBEE」という種目)。

申し込んでから問題集を取り寄せたのですが、思考型の難問揃いで、私は驚きました。それから、息子は毎日問題集に取り組み、わからない問題は私に聞いてきて、私もウンウンうなりながら頭を捻ったものです。

このときの受験結果は、トライアル通過基準64点のところ、息子は28点でファイナル大会に進出できず。息子も私も、世間の広さを実感しました。2年後の3年生時には、トライアルで親も驚く100点満点を得てファイナル大会に進出。しかし、さすが強者揃いの中では平均点にも届かない結果となり、翌年への意欲を燃やしました。

▲思考力が問われる算数オリンピックもゲーム感覚で楽しむ

こういった経験が新鮮かつ刺激的で楽しかったのだろうと思います。息子は中学進学後も、自分で「知識を増やしたい」ものが見つかれば、その知識に関連する検定や資格に申し込んで学びを深める「アウトプット型」学習を続けています。中学時代には、ITパスポート試験、生物分類技能検定、危険物取扱者(乙種 第4類)に合格しました。

 

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とはいえ、検定や大会へのチャレンジは気合や準備が必要になるので気が引ける、というご家庭もあるかもしれません。しかし、たくさんある「公募」や「コンテスト」なら、気軽に取り組めるのではないでしょうか。家族みんなで取り組んでも楽しいこと、まちがいありません。

子どもから大人まで参加可能で公募されているものの中には、5・7・5でユーモラスな歌をつくる川柳や標語、作文、アイデア、イラストやフォトコンテストなどがあり、雑誌やインターネットで探すことができます。

息子が小学生になる直前、初めて取り組んだのが「おでん川柳」でした。公募は寒い冬の時期で、おでんが大好きだった息子は、もちろん「やりたい!」と言い、せっかくだから、ということで家族で挑戦することにしました。

このときのお題は「おでんとだんらん」。息子は「はんぺんが はんぶんあったよ たべました」…はんぺんの「はん」と、はんぶんの「はん」を重ねたのだろうと思いますが、これで参加賞のちくわマグネットをもらえて大喜びでした。私は「絶妙の 湯加減でほてる 個性ダネ」という微妙な作品で、やはりちくわマグネットをゲットしました。

▲賞品にもらったマグネットで大喜び

こうしたアウトプット学習のよいところは、よりよい形でアウトプットしようという意欲が湧き、インプットを呼ぶことです。

たとえば川柳をつくることは、語彙力を磨き、テーマについて深く考えるという点でそれ自体が効果的な学びだと思いますが、加えてコンテストへの応募というきっかけがあったことで、息子は川柳の過去受賞作をたくさん見て、自分なりに研究したのだそうです。そして、小学1年生のときだけで氷屋川柳、牛乳川柳、台所・お風呂の川柳、金魚川柳、七夕俳句、トイレ川柳、ふるさと川柳、お好み焼川柳、税金川柳など、さまざまな川柳に応募し、親子で夢中になりました。息子にとっては学習というより言葉遊びのゲーム感覚だったようですが。

 

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そんな息子が初めて大きな賞をいただいたのは、1年生の秋でした。建設関係の機関が募集したフォトコンテストで、テーマは「わたしたちのみち・はし・かわ」でした。ちょうど夏に、友だち家族とデイキャンプに行った際に、自分で撮ったちょうどいい写真があることを思い出して、「出したい」と言ったのです。
この写真は、小さな川に飛び石が置かれていて渡れるようになっているのですが、これを「橋」だと解釈した子ども目線が評価されたのかもしれません。優秀賞に選ばれ、1万円相当の図書カードで大好きなマリオのコミックを全額分買い物カゴに入れ、嬉しそうにレジまで持っていったのを覚えています。息子にとって初の大人買いでした。

▲この受賞をきっかけに、息子は自分の解釈で写真を撮るように

公募への参加は、知識を増やすきっかけになっただけでなく、自分のまわりにさまざまな世界があることを知る経験にもなりました。それは、やがて受検で必要になる思考力や課題発見意識の底上げにもつながったのかもしれないなと思います。

 

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「行動がさらなる深い知識を呼ぶ」。これまでさまざまな教育現場の取材をしてきた経験から、私が強く実感していることです。子どもに知識のインプットを増やしてほしいと望むなら、まずは行動し挑戦する場が必要だと思います。

そして子どもが行動を起こすには、勇気とエネルギーとが必要です。子どもだけに取り組ませるのではなく、親が一緒にすること、ときには親が率先して取り組む姿を見せることがそのエネルギーの源になるはずだと思って私自身行動してきましたが、振り返れば、息子の成長から私が学んだことも多々ありました。親子でアウトプット学習に取り組んだことは、二人の一生の思い出になるだろうと確信しています。

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「どんなコンテストが面白かった? 受検の役に立ったと思う?」

 

息子「1200文字くらいの童話コンクールかな。完成して郵送した後、まだまだ続きが書きたくなって、200ページくらいの物語ができたよ。あれで、作文を書くのが得意になった気がしたなぁ。」

プロフィール

堤谷 孝人 (つつみたに たかひと)

関西在住。2004年から子ども関連(保育・育児・教育)の取材、編集、制作をフリーランスで行う。職業柄、スーパーキッズや学校、教育機関などの取材をする機会多数。2008年、京都市立西京高等学校附属中学校を取材したことをきっかけに公立中高一貫校に強い興味をもつように。その後、長男が関西の公立一貫中学に合格。受検にあたりZ会小学生コース「公立中高一貫校適性検査」「公立中高一貫校作文」を利用した縁で、2023年4月よりこの連載をスタート。

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