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友だちづきあいで育む子どもの社会性(1)

お子さまの友だちづきあいは、保護者の方にとって気になるものですね。その場を取り仕切っている姿を見ると、「エラそうにして嫌われないかな」と心配になるし、他の子の言うことに従っている姿を見ると、「ガマンしているんじゃない?」と気になるし…。「友だちづきあいって大変」と感じている方もいるのではないでしょうか。でも、集団の中で友だちと遊んだり衝突したりすることは、社会性の発達に不可欠なのだとか。そこで、お子さまの社会性を伸ばすために保護者の方は友だちづきあいにどう向き合えばいいのか、発達心理学者の酒井厚先生に教えていただきました。

(取材・文 松田慶子)

目次

社会性は、人とうまくつきあっていく力。集団の中での学びは小学生時代に本格化

――そもそも社会性とは何でしょうか。

 簡単に言うと、人とうまくかかわっていく力のことです。人の気持ちを理解し共感すること、人を信じること、自分をコントロールすること、ルールを守ること、興味あることを見つけて取り組むことなどを指します。

――自分の興味を追うことも社会性に入るのですか?

 そうです。人とうまくつきあっていくことや、興味あることに自ら取り組むこと、また人とかかわりながら自分らしさに気づくこと、どれも社会で生きていくうえで必要な要素だからです。

――社会性はどのように育っていくのでしょうか。

 集団生活のなかで、たくさんの人とかかわる経験を通して育っていきます。
 集団生活は幼稚園や保育園時代に始まるのですが、そのころは1か所に集まってはいるものの、それぞれが近くの子と個別に遊んでいるような状態です。本格的に集団活動が営まれるようになるのは、小学校に入ってから。するとそれまでの1対1のかかわり方とは異なるグループの中でのふるまいや、友だちどうしのかかわりを第三者的に見ることが必要になり、複雑な考え方が求められるようになるわけです。その中で、徐々に社会性が磨かれていきます。とくに、3、4年生を挟んで低学年と高学年では、伸びる要素が変わります。

3、4年生を境に友だち関係が変化し、社会性もより高度に

――どういうことでしょうか。

 個人差は大きいのですが、“9歳の壁”“10歳の壁”といわれるように、3、4年生のころに認知能力が発達して、考え方が大きく変わるとされています。具体的なことなら論理的に考えられるという段階から、抽象的な概念を使って考えることができる段階に移行するのです。
 それに合わせるように、“友だち”の捉え方も変わっていきます。小学校低学年では、自分と似ている子と仲良くしようとする場合が多い。同じものが好き、同じような遊び方をする。だから一緒にいて楽しい。そんな子を友だちだと思う。わかりやすいですね。ところが高学年になると、抽象的で内面的なつながりを、友だちに求めるようになるので、約束を守るとか、信頼できる、気持ちをわかってくれるような子を友だちに選ぶようになります。

――確かに、仲のいい子が変わる様子はよく見られます。

 互いに友だちに求めるものが変わるということは、必要とされる社会性も変わるということです。みんなと同じことをする、時間を守る、といった集団に合わせることは低学年のころから求められます。そのため、同じことができない子に対する“からかい”もこのころから見られます。
 高学年になると、それに加えて、自分以外の友だちどうしの関係性を考えることが必要になり、低学年のころよりももっと約束を重く受け止め、固く守ることが求められます。そのため、約束を守らなかったとか、秘密をバラしてしまったなど、内面的なつながりに水を差す行動をしたときにトラブルに発展しがちです。
 こうした友だちとのかかわりで求められる要素を考える経験を通して、社会性が洗練されていくわけです。

⇒次ページに続く 「低学年と高学年の社会性の違いとは?」

プロフィール

酒井厚(さかい・あつし)

首都大学東京人文社会学部准教授。早稲田大学人間科学部を卒業後、2002年同大にて博士号取得(人間科学)。国立精神・神経センター精神保健研究所、山梨大学を経て現職。専門は発達心理学,発達精神病理学。主な研究テーマは子どもが他者に抱く信頼感と仲間関係の発達プロセス。日本パーソナリティ心理学会賞、日本子ども学会優秀発表賞等受賞。日本子ども学会の理事であり、2019年10月に首都大学東京で開催する第16回子ども学会議では大会長を務める。

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