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「わかったつもり」にならない学習習慣(2)

  

「わかったつもり」にならない、家庭学習のコツ(2)高学年の場合

――高学年の子どもの場合はいかがでしょうか? 単純反復で対応できる内容が多かった低学年と比べると、難しさが変わってくると思いますが。

高学年で乗り越えなければいけない課題の一つは、抽象的な概念を理解するということです。代表的なものが算数の「割合」。今まで、1個、2個……というように見えるものを数で表していたのに、割合の単元では「全体を1とすると……」といった抽象的な概念が出てくるわけですから、子どもにとってはすごくしんどいんですね。

そういうときにやってしまいがちなのは、その場だけで通用するテクニックを教わって、それにあてはめて正解を出してしまうことです。たとえば割合だと「く・も・わ」という図が有名ですが(下図)、これを使うと、概念を理解できていなくても、機械的にこの図にあてはめて答えを出すことができてしまうんです。

一つ、興味深い事例を紹介しましょう。割合のテストをやってみると、小学校5年生より中学校2年生の方が成績が低いということもありました。これは、小5のときは「く・も・わ」のようなテクニックを覚えることで目の前のテストを乗り切っているけれど、数年経ってそうしたテクニックを忘れてしまうと、概念を理解できていない場合は問題が解けなくなってしまうということだと考えられます。

小学生のときの積み残しが中学生になってから判明しても、「関数って嫌い」とか「自分は数学が苦手なんだ」など、漠然とした苦手意識として捉えてしまいがちで、なかなか「割合の概念から復習しよう」とはならないんですね。ですから、小学校高学年というのは、「抽象的な概念を理解できるか」という大事な課題を抱えた時期だといえるわけです。

――低学年とは違った「わかったつもり」が起きやすいわけですね。

そうです。低学年では、テストでできなかった箇所=「わかったつもり」になっていた箇所だったのが、「テストはできているけれど、実はわかっていなかった」という事態が発生するのが、高学年以降なんですね。たとえば、割合の文章題が5問くらいあって、そのうち少しひねった1~2問が解けなかったとしますね。そういうとき、「応用問題が苦手なんだね」という捉え方をするのではなく、「もしかして、本質的なところが理解できていないのかもしれないな」と思ったほうがよいかもしれません。

――「概念が理解できているかどうか」という視点で見ると、テストの結果の見方が変わりますね。家庭でできることはあるでしょうか。

家庭で取り入れやすい方法は2つあって、1つは、「説明させてみる」ことですね。
テストが返ってきたときなどに、「この問題の解き方がわからないんだけど、どうやって解くものなの?」「これってどういうことかよくわからないんだけど、教えてくれない?」などと尋ねてみるのです。それに対して、テクニックにあてはめたような説明をしたなら概念が理解できていないということなので、学校の先生を頼ってみてもよいかもしれません。保護者の方が納得できる説明ができれば、理解できているということです。

正解した問題についても、「これってどうやって解いたの?」などとたまにフェイクを入れるといいですよ。できなかった問題についてばかり聞いていると、子どもは「聞かれるということは、この問題はできてないということなんだな」と学習しますから(笑)。また、保護者ではなく友だちどうしで、教えあったり問題を出しあったりするのも、とてもよい方法です。

――2つめはどんな方法でしょうか?

2つめは、間違えた理由を考えてみることです。テストや添削問題の解き直しをするときなどに、明日の自分へのメッセージとして、なぜ間違えたのか、どうするとよかったのかも一緒に書いておくようにするといいですね。

もちろん、慣れないうちは見当外れの理由を書くこともあるでしょう。これも、最初から1人でできる子はいませんから、大人がサポートしてあげられるといいですよね。たとえば、子どもはよく「ケアレスミスをした」と言いますが、実際は、間違いには何かしら理由があるもの。「じゃあ、何に気をつけたらミスしなかったと思う?」と尋ねることで、【メタ認知】を促していくことができます。

ここがポイント!
【メタ認知】を促す声かけ例(高学年向け)

①解き方を説明させる
「こういう問題はどうやって解くの?」
「学校でどういうふうに教わってきたか説明してくれない?」
②間違えた原因を考えさせる
「○○だと思ったのはどうしてかな?」
「こうするとよかったな、と思うことはある?」

⇒次ページに続く テストとは、「わかったつもり」に気づくきっかけ

プロフィール

犬塚 美輪(いぬづか・みわ)

東京学芸大学 教育学部 教育心理学講座 准教授。博士(教育学)。東京大学大学院教育学研究科修了。日本学術振興会、東京大学先端科学技術研究センター、大正大学を経て、2017年より現職。専門は教育心理学、認知心理学。「文章を理解することについての心理学」に関心を持ち、文章理解のプロセスとその指導方法の開発に取り組んでいる。おもな著書に『認知心理学の視点―頭の働きの科学』(サイエンス社)、『論理的読み書きの理論と実践』(北大路書房)。

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